「老いによる錯乱を描いているのかも」敵 コージィ日本犬さんの映画レビュー(感想・評価)
老いによる錯乱を描いているのかも
原作は未読or積読で鑑賞。
(筒井さんの小説は、一通り高校時代以降1990年代半ばまで読んだはずだが、これは2000年以降発売かな?)
原作への忠実度や、文章から得られるはずの内容の解釈と、映画を観ての感想が合っているかはわからないが、自分の印象的にはアンソニー・ホプキンス主演の『ファーザー』を思い出すような作品でした。
自らを律して清貧を貫き、日々坦々と生きている矍鑠とした元大学教授の老人が、認知症になっていくのかどんどん現実と夢の境が曖昧になっていき、理性で封じていた様々な欲望(特に性欲や征服欲)が押さえられなくなり、妄想と幻覚に苛まれ、本人の視点で錯乱していく様を描いたように見えました。
自分も、あと10~15年もするとこの域に入ってくるのではないか(4~50代で発症する若年性の病気もありえるし)、という不安を搔き立てられて、変な焦燥感を抱く羽目に。
作中の「敵」の存在が、ネトウヨやパヨクと言われる連中の語る妄想みたいで、作品として「今という時代に合ってる」と思いました。
また、長塚京三さんという配役ゆえの説得力というか。
若い頃は厳格で清潔だっただが、お年を召されてスケベ爺になっていく姿にものすごい説得力がありました。
一般的に面白いかどうかというと微妙だったのですが、映画祭など評論家系へ向けてはかなり受けそうな仕上がりで、昨年の東京国際映画祭の受賞結果はなるほどと思いました。
コメントする