「◇55歳からの生き様」blur:To The End ブラー:トゥー・ジ・エンド 私の右手は左利きさんの映画レビュー(感想・評価)
◇55歳からの生き様
ブラーがブレイクした1990年代前半、会社に入ったばかりの私は毎日疲れ果てて、音楽も即物的な分かりやすいものばかりのタレ流し、学生時代のように聴き込むことはなくなってました。ブラーを聴き始めたのも比較的最近、ここ10年ぐらいです。最初に聴いたアルバムは『13』だった記憶。"Tender" "Coffee & TV"ヒット曲系がお気に入りでした。正直、包括的に1stアルバムから聴き直したのはサブスクになってから。今では最もお気に入りバンドの一つです。今回はドキュメンタリー&ライブのダブル(104+128分)でどっぷり鑑賞しました。
To The Endはドキュメンタリー。イギリスの海辺の田舎町に集まった昔の仲間たちが音楽を通じてそれぞれの人生を見つめ直す物語です。ティーンエイジャーの頃からバンドを始めて、衝突や分裂と再結集を繰り返してきたブラーのメンバーも、60歳前後。それぞれが自分の生活圏とライフスタイルを持っていて、それぞれに尊重し合いながら音楽を作り上げていきます。
もう一つはウェンブリースタジアムでのライブ映像。収容人数9万人、デーモンの開口一番「想像以上だ」というコメント通り、歓声の迫力で地響きが起こるような凄まじい熱気です。会場の臨場感そのままに、ブラーの名曲がこれでもかこれでもかと注ぎ込まれて興奮が渦巻いて溢れ出し涙腺が崩壊してしまいました。
私の学生時代には、JAZZは「年寄りの音楽」と友達と語り合っていましたが、今やROCKこそシニア御用達音楽化しているのかもしれません。
55歳を過ぎる頃、自分の人生そのものを振り返り、自らの人となりを見つめ直す時なのでしょうか。私がブリティッシュロックに惹かれるのは、その内省的なところです。常に客観的に自分自身を見つめ直す冷めた部分を秘めて感じます。ブラーにもその内省性が本質的に備わっていることに改めて気づかせてくれる映像と音楽でした。そんなブラーを聴きながら、自分自身の残された人生について改めて見つめ直すのでした。