「「詰め込みすぎ」による「中だるみ」が悔やまれる」サンセット・サンライズ tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
「詰め込みすぎ」による「中だるみ」が悔やまれる
「都会の若者が田舎の魅力に気付く」みたいな「軽い」ノリの映画だと思っていたら、コロナ禍だとか、東日本大震災だとかの、結構「重い」エピソードが背景になっていて驚いた。
確かに、釣り三昧の毎日や、詮索好きな住民たちとのやり取りを通じて、田舎暮らしの楽しさや、軽めの笑いは味わえるものの、主人公が思いを寄せる美人の大家さんが、震災時に悲しい経験をしていることが分かってきて、2人の恋の行方が話の焦点になっていく。
やがて、彼女を襲った悲劇が明らかになると、序盤の「座敷わらしか?」と思われた現象の理由も分かって、その過酷さが胸に迫ってくる。
ところが、そこから、話がモタモタと別方向にズレていく。
東北の人間と東京の人間の、お互いが相手に抱く思いの対比などは面白いのだが、空家ビジネスのエピソードは、如何にも「詰め込みすぎ」の感が強く、別になくてもよかったのではないだろうか?
特に、「東京は東北を見ているだけでいい」という言葉が心に響いただけに、そこに至るまでの「中だるみ」が、残念に思えてならない。
その一方で、居酒屋のメニューだけでなく、出てくる料理がどれも美味しそうで、それだけで東北が魅力的に感じられるところはよくできていると思う。
中でも、主人公の発した「結婚」という言葉に動揺して、大家さんが無意識のうちに「なめろう」を作る場面では、「海の幸」が生活の一部になっている様子がよく分かって、思わず笑ってしまった。
「おもいでのアルバム」の歌の切なさの後に訪れるラストにしても、大家さんが負った癒やし難い心の傷のことを思えば、「結婚」という落としどころは現実的ではなく、あれが最善の選択肢なのだろうと納得することができた。
いずれは「結婚」ということになるのかもしれませんが、まだ時期尚早なんだろうと理解しました。
夫だけならいざ知らず、お子さんを2人も失ったという喪失感は、12年という月日が流れても、なかなか癒えるものではないと思えます。