「評判の程を確かめに(長文です)」鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 真生版 870さんの映画レビュー(感想・評価)
評判の程を確かめに(長文です)
子どもの頃から親しんだゲゲゲの鬼太郎と妖怪たち。
今回は鬼太郎誕生までの前日譚という点と、どうやらグロ要素のある激しめなシーンがありそうだぞ…という期待感で劇場へ。興味を持った所で真生版が公開されるとの事で、ちょうど良いタイミングでした。
今回見る上で注目したのは、どのぐらいグロいのか・主人公2人のブロマンス・自分はラストで泣けるのか、の3点です。
(ネットで評判になりがちだったポイント)
先んじて全体の感想をざっくり書くと、
・主要人物以外のキャラクターにも細かい思いやりを込めて作られているのが感じられた点が非常に良かった
・グロさよりも、今作の時貞のゲスっぷりが完全に大人向けである点が最悪で最高
(子ども視聴者は恐らく聞いてもポカン・大人ははらわたが煮えくり返る事してた)
▼下記ネタバレ注意&長文▼
①グロさで言うと、予想よりもグロテスクなシーンは少なく。ただ、血や身体破壊描写が苦手な方にはやや辛いかな、という印象でした。(目や体が貫かれる・目玉が飛び出る・血が吹き出すなど)
血は真っ赤な鮮血なので、アニメーションでの描写に慣れていない・苦手な方はギョッとするかもしれません。
個人的には、無力化された鬼太郎の父(ゲゲ郎)が棒でボコボコとリンチされるシーンが、地味なシーンながら辛かったです。
②ブロマンス的な要素も評判だとネットで見たので、その点にも注目。
いつの間にか急に絆が芽生えている等の無理な進み方はしておらず、互いの過去・今の行動背景・今後への思いを共有→助け合いと信頼へ、という流れは自然かと思いました。
関係性の点で言うと、個人的には龍賀家長女の乙米と、村長かつ裏鬼衆の首領である長田の関係が気になりました。
龍哭が起こった時の長田の乙米の守り方…狂骨の大量発生で自身の身も危ない中、乙米の助けを呼ぶ叫び声に駆け付けようとする長田…怪しい…
→と思って調べた所、やはり2人は主従ながら純愛関係だったとのこと…!(舞台挨拶より)
当作品は妖怪・怨念・秘密裏な外道のプロジェクトだけでなく、恋や愛や血統などの点でもドロドロした不穏な要素を入れ込みまくっているんですね。
③ラストで泣けるのか、の点について
個人的には、終盤〜エンドロール〜タイトルまでで泣くことはありませんでした。
ただ、エンドロール中の絵が漫画風・セリフ無しである点はとても好みでした。当物語で見た2人の関係性を基に鑑賞者の想像力で音やセリフが補完される(気がする)ので、余計グッと来る気がします。
また、どちらかというとエンドロールに入る前、現代のシーンで最後の狂骨を退治するシーンの方が、、、
最後の狂骨は、ゲスジジイ時貞に体を奪われた孫・時弥くんでした。彼のことを覚えていた目玉のオヤジからの助けられなかった事への謝罪・その息子の鬼太郎からの忘れないという約束でやっと成仏できたシーンは、彼が幼く何の罪もない子どもであった事も相まって、ウルウルとしてしまいました。やっと解放されて良かったね…という気持ちに…
注目していた点以外で好きだったのは、劇中の妖怪たちについて。
狂骨は怨念を根源とした強力な敵として描かれていたものの、つるべ火や河童、倉にいた妖怪?など、身近な妖怪たちは比較的にフレンドリーで日常に溶け込んでいる事、また大穴で襲ってきた妖怪たちに対するゲゲ郎の、妖怪同士での無駄な争いを避ける姿勢には水木しげるさんの鬼太郎像を感じ、とても好みでした。
全体的にボーッと見ても楽しめる作品ですし、戦争について・人間について歴史・哲学的に考えるキッカケにもなる、良い作品だったと思います。