「”差入屋”という職業を通じて親子関係を描いた作品でした」金子差入店 鶏さんの映画レビュー(感想・評価)
”差入屋”という職業を通じて親子関係を描いた作品でした
刑務所や拘置所に収監されている受刑者に面会したり、物品を差し入れたりするのを、家族などに代わって行う”差入屋”という職業があるそうで、そこにスポットを当てた物語でした。そんな職業があることを知らなかったため、どんな仕事なんだろうか非常に興味があり観に行くことにしました。そのため、個人的にはいわゆる”お仕事系”のお話を期待し、主人公は”差入屋”を紹介する案内人であり、同時に案内人の視点で複数の受刑者の人生を眺めたお話なのかなと勝手に思い込んで観に行ったのですが、実際は全く違う展開でした。
特に意外だったのは、”差入屋”という職業が主題であるのは間違いありませんが、同時にいくつもの親子の葛藤を描いた物語であったことでした。すなわち、主人公の金子真司(丸山隆平)とその母・容子(名取裕子)、金子と息子・和真(三浦綺羅)、和真の同級生の花梨(金子莉彩)とその母・詩織(村川絵梨)、花梨を殺した殺人犯・小島(北村匠海)とその母・こず江(根岸季衣)、母親に売春を強要されていた娘・二ノ宮佐知(川口真奈)とその母・芳恵(まひろ玲希)という5組の親子の物語が織り交ぜられていた訳です。しかもこの中で刑務所に収監されているのは小島親子だけであり、その点を見ても本作が単なるお仕事系物語でないのは分かるかと思います。
これらの親子関係、それぞれに問題を抱えていて、ハッピーエンドになったものもあれば、片方が殺されてしまってどうやっても修復が叶わないものもあり、また互いに生きていても修復が極めて困難なものもありました。この辺は現実の親子関係とも似ていて、中々興味深いものでした。
俳優陣は芸達者が揃っていて、主人公・金子真司を務めた丸山隆平は初見でしたが、非常にいい味を出していました。彼以外でも、金子の叔父を務めた寺尾聡は、久々でしたが老成していてカッコ良かったし、金子の母親役の名取裕子は、やさぐれ度100%の毒母ぶりを上手に演じていたし、収監中の極道・横川役の岸谷五朗は超絶にヤクザが似合っていたし、甲本雅裕の怪しげな弁護士役もハマっていました。ちょっと残念だったのは、金子の妻役の真木よう子のセリフ廻しが、今ひとつしっくり来なかったことくらいでした。
そんな訳で、事前の予想とは様相が異なる作品でしたが、それはそれで中々面白かったので、本作の評価は★4.2とします。
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