「ラストカットの衝撃度が半端ない、自然&昆虫&釣り映画!」重ねる Marxさんの映画レビュー(感想・評価)
ラストカットの衝撃度が半端ない、自然&昆虫&釣り映画!
【釣り恋愛映画】とキャッチコピーにあり、もちろん釣りと恋愛がメインで描かれてはいるけれども、その裏には文明批評だったり、家族の繋がりだったり、ホンネと嘘だったり、様々なテーマが折り重なっているのが興味深い。
タイトルにもある「重ねる」という抽象さが、監督のイメージする一番外側の言葉だったのだろうか。そこから内側に降りてくるにしたがって、より具体的な映像であったり、カットだったり、人間関係が襞のように重なってくる。
劇映画なので、とうぜん物語形式をとってはいるけれど、コンセプチュアルアート的で、哲学的な側面も持ち合わせているような気がする。人物が重なり、台詞が重なり、風景が重なり、カットが重なり、そこに観客の脳内が重なり…と、無限に重なり合うこの世界で「自分はどこにいるのか?」が問われてくる。それは監督が自分で脚本を書かねばならなかった世界だからこそ産まれた問いに感じられた。
そして、何と言ってもラストカットの衝撃が凄まじい。オープンエンディングになっていて、その可能性は観客に開かれている。このラストを語ることは、それぞれ自分の人生を見つめることにもなると思う。
自然、昆虫、そして魚がしっかりとカットに刻まれた、切実で、力強い映画だ。
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