「ぼっちな若者にも物語を与えてくれる学生街」今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は KaMiさんの映画レビュー(感想・評価)
ぼっちな若者にも物語を与えてくれる学生街
前半で描かれる大学生活にいろいろな記憶をくすぐられた。自由を得たことにむしろ不安を感じるのか、むやみに集団をつくる大学生たち。そこに入りたいわけでもないのに、取り残されたことに何か敗北感も感じる「ぼっち」な主人公たち。でも独特な感性をもった若者たちにもちゃんと出会いのチャンスがやってくる。
見晴らしがよく本物の芝が植えられた校舎の屋上とか、若くして亡くなった女子大生をしのぶ記念館とか、互いにぼっち時間に見つけた大切な場所を萩原利久と河合優実が共有しあう。
特に喫茶店のマスターのエピソードが素晴らしい。不思議な名前のメニューが並ぶなか「オムライスだけは普通なのはなぜ?」と尋ねるため常連客になるまで通い、タイミングを見計らう。2人の物語と学生街の歴史が徐々に重なり合うような前半部分が好きだった。
一方で萩原利久は、銭湯でのバイト仲間(伊東蒼)からひそかな恋心を寄せられている。だが萩原は河合優実に夢中なあまり、彼女に聞いたばかりのキーワードを無自覚に会話に持ち出しつつ、伊東が熱く語るスピッツの曲はいつまで経っても聞いてみようとしない。
要は経験不足すぎて異性から好意を持たれていると考えもしないのだ。偶然の出会いが運命を変えることもあれば、運命のいたずらで、自ら目の前の扉を閉ざしてしまうこともある。その現実を突きつける伊東蒼の長台詞が映画のハイライトだった。
映画の後半は、個人的にあまり気持ちが追いつかなかった。まず登場人物の死でその人の大切さに気付かせる展開が苦手。この映画ならもっと繊細な描き方もできたのではと思ってしまう。
また、河合優実さんが出てくる映画(「ナミビアの砂漠」など)はなぜか現実と空想が混じる場面が必須なのでしょうか。
ちょっとわからなくなったのは、河合優実が彼と距離を置いた理由である。河合優実がぶちまけたように、本当は彼が自己満足でキモイ人なのか(このシーンはほかの方のレビューを見るとただの妄想らしい)、妹を失恋させた件にわだかまりがあるのか(傘を妹を通じて返却しようとした台詞あり)、純粋に妹を失った痛手なのか。これらが解決されればラストシーンにも感動できたと思う(または私が読み取れなかっただけでしょうか)。
コメントをありがとうございました。花が小西徹の弔問を、どんな気持ちで受け入れたのかやはり整理できていませんでした。前半まで大きなテーマだった徹との関係、妹の失恋など語るべきことは多いはずなのに、結局事故死だけがクローズアップされて何か置いていかれた具合になるんですね。
桜田さんは小西がお参りに来るまで妹が好きになったバイト先の人だとは知らなかったとのセリフがあり、傘も、バイトが一緒と知っていたなら妹に持って行って貰えばよかった、という流れだったと記憶していますが違いましたかね…
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