「長々と言わないとあの言葉にたどり着かない。」今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は りんごさんの映画レビュー(感想・評価)
長々と言わないとあの言葉にたどり着かない。
すごい映画を見た。
上映後、なかなか言葉が出てこなかった。言葉にできない余韻。でも、それを言葉にしたいと思い、初めてレビューを書いてみた。
この映画は、男子大学生小西(萩原利久)が休学から復帰し、同じ大学に通う女子大生桜田(河合優実)を見かけ、気になり始めるところからスタートする。
とにかく、繊細な心理描写から目が離せない。
桜田が気になりつつも、声をかけられない。どうきっかけを作ればいいのか。近づきたい、でも、近づき方がわからない。そんな小西の不器用さがもどかしい。
その後、偶然から会話が始まる。お互いのことを知らない同士のぎこちなさ、気まずさ、何を話せばいいんだろう、、、が伝わってくる会話に共感しつつ、徐々に会話が弾んでいく楽しさを感じていたその時、小西が桜田に「授業を抜け出そう」と提案する。
授業を抜け出し、急激に距離が縮まる2人。
緊張の糸が解け始め、安心感と高揚感、心地よいやりとりが展開される。
気になっていた人が、好きな人に変わるかもという、わくわく感の中にドキドキが混ざってくるような、そんなやり取りが微笑ましい。
前半の展開が変わるのは、さっちゃん(伊東蒼)の告白シーン。このシーンに心がえぐられる。
さっちゃんは、小西のバイト仲間で、小西に恋心を寄せている。が、小西はそのことに全く気付いていない。
さっちゃんの挙動がいちいちかわいい。小西の何気ない一言に浮き足立ち、小躍りをするくらいには乙女である。しかし、バイト中の何気ない会話から小西に好きな人ができたことを察する。
その帰り道、自分の恋が実らないことを知りながらも、今日まで気持ちを伝えなかった後悔から、小西に告白をする。というよりも、さっちゃんの感情が溢れ出して留めておけなかったのかもしれない。
この告白シーン、めちゃくちゃ長い。が、一瞬たりとも目を離すことができない、と思えるほどに心を深く刺される、何度も。恥ずかしさ、後悔、もどかしさ、自己嫌悪と言った感情が言葉になり、溢れ、ぶつかってくる。
「私のおらへんところで、私のこと思い出して、聞いて欲しかっただけ!」、「好きになってごめんな!」といった言葉の数々に胸を締め付けられる。
あぁ、恋とか青春って、全然キラキラしてなかったな、ということを思い出させられた。
一方で、小西の視点に立って考えると、気になっていた人と距離が縮まり、地に足がつかないような夢見心地である。彼は、さっちゃんの気持ちを正面から受け止めることも、気の利いた返事をすることもできず、立ち尽くすことしかできない。
次の日、早朝から桜田と喫茶店で朝食を摂る小西。完全に浮かれているということが誰の目にも明らかで、前日のさっちゃんの告白シーンを見たからこその、モヤモヤがすこし漂う。
喫茶店を出た小西は、その日のランチを同じ喫茶店で食べよう、と少しおかしな提案をする。快諾する桜田。しかし、約束の時間が来ても桜田は現れず、日が暮れてしまう。
それ以来、小西の前に桜田が現れることはなかった。
突然のことに動揺し、自分は嫌われたのではないかと被害妄想を膨らませ、落ち込む小西。そして、悶々とした1ヶ月半を過ごす。
後半、物語が動くのは、小西のバイト先のシーン。告白から1ヶ月半、さっちゃんはバイト先に来ていなかったのだが、その理由をオーナーが小西に告げる。小西は、告白後の気まずさからバイトを辞めてしまったと思い込んでいたが、実は交通事故でさっちゃんが亡くなってしまったことを知る。
オーナーと小西で、さっちゃんの自宅へ線香を上げに行くことに。そのさっちゃん宅で桜田と偶然の再会を果たす(桜田はさっちゃんの姉だった)。
そこで桜田は、さっちゃんが事故にあった日のこと、それからの自分の生活について小西に話す。
(さっちゃんが事故にあった日は、小西と桜田が朝食を食べた喫茶店で、ランチをしようと約束した日。)
淡々と展開されながらも、込み上げてくる感情を抑え切れない桜田の話し方がものすごくリアルで、引き込まれる。家族の死、そのことから生まれる哀しみ、痛み、苛立ち。更にさっちゃんの告白シーンが思い起こされて、感情が込み上げて来る、涙なしには見られない名シーン。
そして、さっちゃんのお気に入りだった曲「初恋クレイジー」を2人で聞くことに。
音量を上げる小西。そして、桜田へ「好きだ」という思いを告げる。
さっちゃんの告白を正面から受け止められなかった小西。そんな自分が、まさにさっちゃんの遺影の前で姉である桜田に告白をする。複雑。
「人を傷つけた人間として生きていくよ。最低最悪のクソ野郎として生きていくよ俺は。」という言葉に、小西の力強い覚悟が感じられる。個人的にはめちゃくちゃグッときた。
そして最後に「好きです。」と告げられ、映画は幕を閉じる。
メインの軸ではないが、小西の唯一の友達の山根(黒崎煌代)。めちゃくちゃいいやつで素敵だった。あんな友達が1人くらい欲しいねん!特に仲直りのシーンがええねん!
あと、バイト先の佐々木さん(古田新太)。佐々木さんの存在が映画に厚みを持たせていると感じる。
さっちゃんの死を小西に告げるシーンの「自惚れるなよ、クソガキ!」の所、痺れた!
長々とまとまりのない文章を書いてしまった。ほんとはもっと端的に!あの言葉だけ伝えたら良かった。でも、助走なしで、あの言葉は伝えられなかったと思う。
最高に好(この)きな映画でした!!!
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