「さっちゃんにもっていかれた〜」今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
さっちゃんにもっていかれた〜
河合優実さんが出演するということでとりあえず鑑賞予定に入れ、公開2日目に鑑賞してきました。思っていたのとは異なるテイストでしたが、若手俳優陣の渾身の演技が光る良作でした。
ストーリーは、いわゆる陽キャのグループには入れないタイプの大学生・小西徹が、おもしろみのない大学生活を送っていたある日、同じ講義を受けていた女子大生・桜田花の自分のスタイルを貫くような姿に惹かれ、思い切って声をかけたことをきっかけに、二人はあっという間に意気投合して、一緒に楽しい時間を過ごすようになるが、その頃、徹のバイト仲間のさっちゃんが突然姿を消してしまい、これが後に二人に暗い影を落とすことになるというもの。
人との距離感をつかみかねる若者が、誰かを好きになる喜びや切なさに一喜一憂する姿が、観る者の共感を誘います。人を好きになるのは本当に尊く素敵なことなのに、どうしてこんなに苦しく切なくなるのでしょうか。誰もが自身の学生時代を思い出して、胸が苦しくなると思います。昔以上に人間関係がデリケートになり、他人の目を必要以上に気にする現代の若者にも、今まさに経験している感情と重なり、刺さるのではないでしょうか。
また、あっというまに意気投合し、似たような価値観に居心地のよさを感じるようになった二人なのに、ちょっとしたボタンのかけ違いで、ネガティブな思考に傾くのも、恋愛初期のあるあるネタで共感度が高いです。ましてや小西のように、自分に自信がなく、周囲の視線を気にしている男ならなおさらでしょう。
その一方で、自分に好意を寄せている女性の気持ちにはまったく気づかない鈍感ぶりも、実に小西らしいです。男ってこんなものかもしれませんが、なんとなく小西は自分本位な恋愛をしそうなタイプに見えてしまいました。
そんな小西に対して、さっちゃんの長い長い告白が刺さりまくります。本作屈指の名シーンで、あまりにも実感がこもりすぎていて思わず泣けてきます。こんなに素敵な子はめったにいないし、小西にはもったいなさすぎます!河合優実さんももちろん素敵ですが、さっちゃん役の伊東蒼さんもすごいです。このシーンが強烈すぎて、主演の二人が食われ気味に感じるほどです。
それにしても、タイトルにある「今日の空が一番好き」って、なんだかいい言葉です。今日の空が一番を更新するということは、今日を最高にすることにほかならず、そのために今日に全力を尽くせということでしょうか。さっちゃんの渾身の告白の中にある「もし…だったら」という後悔を滲ませる言葉が思い出され、胸が締め付けられます。「今日の空が一番好き」って言える人生を送りたいですね。
主演は萩原利久さんで、ちょっと神経質でナイーブなキャラがよく似合います。脇を固めるのは、河合優実さん、伊東蒼さん、黒崎煌代さん、古田新太さん、安齋肇さん、浅香航大さん、松本穂香さんら。長い独白シーンが多いのですが、若手俳優陣がみごとにその大役を果たしています。
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