劇場公開日 2025年1月17日

敵のレビュー・感想・評価

全222件中、101~120件目を表示

3.0虚の中のリアリティ

2025年1月25日
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鑑賞方法:映画館

夢なのか妄想なのか現実なのか不確かな事象がスクリーンで起きる事自体を楽しむ映画なのかと思うが、終盤は全てが夢か妄想にしか見えなくて(実際そうなんだろうけど)割とどうでも良くなってしまった。
ギリ現実なのかもと思わせる描写があれば感じ方は違ったのかもしれないが。

映画や小説が全て虚なのは当然だが、虚の中のリアルのバランスとして自分はこの作品は上手く受け止められないと感じた。

丁寧な日常を丁寧に描写している序盤や、心の状態が日常の行動に波及している終盤の描写とかは好きです。
彼の様に地位も名誉も手にした人間でさえ、その地位と名誉の源泉から離れてしまった後の姿の描写として身につまされるリアリティがある。人間は一定以上自己のアイデンティティを外部に依存せざるを得ないが、依存の程度や強い場合や依存先が少ない場合の危うさについては老後に限らず意識しなくてはならない。

原作未読なので映画単体としての評価です。

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omoro

4.0一人の俗物を襲う「老醜」と「死」

2025年1月25日
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鑑賞方法:映画館

仏教で説く「四苦八苦」の四苦は生・老・病・死を指す。老と死は一続きではない。老いることは苦しみであり、そして死は別に存在する。この映画は老と死を峻別して別々にみせているところに際立った個性がある。
主人公渡辺儀助は大学教授だったがすでに引退し妻にも先立たれた。古い日本家屋で暮らし、身の回りのことはキチンとこなす。食べることにこだわりがあり、凝ったものはつくらないが飯を炊き、肉や魚を焼くなどして菜をつくり食事を楽しんでいる。講演の謝礼は10万円と決めており(安売りはしない)貯金が尽きたときは自裁すると公言している。
要するに自律的、スタイルスティックな生活をおくっているわけだが、翻っていうとこれは老醜を恐れているからに他ならない。ありのままの自分を受け入れられないという意味で俗物であろう。
だが年月は人を老いさせていく。顔の張りはなくなり、身体はたるみ、加齢臭が漂うようになる。
そして儀助を取り巻く女たち。教え子の旅行雑誌編集者は時として儀助を訪れ心をかき乱す。彼女の狙いはよく分からないが、恐らくは学生時代の楽しかった記憶を思い起こしたいというような気持ちなのだろう。バーで出会った女子大生は金目当て、そして儀助の夢うつつに現れる亡妻は儀助の言うことを聞かず恨みごとを申し立てる。つまり、自分勝手な彼女たちと自分自身の欲望に振りまわさせることによって儀助の老醜が隠しようがなく晒されていくのである。
そして「敵」。恐らくこれは死を指している。死は老いとは別のところから現れ、容赦なく人を打ち倒していく。青森から上陸し、黒く汚く這いずる者たちというのは儀助の持つ「敵」=死のイメージなのであろう。
「敵」=死は突然やってくる。これは映画の中でフランス語の引用でも示されるし、儀助の友人であるデザイナー(松尾貴史)が敵を見た後、突然死ぬシーンでも説明される。
老醜から逃れられなかった儀助は「敵」=死からも逃げられない。
残酷な映画であるとしか言いようがない。
映画の最後は、儀助の残した遺書によって家を相続した遠縁の槙男と思われる人物が家を見て回るシーンで終わる。槙男がのぞき込んた遺品の双眼鏡に、儀助の姿が一瞬映る。人は死に、その記憶はかすかに亡霊のように残るが、やがて跡形もなく消え去っていく。その無常を改めて感じた作品でもあった。

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あんちゃん

4.0敵とは…

2025年1月25日
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定年後の余生を過ごす元大学教授。
古い日本家屋で日々を暮らす姿は品がある。
主役の長塚京三のスラリとした姿と落ち着きのある良い声が役に合っていた。

始めはパーフェクトデイズのように日々の身の回りにある幸せをただ見つめていく映画のように見えるが、少しずつ静かに危機が迫り来る…
淡々と抗えない欲求と老いが襲いかかってくる展開にクスリとしちゃう時もあったが、次第に夢に侵食されていく感じは恐ろしかった。ただ、ちょっと長く感じちゃったなぁ。

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いたかわ

4.5女性たちが上品

Kさん
2025年1月25日
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鑑賞方法:映画館

とてもよかった。全体的に品がよい。主人公のあられもない素の部分も教養人らしさがあり、登場する女性たちの立ち居振る舞いは艶めかしくも上品で、時々クスリと笑わせるウィットの具合も絶妙だ。原作は未読だが、筒井康隆の原作がそうなのか。筒井ファンなのか映画館の入りもとても良かった。

物語は自意識版「ファーザー」(アンソニー・ホプキンズ主演の)とでも言えそうな展開であった。最後の春のシーンを観て、結局、境界はこのあたりだったろうと自分の中で納得したところはあったが、口にすると切ないので、そこはあえて書き立てることなく曖昧模糊なままそっとしておきたいという気持ちになった。

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K

4.0敵とは

2025年1月25日
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老い。
敵とは煩悩。
敵とは思い出。
敵とはお金。
敵とはご近所。

敵とは死。

渡辺儀助77歳の静謐な生活が丁寧に描かれているからこそ、脳内の妄想が際立つ。
長塚京三さんの抑えた演技とモノクロ画像が見事にマッチしている。

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ピッポ

4.5「敵」とは誰だ?

2025年1月25日
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鑑賞方法:映画館

先ずは、長塚京三さんの名演技が有ればこその集大成と言えるでしょう。
高齢者の老いへの恐怖→死への階段を丁寧に、自分との闘いとして描いている名作だと思いました。

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デイジー

5.0現実と妄想のバトル

2025年1月24日
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さすが筒井作品。どれも最初から暫くは面白いんですが、最後に近づくのにつれ、カオス状態になり、訳が分からん状態で終わる。筒井作品読み終わると、ため息をつき、暫くは思考に暮れる。ある意味、作品に取り憑かせる力が有るんでは。
しかし、先生の豆さには尊敬します。毎食、御自分で一から作るんですから。この場面には食いつきましたね。
この性格がカオスの原因ですね。私みたいにスーパーの惣菜オタクにはカオス、心配ありませんね。

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ホモ・サピエンス

5.0こういう映画が好きなら

2025年1月24日
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悲しい

知的

1週間前にレビューを投稿したのになぜか反映されない...
前にも一度ありましたが、なにかNGワードでも書いたかな?
ということで短めに。

前半は老いていく孤独な老人の切ない日常を描いていて、パーフェクトデイズを思い出してしまった。

後半になるにつれ何が現実で何が妄想かわからなくなり、終盤はいったい何を見せられてるのか理解できなくなる。

と書いていくと、作り手の自己満足的な映画のように聞こえるがそんなことはない。
とても面白い。
いや傑作です。

ただし、こういう映画が好きな人にとっては。

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ジミー

2.0老いの恐怖を経験している人にとってはあるあるネタ的な感じでメタ的に...

2025年1月24日
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鑑賞方法:映画館

老いの恐怖を経験している人にとってはあるあるネタ的な感じでメタ的に見ることが出来て面白いのだと思う。そうでは無いので個人的に全く興味を持てず始終眠かった。
 昔の文章をそのまま台詞にしている会話が多い。しかも、意図的ではなく、練習すらしていないのか滑舌が悪く言葉を発することが出来ていない俳優が何人かいる。言葉を発せられないなら、脚本を変えるか俳優を変えれば良いのに。主人公の老後の妄想を俳優なのかよく分からない人がただ演じているのを見せられ続けて退屈だった。
 ただし、日本語が分からない人が字幕で見れば評価は変わりそう。

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TARO

2.5crescendo(だんだん強く)

2025年1月24日
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難しい

主人公の平穏な日常が、じわじわと歪んでいき、
だんだんといやーな奇妙なことが…

最後に、あーなるほどね、ってなるところと
最後まで、…ん?どゆこと?と自分には難しかった。

カラーよりモノクロが合う映画。不気味さも深まる。

主人公のモーニングルーティンの映画予告は面白かった。
ものすごく目玉焼きが食べたくなる…

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summer

2.5なんじゃこりゃ

2025年1月24日
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鑑賞方法:映画館

最初は年配男性の一人暮らしの丁寧な暮らしぶりが淡々と描かれていて、
モノクロというより極限まで彩度を落とした映像で、
登場人物もセリフも少なくとにかく眠かった!!!
一人また一人と登場して話は進むが、途中から夢?妄想?現実?ごちゃ混ぜで
なんのこっちゃの世界でした。これがSFというものなのか。
私はSF作品を読んだことがありません。筒井先生の作品も読んだことがありません。
知識がないからか理解できない。。。
最後なんてもう、とんだ安っぽい映画を見せられている気分。

筒井先生が以前、関西ローカルの番組にコメンテーターとして出演しており
いつも最後に確信をつく一言や粋な一言を仰るのがとても面白く好きでした。

だけどこれはよくわからなかった。原作を読んでみたくなりました。

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mameta

2.5「PERFECT DAYS」と表裏一体

2025年1月24日
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鑑賞方法:映画館

「PERFECT DAYS」がしっくりこなかった人が見る映画なのかも。
だが、どちらも一面だけのズルい映画に思えてならない。
「PERFECT DAYS」の役所広司は最後にダイナマイトでも持って国会議事堂に突っ込んでいけばと思うし、今作の長塚幸三は最後はいつも通りに朝食を食べて終わって欲しかったと思う。
筒井康隆を映画にする難しさ、夢映画の難しさを痛感する!

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ケージ

5.0よしだメンタルクリニック

2025年1月24日
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鑑賞方法:映画館

人は歳をとるにつれ、ひとつ、またひとつと、大切な何かを失くしていく生き物なんですね。最後に残るのが自分だけってのはリアルです。

全編モノクロの意味は深いですね、作品の構成から細部、小ネタに至るまで面白かった。

【個人的解釈】
全編モノクロなのは渡辺儀助さんの夢だから。
すでに彼は死んでいるため、故人のラスト4Seasonに見た夢を描写したものと解釈しました。死にゆく己を夢見し、死後の己なき我が家を夢見する。こう解釈すると合点がいくのだが・・・どうなんだろう

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ちゆう

4.0朝から米を研ぎ、鮭を網で焼く…というような老インテリの絵に描いたよ...

2025年1月24日
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鑑賞方法:映画館

朝から米を研ぎ、鮭を網で焼く…というような老インテリの絵に描いたような丁寧な隠居生活が壊れていく。老後の資金、老いらくの恋、希死念慮、健康不安それらがすべて「敵」として包囲してくるような息苦しさ。あれほど端正な老後を過ごしていた人が、それでも老醜をさらしてしまう無惨。悲惨なだけではなく笑いもふんだんにあるのだが、歳が近いわけでもないのに、何故か酷く共感性羞恥のようなものまで感じてしまう。それでもなんとか最後まであがき続け、決して誰も勝てない戦いを耐えきった…結末にはそんな尊ささえ感じてしまった。

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sugsyu

4.0結末は???だが、確実に面白かった!

2025年1月23日
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興味を惹かれるストーリーで「この後どうなるんだ?」という展開が終始続きました。
ラストは視聴者に委ねれた形だと思いますが、映画としては面白かった。

元大学教授で慕ってくれる元教え子もいて、雑誌の連載があったり、手の込んだ料理を作ったりで毎日がそれなりに充実している。
いわゆる勝ち組の知的階級の年金生活者ですが、やはり高齢者の一人暮らしは孤独なんですね。

目を引く場面ではカラーになったり、人物の何気ない登場シーンがハッと驚くような撮り方をされていたり、モノクロ映画の良さを活かした演出が斬新でした。

ホラーかと言われればそうでもない気がしました。
確かに「敵」が日常の中でだんだんと近づいてくる描写があって、怖さを感じる場面もありますが、過去の思い出や妄想の中の人物のぶっちゃけた発言がコミカルで、見ててクスリと笑える場面も多かったです。

だんだんと近づいてくる「死」が敵そのものだったようにも思えますね。

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ジュンヤ

5.0老い

2025年1月23日
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 おっとりした時間が徐々にすり減っていく。
 元フランス文学の教授の渡辺儀助は自分の貯金残高に残りの時間を合わせながら悠々とした時間を過ごしていた。同時に彼の崩壊もゆっくりと忍びこんでいく。
 細部まで気を配られた日常が、儀助が孤立していくごとに噛み合わなくなっていく。連載の打ち切り、友人の死、女、老化、敵。
 アケルマン的な淡々とした時間がだんだんとリヴェットの世界のように壊れていくサスペンスはたまらない。
 白と黒だけの色彩設計はよく練られている。敵は黒だ。それに注目して見ても面白い。単純に映像だけを味わおうとしても、コントラストがはっきりしつつ、グラデーションもきめ細かいモノクロ映像は興奮させられる。
 食事と排泄、睡眠、セックス。人間の罰が作品全体にきちんと並べられていて、生のあり様が老いを際立たせている。儀助の欺瞞と虚飾に満ちた死生観がハリボテであることが暴露される。
 コルドリエ博士にも似た儀助の妖しい妄想の旅は映画としてこの上ない。
 満点。

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悠

3.5ホラー映画かな

2025年1月23日
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悲しい

怖い

難しい

原作は筒井康隆だったのですね、どおりで
前半は妻に先立たれた男の私生活を覗き見
自炊のご飯はどれも美味しいそうで…
題名である「敵」の気配すら無く淡々と過ぎていく
ところがある時変なメールが届き
次第に展開がおかしくなっていく
教え子やら、Barの女の子やら、妻やら
男の妄想も交えつつ
誰もが老いと戦って生きているだろうし
この先老いていく自分のことも考えさせられる
ちょっととゾッとするストーリー
最後まで観れば敵の正体はわかります

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かちかち

4.0静か過ぎる恐ろしき日常

2025年1月23日
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悲しい

怖い

知的

主人公の淡々と過ぎ去る老後の毎日の生活。

雑誌の連載とギャラ10万円の講演活動が生きる糧となってるかのような。

しかし、高値のギャラ故に講演会からはお声が掛からなくなっており、唯一の雑誌の連載が終わりを迎える頃、主人公の生活スタイルがグラグラと揺らぎ始める。そう、ずっと夢と現実をさまよい続け、がんじがらめで抜け出せなくなっているかのような…。あのエピソードもあのエピソードも、あの登場人物も全て妄想だったら…。

モノクロの映像も相まって、最後には背筋がゾッとしました。

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リオウリオウ

3.5不安と晩年

2025年1月23日
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鑑賞方法:映画館

『ファーザー』や『VORTEX』をみたときにも思ったけど、晩年を描く映画は、つねにぼんやりと靄のような「不安」にくるまれている。
人生の終わりかけにもひとは不安から解放されないのか、と思うとすこしうんざりしてしまう。

この映画でも、きちんとした清潔な生活に少しずつ不安は入りこんでくる。あまり感情的にならず、おろおろと夢と現にふりまわされる老紳士をものすごくていねいにみせる。
老いそのものが敵だとは思いたくないけれど。

最後に読み上げられる文章がとんでもなく押しつけがましくて、彼の人間性がそこにみごとに集約されているなあと思った。

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kikisava

5.0老人映画の傑作

2025年1月23日
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この映画の素晴らしさは他の方が語ってらっしゃるとおりだと思います。
夢精して白いじじ臭いパンツを洗うとこが…悲しい

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Ferma