「何処にも角が立たない三陸PR映画」サンセット・サンライズ @花/王様のねこさんの映画レビュー(感想・評価)
何処にも角が立たない三陸PR映画
震災や復興をモチーフに地元をPRする映画を撮りましたって感じだった。
下手に被災地を描くと各方面からバッシングや批判が来るのをあえて架空の町ですよ〜とすることで回避しているようだった。
それゆえに何処までも余所者から見た被災地だったように感じる。
田舎特有のお節介で目ざとく親密な人間関係は描くのに、どうして都会の偏見や差別は描かなかったんだろう。
コロナ禍でもやれ三陸産の魚は放射能に汚染されているから怖くて食べられない。水もミネラルウォーターじゃないと不安で飲めないと言っていた東京の人はたくさんいたと記憶している。
晋作がリモートで三陸に行くと言ったら、東京で働く同じ会社の同僚は「なんであんな汚染地域に行くの?魚とか食べて大丈夫?」と言ったはずだ。その風潮はあった。
美味しそうな魚だけど汚染が怖いのでって箸をつけないシーンがあってもおかしくなかった。撮影協力した地元の方を傷つけることになるから入れなかったのか。
いかんせん晋作の人が良過ぎて臭いものに蓋をしているように見えた。
そういうキャラクターだからこそ、傷口にようやくかさぶたができ始まった被災地の人ともうまく関われたのかな。
気になるけど触れずにかさぶたができたら自己治癒力に任せる。震災災害の場合は時間が1番の薬になる。
震災で家族を失ったももかへの配慮やお義父さんへの話を聞く姿勢で誠実に対応したいと思っているんだなと分かった。
映画前半はキャラクターの心情がゆっくりと丁寧に描かれていたのに終盤になり半ば強引に言葉を引き出してハッピーエンドを捩じ込んでいく展開が残念だった。
ももかが晋作に自分語りをするシーンがなかったので、ももかの心境の変化が急展開すぎるなと感じてしまった。
空き家問題も現実社会で問題視されている。
都会の人や企業がどかどかと新規事業開拓だと不遜な態度で被災地に赴いている描写がうまかった。
リノベーションされた古民家も素敵だった。
作品の本質は在るものはあるがままに受け入れて生きていこうというものかと思うのに、上部だけ無理やり前進している様を見せられてお尻の置き場がないムズムズ感を味わった。