「瓶の中の虫」他人は地獄だ サプライズさんの映画レビュー(感想・評価)
瓶の中の虫
いやぁ面白かったなぁ笑笑
定期的にあるB級ホラーかと思っていたら、蓋を開ければビックリ!めっちゃ高品質で見応えもたっぷりじゃないか!イオンエンターテインメント配給と聞くと、真っ先にコロナ禍に生まれし最悪の映画「真・鮫島事件」を思い出してしまうけど、本作は「きさらぎ駅」パターンの良質Jホラー回だった。
上記2作品からも分かるように、イオンエンターテインメントは当たり外れの激しい永江二朗監督のイメージが強すぎたから、これは色んな意味で大成功じゃない?韓国のLINEマンガを日本で実写化。都市伝説に続き、しばらくはこの路線でやりそうだな。
序盤は安っぽさが漂い、陳腐な演出と展開が続くからマズイかな〜失敗したかな〜と思ってたんだけど、柳俊太郎が動き始めて一転。この手の映画にしては珍しい120分越えの長尺にも関わらず、グイグイ引き込まれて気付けばエンドロール。彼が持つ独特の魅力に吸い寄せられてしまった。丁寧な言葉運びなのに、心が全く読めない。不気味な雰囲気がとてつもなく似合う、完璧なキャスティング。
前から只者では無いオーラを感じていたけど、実写版「ゴールデンカムイ」で強烈なインパクトを残し、今回もまた波に乗ったように凄まじい演技を披露。キャラ設定が面白いのはもちろん、柳俊太郎自身が役を完全に物にしていて、観客はひたすらに見せられるばかり。いやぁ、すごい。代表作になったなこれは。
主人公がどんどん落ちぶれていき、理性を失っていく様はまるで「Cloud クラウド」の吉井のよう。最底辺へとまっしぐら。八村倫太郎の薄気味悪い表情も、徐々に闇深くなっていくストーリー展開も、すごく秀逸で終始飽きが無かった。
ここからやり直す、と口では言っているものの、自分から追い求めることはなく、結局は全て人の言いなり。まさに〈負け犬〉という言葉が相応しい。しかも一見善人のような、心優しき皮を被っているのも非常に人間臭くて気味が悪い。文なし、家なし、能力なし。ひたすら他人のせいにするけれど、それら全て自分の努力不足。こうはなりたくない。でも、自ら行動しなければ必ずこのような結末に至る。人生の戒めの象徴に相応しい主人公。
正体不明の謎の男・キリシマに迫るにつれてホラーとしての恐ろしさが増していく。この演出が最高に面白い。湿っぽさを感じさせる雰囲気なんだけど、全力疾走してるかのような軽快なテンポ感であるおかげで、怖いと楽しいが絶妙なバランスを保っている。作品そのものが彼に相当依存しているため、かなり演技力の試される役柄だったのだけど、柳俊太郎は見事にやってくれた。
主人公の歯車がズレていくと同時に、作品のカラーもガラッと変わる。次第にサスペンスへと、そしてこの作品が伝えたかった深層心理的なメッセージも一気に盛り込んでくる。意外にも考察が楽しい深い映画。瓶の中の虫。単純なサイコパス描写じゃないのがすっげぇ面白いし、すっげぇ怖い。
これは予想外の収穫。韓国ぽさをしっかり残しつつちゃんと日本らしく脚色がされていて、予算の関係かチープなところは随所にあるものの、とてもよく出来た作品だった。いいよいいよ、こういうのが見たいんだよ。イオンエンターテインメントさん、来年もよろしくお願いします🙏