「ロジックに矛盾はないが、主人公に共感出来ない」今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は Dickさんの映画レビュー(感想・評価)
ロジックに矛盾はないが、主人公に共感出来ない
1.はじめに:大九明子監督との相性
❶大九明子は、大学時代からコント集団に所属し、卒業後は秘書として就職するが水が合わず退職、芸人養成学校を経て、お笑い芸人として活動する。その後、女優、タレントに転身。更に、映画美学校に第1期生として入学し脚本と監督の腕を磨いたという珍しい経歴の持ち主(Wikipedia)。
❷長編監督作品の劇場デビューは、39歳、2007年(下記①)で、その後2025年の本作(⑩)まで、10本が劇場公開されている。
❸内、下記②を除く全作をリアルタイムで観ているが、相性は良好である。
①2007年 恋するマドリ 2007.08公開/鑑賞90点
②2012年 東京無印女子物語 2012.06公開/未鑑賞
③2013年 モンスター 2013.04公開/鑑賞50点
④2015年 でーれーガールズ 2015.02公開/鑑賞95点
⑤2017年 勝手にふるえてろ 2017.12公開/鑑賞70点
⑥2018年 美人が婚活してみたら 2019.03公開/鑑賞70点
⑦2019年 甘いお酒でうがい 2020.09公開/鑑賞73点
⑧2020年 私をくいとめて 2020.12公開/鑑賞85点
⑨2022年 ウェディング・ハイ 2022.03公開/鑑賞95点
⑩2025年 今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は★本作/70点
2.マイレビュー:◆◆◆ネタバレ注意
❶相性:中。
★ロジックに矛盾はないが、主人公に共感出来ない。
➋時代:2024年。(さっちゃんの位牌の日付が令和6年)
❸舞台:大阪、京都。
❹主な登場人物
①小西徹(✹萩原利久 はぎわら・りく、24歳):主人公。関西大学2年生。横浜出身。内向的で自信がなく「自分は他の人と違う」という自意識を持っている。学内では晴れの日でも折り畳み傘を差し、人と触れ合うことを極力避けるようにして生きている。友人は山根のみ。近所の銭湯「七福温泉」で深夜に清掃のバイトをしている。バイト仲間で同じ歳のさっちゃんは小西に好意を持つが、小西は無関心である。大好きだった横浜の祖母が亡くなり帰省し半年ぶりに登校して、桜田を見かけて惹かれる。
②桜田花(✹河合優実 かわい・ゆうみ、23歳): 関西大学生。学食でいつも一人で蕎麦を食べている。興味を持った小西がアプローチしたところ、2人は同じ価値観を持っていることが分かる。桜田が小西に、「毎日が楽しいって思いたい。今⽇の空が⼀番好きって思いたい」と言うが、それは、桜田が9歳の時亡くなった父の口癖であると共に、小西の祖母の言葉でもあった。これから2人は急接近する。2人の関係を桜田は「セレンディピティ」だと言う。その後、さっちゃんがいなくなったのと同じ時期に桜田も姿を消す。
★終盤で、桜田はさっちゃんの姉で、さっちゃんは交通事故で亡くなっていたことが分かる。
③さっちゃん(✹伊東蒼 いとう・あおい、18歳):銭湯「七福温泉」での小西のバイト仲間。同志社大学の2年生。サークルのバンドでギターを弾いている。小西にスピッツの「初恋クレイジー」を勧める。小西とは反対の気さくで明るい性格。小西に好きな人が出来たことを察したさっちゃんは、小西に自分の思いを告白して姿を消す。
★長回しで撮った告白シーンでの伊東蒼の演技に胸が打たれる。
④山根(黒崎煌代 くろさき・こうだい、21歳):関西大学2年生。大分出身。小西の学内唯一の友人。
⑤花とさっちゃんの父(✹浅香航大 あさか・こうだい、31歳):娘たちが小さい時病死していて、回想で登場。娘宛の手紙が残っている。ギターを弾く。
⑥マスター(安齋肇 あんざい・はじめ、70歳):小西と桜田が通う喫茶店のマスター。メニュー「オムライス」に特別な意味がある。
⑦夏歩(松本穂香 まつもと・ほのか、26歳):佐々木の娘。バイトの小西とさっちゃんを優しく見守るお姉さん的存在。妊娠していて赤ちゃんんを出産する。
⑧佐々木(✹古田新太 ふるた・あらた、58歳):銭湯「七福温泉」の主人。夏歩の父。
❺まとめ
①主人公の小西をめぐる桜田とさっちゃんの三角関係の恋愛模様で、小西の眼から見た内容になっている。
②女性2人は良かったが、小西のモラトリアムなキャラに共感出来なかった。何事にも無関心なのは、自分を守る防御反応だろうとは思うが、相性として共感出来ないのだ(笑)。
③テーマ曲になっているスピッツの「初恋クレイジー」を理解していれば、本作の理解も深まったのかもしれないが、全くの無知だった。
❻トリビア:セレンディピティ(Serendipity)
①セレンディピティとは、イギリスの政治家・小説家のホレス・ウォルポール(1717-1797)が1754年に生み出した造語で、「素敵な偶然に出会ったり、予想外のものを発見すること」の意味で使われている(Wikipedia)。
②同名のアメリカ映画が日本でも公開されている。
『セレンディピティ(Serendipity)(2001米)』 2002/11公開・鑑賞 70点。
❖監督:ピーター・チェルソム、脚本:マーク・クライン、出演:ジョン・キューザック、ケイト・ベッキンセイル
③私にとってのウォルポールと言えば、ゴシック小説の傑作 『オトラント城奇譚(The Castle of Otranto)1764』。