「何をしたかったのか分からない完結編」カラダ探し THE LAST NIGHT 基本的に映画館でしか鑑賞しませんさんの映画レビュー(感想・評価)
何をしたかったのか分からない完結編
ホラー映画の体裁を取りながら、実際には「何でもありのご都合主義アトラクション」に堕してしまった作品だと率直に感じる。赤い石に血を与えると始まる、あと一回だけ、全員死んだら終わり、誰かが犠牲になる――といったルールが次々に出てくるが、そこに一貫した必然性や背景は語られない。観客は「そういう設定だから」で飲み込まされるだけで、論理的に積み上げられた世界観は存在しない。結果として緊張感が続かず、ゲーム的にキャラが殺されても翌朝には何事もなかったように笑い合う展開に、ホラーとしての恐怖も青春ドラマとしての感動も削がれてしまった。
舞台が遊園地なのも、斬新さより「見栄えのするアトラクションを撮りたい」という制作側の意図が透けて見える。確かにジェットコースターやお化け屋敷で追いかけられる映像は派手で、観客は一瞬盛り上がる。しかしその恐怖は記号的で、物語的な意味を伴わない。結局は「遊園地ホラー体験VR」を映画館で見せられているようなものだ。ホラー映画としての緻密さを捨て、手軽な驚きと叫びで場を持たせているにすぎない。
さらにキャスティングの問題も深刻だ。シリーズのヒロインとして橋本環奈を続投させるのは興行的に理解できるが、26歳の彼女に制服を着せて女子高生役を演じさせる判断は無理がある。前作ならまだしも、今作では周囲の若手キャストとの差が際立ち、どうしても“学芸会のコント”に見えてしまう。作品世界のリアリティが損なわれ、「彼女が戻ってくること」の感動が物語的必然ではなくマーケティング上の要請にしか見えなくなる。観客は橋本環奈のファンイベントを見に来ているわけではない。
終盤、赤い人を現実世界に登場させて「まだ終わっていない」と余韻を残すつもりなのだろうが、これはホラーの文法にすらなっていない。説明不足のまま突き放された観客に残るのは不安ではなく「またご都合主義で続けるつもりか」という冷笑だ。ジャンルの境界を超えて青春も感動も恐怖も全部盛りした結果、一本の映画としての芯がなくなり、観終わって振り返ると「で、この作品は何をしたかったのか?」という困惑しか残らない。
ホラーの理不尽さを楽しませたいのか、仲間との友情を描きたいのか、涙を誘う感動路線にしたいのか。どれも中途半端で、何ひとつ突き抜けない。ご都合主義は本来、物語の大事なテーマを通すために使われるべきだが、この映画は何も言いたいことがないからこそご都合主義で固めるしかなかったのではないか。シリーズ完結編を名乗るのであれば、観客に残すのは「消化不良の不満」ではなく「納得できる余韻」であるべきだろう。残念ながら、この作品はその逆を行ってしまった。
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