「震災とコロナと過疎と」サンセット・サンライズ 津次郎さんの映画レビュー(感想・評価)
震災とコロナと過疎と
震災でたいせつな人を失い新型コロナウィルスに遭い・・・弱り目に祟り目な奇禍を同情材料にしながら小さな漁村の善良な人たちの悲喜劇を描いた。
狙いは、三陸の食とスローライフと人情で、時事と過疎問題をからめつつヒューマンなコメディへもっていく。
小説なら暴れない材料だったが、映画としては震災・コロナ・人情・釣りバカ・善良な人々・地方創生・・・あざと感のある臭気材料が揃ったお馴染みの日本映画になっていたと思う。
田舎の青年たちが百香(井上真央)に恋心をもっていることや、役場と企業が「お試し移住」として空き家を賃貸しすることなど、人情や哀愁として描かれていることは、地方生活の呪縛要素でしかない。
百香のように地元の男達や狭い世間体から注視をされる生活をしているなら東京や大阪へ出て行って夜職でもやったほうがストレスなく暮らせることだろう。
言うまでもなく田舎のにんげんは都会のにんげんにくらべて温かかったり親切である、ということはないし、現実の地方では映画内でおこるようなヒューマンな和は成立しない、にもかかわらずヒューマンコメディとして見てほしいという狙いで描かれているのが日本映画らしい欺瞞だと思った。
登場人物は震災やコロナや過疎にやられた可哀想な人々であり「わたしらは善良な人間で辺境でつつましく精一杯生きているんですよ」・・・という臭気が画から台詞からぐいぐいと放たれるので、モニターに鼻くそなすりつけたい気分だったが、人気俳優を揃えていることもありネットフリックス映画ランキングの一位に鎮座していた。
むろんわたしは敗北者でありわたしのレビューは遠吠えやはぎしりに過ぎず、需要を確立した映画の勝ちであることは言うまでもない。
三陸の方言の韻と語尾が、志村けんがバカ殿やドリフ大爆笑をやるときの聞こえで、中村雅俊は志村けんをパロディしているかのようだった。なおラスト再会して抱きつくところでおわるが頭をうってふたりとも○んでしまうというホラーだったら1加点するところだったがそうはならなかった。