「アイドル映画ではあるけれど、中々いい味出してる!」盗月者 トウゲツシャ 鶏さんの映画レビュー(感想・評価)
アイドル映画ではあるけれど、中々いい味出してる!
2010年に発生した東京銀座の貴金属店で発生した襲撃事件に着想を得て創られた作品でした。
内容的には、香港で時計の贋作を作って売っているマー(イーダン・ルイ)が、時計の故買を行っているロイ(ギョン・トウ)に弱みを握られて強盗団に引き入れられ、東京銀座の高級時計店に押し入るという流れでした。ロイから命令されたのは、ピカソが使っていたという3本の腕時計で、それ以外は盗んではいけないと命令されますが、マーはかねてから注目していた”ムーンウォッチ”、すなわちアポロ11号が人類初めて月面着陸した際に宇宙飛行士が付けていたとされるオメガの時計をこの高級時計店の金庫で見つけてしまい、一緒に盗み出してしまうことに。そのため、ロイの命令に背いただけでなく、”ムーンウォッチ”の持ち主である日本の謎の富豪・加藤(田邊和也)にも狙われることになり、同時にロイ一派の加藤一派の抗争にも発展するなど、息もつかせぬ展開が楽しめました。
興味深かったのは、半分くらいが東京を舞台にしていたところ。高級時計店は銀座っぽい場所にあったのは当然として、盗んだ時計を香港に運ぶために分解し、小分けにして国際郵便で送るために持ち込んだ川沿いのお店が中々味がありました。普通に郵便局に送るんじゃなくて、敢えて釣り船の手配なんかをやっていそうな店をチョイスしたところが、外国映画が見たヘンテコな日本の一類型としては、かなり面白かったです。まあ本筋とはあんまり関係ないんですが、キラキラした銀座の高級時計店とは180度異なる古き東京の代表選手としてこのお店を選択した監督に、座布団1枚差し上げたい気分です。
一方で、時計店に侵入するために下水道を使う下りがありましたが、下水道の中でスマートフォンに電波が届いていたのはちょっと現実的ではないかなと。もう少しリアルを重視して貰いたいところではありました。
本筋にはあまり触れませんでしたが、主役のマーを演じたイーダン・ルイとヤウを演じたアンソン・ロー、ロイを演じたギョン・トウは、香港の人気アイドルグループ「MIRROR」のメンバーだそうで、いずれも中々の色男。日本で言えば旧ジャニーズ系のアイドル映画に位置付けられる作品のようですが、最後のどんでん返しなどもあって物語的にも良く出来ていて、結構楽しむことが出来ました。
そんな訳で、本作の評価は★4.0とします。