「悪くはない作品だが、テーマを絞っても良かったか」STEP OUT にーにーのニライカナイ yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)
悪くはない作品だが、テーマを絞っても良かったか
今年82本目(合計1,624本目/今月(2025年3月度)16本目)。
「かなさんどー」に続いて沖縄を舞台にした映画が多く放映されるのは良いですね。
この映画はいわゆる「踊り」(ダンス)をテーマにするものですが、他の付随する話題として「いわゆる半グレ組織」「沖縄の貧困問題」(就職難など)のほか、「実際に起きた事件」(後述)まで扱っているため、テーマを絞りにくいという部分はあります。
主人公のテーマから、ダンスを武器に本土(沖縄に対していう語)に進出、そしてやがては世界に…という趣旨の映画ですが、その話はよく登場するものの、無関係な話題がちらほら登場し、これらの理解を妨げるのが厳しいです。かつ、放映時間はそれほど長くはないので、あっという間に終わってしまいます。
ただ、本質的に重要な事項を扱っている部分もあるし(後述)、この点はもうちょっと配慮が欲しかった…というより、一言でいうと「放映時間があと20~30分長くても良かったかも」といったところです。
採点に関しては以下まで考慮しています。
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(減点0.3/ストーリーを追うのが容易ではない)
難しいというより「いろいろな話題に飛ぶ」のが難しいです。予告編等からみれば「ダンスもの」と考えるでしょうし、そこに沖縄特有の話題がいくつか出る程度は想定できますが、「実際に起きた事件」(後述)のことまでになると、これは架空の事件ではなく実際に起きた事件でもあり、どうとらえるかが難しいです(後述)。
要は「話題を一つ二つに絞るか、あるいは放映時間があと20~30分あってもよかったのでは?」といったところです。
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(減点なし/参考/「象の脱走事件」について)
映画内で登場し、ストーリーにも一部絡んでくる「象の脱走事件」は、1973年という沖縄返還のちょっと前に実際に起きた事件です(タイから寄贈された子象が脱走した)。
子象とはいえ、象が脱出するというのはかなり「ヘンテコ」な事件だし、当時はミステリーものか?というような報道をされましたし(映画内でも描かれる通り)、この事件は実際に「象が逃げた」事件であるため、その「動ける範囲」から米軍基地ではないか?というような考えとなり、「探すだけだから中に入れて欲しい」という団体(今でいう動物愛護団体等)の要望と沖縄米軍の対立がちらっと発生し(ただ、沖縄米軍もこの点の「不自然さ」はわかっていてある程度は譲歩した)、沖縄における米軍基地の不信問題の一つの原点にもなっています。
なお、映画内でも描かれる通りこの事件は「未解決問題」で、一方で贈与したタイにおいても「まさか象が脱出するなんて」という考えであり(ある程度飼育に不備があっても、象が逃げ出すというのは珍妙な事件)、タイも当時の日本には強くは抗議はしなかったし(むしろ「ミステリーものだ」というようにとらえられた)、沖縄では当時まだ少し残っていた、島内での出身地差別(偏見)と絡めて「あそこの島では(脱走した)象でも食べたのか」といったことも多少は言われましたが、当然「象を食べる」等というのはどうやっても不可能であり、そのような発言もそうそうなくなり、結局2025年の今日まで「未解決事件」として残っています(当時、この象を飼っていた動物園が2万円(当時の「本土の」大卒の初任給が5~7万円程度だった)の懸賞金までかけたが結局見つからず)。