「いつになったら再編集は終わるのか?」ワン・フロム・ザ・ハート リプライズ Mr.C.B.2さんの映画レビュー(感想・評価)
いつになったら再編集は終わるのか?
初公開時、1982年8月30日に新宿ロマン劇場で観た時の上映時間は1時間47分だった。
日本では東宝東和の配給で、発売されていた日本公開版のVHSビデオテープとコロンビアの輸入版LD(レーザーディスクです。DVDはまだ存在していません)を友人と見比べて、こっちはテリー・ガーの乳首が見える、見えないとか騒いでいたのだが、一番驚いたのがレイ(ラウル・ジュリア)の部屋でフラニー(テリー・ガー)とベッドにいると二人の上からハンク(フレデリック・フォレスト)が屋根から落ちてくるシーンだった。カットしているとかでは無く、完全に別のテイクが使われていたのである。バックの曲はキャリオカなのだが映像が完全に別のアングルのテイクだった。日本公開版とアメリカ版でこの差がある。コッポラ、編集凝り過ぎだろう。
今回のコッポラの特集上映のタイトルは「終わりなき再編集」である。
2024年12月2日(月)新宿武蔵野館で「ワン・フロム・ザ・ハート リプライズ」を。
上映時間は1時間33分だった。初公開時より14分も短い。
ハンクは自動車解体工場を経営していて作業服を着ているシーンが何度かあるのだが、今回はそのシーンは全部カットされていた。後、ハンクとフラニーが言い合いをするシーンがカットされているようだが、二人はすぐに衝突して言い合いするシーンが多いのでどこだか良く判らない。
今観ると、5年間同棲していても二人は些細な事ですぐに衝突して飛び出てお互いが友人のモー(ハリー・ディーン・スタントン)とライラ(レイニー・カザン)の部屋に逃避してしまう。二人ともワガママ。
この友人の部屋のセットが並びでくっつけて作られていて、布で仕切られ両方から布越しに撮影されているのが斬新だった。ライラの部屋にいるフラニーがモーの部屋にいるハンクをワンショットで捕らえているのだ。その逆もある。だいたいこんなセットを作るやつはいない。本作は全編がコッポラのスタジオで撮られているのでこういう事が出来るのだ。
こういった撮影技法等で映像は凄いのだが、ストーリーは、喧嘩した二人が一晩別の相手と過ごしてよりを戻す話に過ぎない、ナスターシャ・キンスキーと寝て、起きた途端にフラニーに電話するハンクって嫌な奴だよな。ボラボラ行きの飛行機にレイと搭乗しながら戻って来るフラニーも同様。映像的には関心するも、この二人の行動には関心出来ない。
だから、アメリカの観客の共感・同意が得られず、そっぽを向かれて興業は歴史的なオオコケだったのかな。
おまけ
テリー・ガーとラウル・ジュリアが乗っているエレベーターに同乗している老夫婦はコッポラの両親、レイが働いているレストランに食事に行ったフラニーの隣のテーブルにいて料理の皿を取る女は映画デビューのレベッカ・デモーネイである。