劇場公開日 2024年12月14日

「アイヌ漁法と和人漁法の違いではなく前近代的漁法と近代的漁法の違い」アイヌプリ ひろしさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0アイヌ漁法と和人漁法の違いではなく前近代的漁法と近代的漁法の違い

2024年12月20日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

数年前にも確かこの監督が温泉町のアイヌ家族のリアルを描いた映画を作ってましたが、今回の方がずっとよく出来ています。アイヌ式の狩りや漁労の文化を残そうとしている2人の男性とその子供とのやりとりの中で「世代」の問題と和人文化との関係の問題をうまく表現できていて、私としては絶賛できるものとなっています。特に、伝統的なシャケ漁をする男性が漁船員として大量のシャケを捕りながら、「これもしないと生きていけない」と言っていたのにも印象深かったです。これは私に言わせると、アイヌ的漁法と和人的漁法の違いではなく、前近代的漁法と近代的漁法の違いです。ので、その問題を誤解すると、私たち和人がアイヌ民族の人々を古い生産様式に閉じ込め、あるいはそれを脱すると「アイヌ民族でなくなった」とか言ってしまうこととなります。そのへんが非常に重要だと思いました。ちなみに、主人公のひとりの息子さんが伝統的な狩猟を将来自分の仕事にしたいかと聞かれて「大塚製薬か大塚●●に勤めたい。給与がよいから」と答えていたこともそれと関係します。「サラリーマン」となることでアイヌ民族でなくなるわけではありません。
 なお、細かなことですが、その男の子が小学校の同級生に「アイヌ民族ってかっこいい」と言われているということに未来を感じました。皆様に強くお勧めします。

ひろし