鹿の国のレビュー・感想・評価
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なぜ?75頭もの鹿の生け贄が必要だったのか?
諏訪大社は日本最古の神社のひとつだが、中世迄【御室神事(みむろしんじ)】が行われていた。少年の生き神様【大祝(おおほうり】が3ヶ月半地下の御室に籠り、75頭もの鹿の頭が生け贄として捧げられていた謎に迫る❗民族学者の北村皆雄プロデューサーと弘理子監督が3年かけて再現した貴重映像。諏訪大社には御柱祭もあり、生き神様や生け贄、謎の【みじゃぐち】を通し、原始宗教、自然崇拝の片鱗を垣間見ることが出来る。人には『見れないものを見たい❗』という心理が働く所にメガヒットの要因があると思われる。
諏訪大社の特殊性
諏訪大社四社全て参拝したことがあるが、この土地の信仰の特殊性は目を見張るものがある。大きな社を有す神社や大伽藍の寺には政治的な背景があるのだが、諏訪大社の場合は純粋性が優った信仰の中に様々な意図が呑み込まれているようだ。原点のような信仰が時代と思惑の清濁合わせ呑む勢いで、御柱の如く真っ直ぐに人間の魂を貫いている。自然崇拝、精霊信仰、神道、仏教、諸々の土俗信仰が、一つの坩堝に叩き込まれ、現代に現れている。概念を宇宙的なニュアンスで捉えているようだ。それを人間が理解するべく努めた形が今に残っているのだろう。神秘としか言いようのない空間がここにはある。その空間は人の心の中にも通じているのだ。私は無意識の中に存在する「何か」を感じ取ることの重要性が信仰の芽生えであり、全てだと思い知った。
守矢氏への言及がないのが残念
鹿の国。
諏訪という字ばかりが登場するが、この地は元々「守矢氏」が治めており、そこへ出雲から入った諏訪氏が戦いの末に奪ったという逸話もある。
なので大祝は諏訪氏が務めてきたが、諏訪大社上社の神長官は守矢氏が担ってきたという。その後ろにそびえたつ守屋山は、守矢一族のご神体だ。その辺のいきさつを、深く掘り下げてくれるのではと期待したら、守屋氏の守の字も出なかった。そこには少し物足りなさを感じた。
また、「御神(おんこう)」を御贄柱に縛り付け、神官が小刀で刺そうとした瞬間に止めて子供は解放される、という神事も映像にはなかった。
この儀式は旧約聖書との類似も指摘されている。
「モリヤ」はユダヤ人の国イスラエルの首都エルサレムにある山の名前と同音。御頭祭は別名「ミサクチの祭」と呼ばれているが、「ミサクチ」はヘブライ語で「ミイツハク」に似ており「イサク由来の」という意味にとれる。などなど。
この映画は確かに美しいが、イメージフィルムのような仕上がりだった。代々守り継ぐ桜の木、諏訪周辺に残る民間信仰、いろいろと知らないことも多かっただけに、もう一掘りしてほしかった。
それにしても、諏訪。知れば知るほど謎も深まるばかりであった。
映像が神秘的で美しい
チラシのビジュアルと、少年を生き神とする神事というのに興味を持ち、前から行ってみたかった劇場でも上映されると知り田端へ。
20席と小さいながらもこういう劇場好き。
生き神の少年というのは長年行われているものではなく、再現してみたという事で出鼻くじかれるも、諏訪大社の神事や法要を軸に、鹿にまつわる地域の人々の営みと、大きな神社ならではの数々の祭りを観れる興味深いドキュメンタリーだった。
タイトル通り、いろいろな場面で鹿が登場するが、ある所では神の使いとして、ある所では神への贄として、またある所では害獣として扱われる、実に不思議な存在。
森に佇む鹿はなんだか神秘的。
桜の御神木を守る一族から、田植え稲刈り、冬を経て春になり、また桜の一族に戻る、季節ごとの風景を丁寧に撮影していて映像が美しい。
少しウッとなる所もあるけど、ヒステリックなプロパガンダもなく、淡々としていて観てよかったと思える映画だった。
神話の世界 聖なる世界 は単純に美しく清潔な世界ではない。 見てよかった。
聖なる動物として鹿はよく登場する。
思いつくだけでも、鹿島神宮、春日大社、もののけ姫のだいだらぼっち、仏陀が悟りを開いた鹿野宛(ろくやおん)、映画「鹿の王」「聖なる鹿殺し」(ギリシャ神話に着想を得た必見の映画)…。
描かれるのは日本の古層だ。
仏教が入る前、動物を贄にして神に感謝する信仰があった。
仏教という外国の思想・宗教によって殺生を禁じられた。
日本の伝統の否定だ。
それでも諏訪大社は伝統を失わなかった。
そこで唱えられたのが、以下の諏訪勘文と呼ばれる唱え言だ。
業尽有情(業の尽きた生き物は)
雖放不生(放っておいても死ぬのであるから)
故宿人天(人に食べられて仏教を信じる人身になることで)
同証仏果(人と一緒に仏果を得ること(成仏)できるというものだ)
お諏訪さまで、鹿食免(かじきめん)・鹿食箸(かじきばし)というお守りがある。
この札を拝し、この箸で食すれば肉食しても罪にならないという。
昨今、国際団体から天皇家の男子のみの継承にクレームがついたが、そういう外圧は昔からあったのだ。
この映画は諏訪大社でかつて行われた「ミシャグジ祭政体」という神事の復活をめぐるドキュメンタリーだ。
かつて75頭の鹿の生首が生神(少年・大祝(おおほうり))にささげられたという。
現在でも三宝にささげられて生首がささげられる。
画面には生きている鹿が鉄砲で撃たれ、頸動脈を切られて鹿が痙攣するさまが映される。
鹿の角は毎年生え変わり数か月であのような立派な形に育つそうだ。
なるほど稲(あるいは小麦)の生命力との相似がある。
神話の世界 聖なる世界 は単純に美しく清潔な世界ではない。
見てよかった。
最初の画面に映るのは「諏訪大社は動物を殺すな」の横断幕。
計画中の「諏訪信仰と鹿」ツアーが楽しみ🦌
美しい雪景色の中、どこか神々し差も感じる鹿たちの姿が見えるかと思ったら、、次には鹿の生首が出てくるので、神社に動物愛護団体によって掲げられた思われる「諏訪大社は鹿を殺すな」の幕の通り、動物を絶対に殺すなと言う人には向かないドキュメンタリーだ。(もちろん神事のためであって密漁や物欲のためにむやみに鹿を殺しているわけではないのだが、それでも反対する人はいるのだろう)
700年以上明らかになっていなかった御室での神事の再現や、地元諏訪の様々な神事の様子や地元の人々などにスポットをあて、鹿にまつわる信仰が生活に深く根付いた諏訪を知る作品としては非常に興味深い。
ただ、監督が長くNHKで番組を作っていた人と言うこともあって、ナレーションの入れ方や演出など、ドキュメンタリー映画というよりはNHKスペシャルのようなテレビ番組を見ているかのようだった。
いっそナレーションをもっと少なくして淡々と神事を映す神秘的なドキュメンタリーにするか、逆にもっと台詞の字幕などを足してテレビ的にわかりやすくしたほうが方向性がはっきりしたのでは。神事にまつわる専門用語(【大祝(おおほうり)】など)一度だけ字面を見ただけでは音として「おおほうり」と聞いても「???」となることが多く、もっと台詞を字幕にして欲しかったと思うところ。
パンフレットというか公式ガイドブックが書籍並みの情報量なので、本編で諏訪の神事などに興味を持った方は是非手元に置いておきたいところ。
*上映後、監督と本編にも登場し地元の腰がしっかり入った中年女性にコメ作りについてアドバイスをもらっていた三好さんと監督が登壇するトークショーがある回を観賞。
三好さんは、3.11を機に諏訪に移住し、写真家、師範、民俗学研究者など様々な分野で活躍しながら農業も営んでいるらしい。トークショーにもまるで時代劇のような格好で登場し、地元で小さなほこらからも様々な信仰や行事に触れることが出来る諏訪の魅力を語っていた。
今後、映画で興味を持った人など向けに、撮影にも協力しているスワニミズムと、近々「諏訪信仰と鹿」ツアーを計画中らしい。2025年春頃には地元の鹿や神事を巡るツアーに行ける日が来るのだろうか。楽しみである。
未だ、柳田や宮本
鹿なくては、ご祭事はすべからず
鹿も鳥も蛙も稲も桜も、みな生きている。それを賛美するかのような映像がとても美しく神秘性を帯びていて、馴染みのない祭事を眺めながら目に焼き付けようと目を凝らす。一つ一つのシーンはとても魅力的だったのだが、観終えて、じゃあこの映画は何が言いたかったのか?という答えが見いだせない。一本筋があるようで、散漫な感想しかない。それが正直なところ。湖畔にある神長官守矢史料館にもあるように、狩猟の対象でもある鹿は縄文、稲は弥生。諏訪は、その二つが融合してきた地域だと認識していたので、その視点で語られるのかと思っていた。そもそも資料館について触れなかった(それとも見落とした?)。大祝や神長官を扱うなら、タケミナカタが諏訪にやってきた時に先住のモリヤ神と争った「諏訪版国譲り」に触れるのかと思っていた。ま、それはこちらの勝手な憶測と希望なわけで。君はこの映画を理解していないというのでしたらそれはそれで甘受しますが。そう思うよりも、諏訪とはなにか?というテーマを追求したものと思わずに、御室神事の再現などの記録映画だと思えばいいのか。そう、その神事に中西レモンが出ていたとは気づかなかった。あの目立つメガネしてなかったんだもの。
それはそうと、祭のときに『諏訪大社よ、動物を殺すな』とでかでかと書かれた幕が掛けられていたな。当然、外部の動物愛護団体なんだろうけど。なんで近頃はこういう声が大きい世の中になったのだろう。動物を粗末に虐殺しているわけでもないのに糾弾する思想が理解できない。その人は一切の生命物を口にしないんだろうか。動物はもちろん、野菜をはじめとした植物類だって生き物だ。この映画の中の稲の発育を見ればそう思わざるを得ない。生き物が生き物を糧とし、命をいただいていく大きな循環で世界が成り立っている。殺すなと声高に叫ぶほうが、どうかしている。殺しているんじゃなく、感謝の念を持っていただいているのだよ。たぶん理解しあえないと思うけど。
鹿の保護と、伝統の保護は両立できるよ。
諏訪の神秘を感じて下さい。
長野県の諏訪大社の例祭にスポットをおいたドキュメンタリー作品。
地元民ながら知らない事は多く、思わず見入ってしまいました。
はるか昔、豊作を祈った人々の様々な例祭が、今この現代にも引き継がれている事にロマンを感じますね。
そして、600年前に行われていたとされる謎に包まれた神事「御室神事」の再現企画も興味深かった。
12月22日に御室入りし、翌年3月まで行われていたとされる神事。
狭い御室の中でこのような神事が行われていたんだという興味と、この状態でどうやって何ヶ月も過ごしていたのか?といった新たな疑問も。
諏訪地方の四季を巡り、美しい風景と共に諏訪の神秘を感じられる作品です✨
はるか昔から紡いできた人と稲作と鹿との関係。
歴史や寺社好きな方は勿論、諏訪にお住まいの方なら、尚の事観る価値有りではないでしょうか。
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