「世界は映画館を必要としている。」キノ・ライカ 小さな町の映画館 あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
世界は映画館を必要としている。
私には好きな町の条件?というようなものがあって。
一つ目は、お城があること。
二つ目は、郊外電車があって、それに乗れば温泉場に行けること。
三つ目は、地元の酒蔵と、本屋と、そして映画館があること。
関東でいうと小田原はこの通りなんだけど、ちょっと町の規模が大きすぎて。今まで行った先でドンピシャなのは上田かな。九州あたりにはいくつかありそうだけど。
アキ・カウリスマキのこの映画はまさにそういうことを言っているわけで。彼の生活においては映画館と、そしてバーがないことは考えられない。だから生まれ故郷に近く、何かと縁のあるカルッキラに映画館をつくった。
この作品はそのドキュメンタリーということだけど、映画館が出来上がるまでを時系列に追っているわけではなく、いろいろな人が映画館への期待や、映画館に関わった経緯や、アキに対する思いなんかを喋っているのをアットランダムに繋いだ感じ。ただ構成は凝っていて、インタビューしている人をまた外から撮影していて、それをさらにTVで観ている人たちを撮影する、といった多重構造になっている。映像は全般に暗い、けど美しい。シーン毎の構図もアーティスティックでレンブラントの絵のようだ。
アキの作品は常に、生活と芸術の接点というか、その二つが溶け合っている世界観を表現している。そしてその生活においては映画館(そしてバー)が欠かせないっていうことですね。
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