「おじいさんが色々なものを失っていく物語?」敵 SOさんの映画レビュー(感想・評価)
おじいさんが色々なものを失っていく物語?
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家族(妻)、仕事、健康、女。そういうものを加齢とともに失っていく一方で、失いたくないという願望が歪んだ形で夢に現れる。
妻、教え子、そしてガツガツ鍋をむさぼり食う若年編集者らと鍋を囲むシーンはそれらがいっぺんに凝縮した場面だった。
おじいさんが独居生活を営む淡々とした日常描写が大半を占めるが、主演の長塚京三の演技力や歳を重ねたからこそ味わい深くなる魅力、画面作りの丁寧さなども相まって退屈だという印象は全く無かった。
作中「敵は急に現れる」と語られているが、確かにその通りで老いやさまざまな喪失を迎えるその時まで人はそれに気付かないものだ。
最終的に彼が自死を選んだか否かは描写されていないが、年齢を考えても比較的健康な様子だった冬から季節が移った春には既に亡くなっていたのでおそらく自死を選んだのだろう。生きるためだけに生きることに彼は結局耐えられなかったのだ。
追記
この映画、結構話題作だと思っていたんですが私の県ではTOHOや109、イオンシネマの上映はなくミニシアターだけが上映していました。意外でした。
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