劇場公開日 2024年12月27日

「彼は今ごろどんな大人になっているのだろうか」I Like Movies アイ・ライク・ムービーズ 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0彼は今ごろどんな大人になっているのだろうか

2024年12月31日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

まるで10代の頃の自分だと本作を見ながら溜息と苦笑で顔が歪んだ。映画ファンに限らず、きっと全ての人の中に多かれ少なかれ彼は存在する。この一見、オーソドックスでありながら、00年代初頭の映画をめぐる風景(特にビデオショップ内の)をノスタルジーたっぷりに活写したカナダ産の佳作は、まるでジャック・ブラックの少年版のような身勝手極まりない主人公がやがて一歩踏み出していく姿が静かな共感を呼ぶ。彼が抱く生きにくさ。自分は才能に満ちているという根拠なき自信。家族も友人もみんな下に見てしまうサイテーな孤独。そこで唐突に立ち現れる歳も性別も異なる店長が、掛け替えのない関係性をもたらしてくれるのも物語として、構成として気が利いている(少年と同様、私の中にこの店長も確かに存在するのだ)。傑作とは言わないが、人生を振り返る時に開くアルバムの、いちばん人には見せられない部分のような、甘酸っぱく胸に沁みる一作である。

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牛津厚信