「時と空と繋がりと」この夏の星を見る TSさんの映画レビュー(感想・評価)
時と空と繋がりと
作品のタイトルと、目を引くポスタービジュアルに良作の気配を感じて鑑賞。
コロナ禍最初の夏。制限、制約だらけのこの特別な夏を過ごした中高生たちの青春群像劇。
登場人物の多くが基本的に素直で、前向きで、礼儀をわきまえていて好感が持てる。
そして、ありのままの空と町と自然と若者達を様々なアングルとスピードで収めるカメラ、テンポ良い進行が作品全体に爽やかな空気をまとわせているように感じた。
一方で、コロナ感染拡大を畳みかけるように伝えるナレーションと人々のマスク姿が、彼ら彼女らが未曾有の状況下に置かれていることを観客に訴えかけてくる。
五島の澄んだ海に駆け込んでいく4人のアオハルな高校生を「感染者発生」の行政無線が、忌まわしき現実に引き戻すシーンが特に印象的だった。
作品の見開きフライヤーに書かれた「最高で、2度と来ないでほしい夏。」
作品のタイトルと同じくらい、センスに溢れた言葉だと思う。いつものように同じ場所に集まって開催できなくなったスターキャッチのイベントが、コロナ禍の中で広まったオンラインという新しい手段で、離れた場所にいる同世代と繋がって開催される。思い出したくない、でも忘れられない時を、同じ空を見つめて、合うはずもなかった仲間と繋がり、分かち合うことができた・・・。その体験の価値を、見事に言い表している。
主演の桜田ひよりの目力には引き込まれてしまった。群像劇なので、彼女一人が物語を回しているわけではないのだが、画面に映る度にその存在感が際立っているように感じた。
ほかにも黒川想矢、中野有紗、早瀬憩など、ここ2年ほどの注目作で目にしてきた若い演者たちが、ナチュラルなのに輝いて見えるのは何故だろう?若さ故?それとも演技力?これからに注目。
大人たちも、「しっかり支える」ではなく「そっと見守る」+「一緒に楽しむ」スタイルがとてもよい。宇宙飛行士の講演会の伏線回収を大人たちもさりげなく一緒にやっているところにも、そのスタイルが現れているように感じた。
観終わって、不思議な爽快感と共に、「時は移ろいゆくものだが、思い出となって記憶に留まる」という言葉が浮かんだ。
そして、星座盤を手にして夜空を見上げた子供時代を思い出した。星座盤をモチーフにしたような映像があったからかもしれない。
この作品を観て、この夏に夜空を見上げる人が増えるだろう。目立たないけど光る良作。
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