「とにかく切ない」366日 お喋りな啄木鳥さんの映画レビュー(感想・評価)
とにかく切ない
太陽のように明るい美海とその生い立ちの影響から寡黙な湊の恋の物語。美海は明るいだけあって優しい両親もいるし、幼馴染もいる。湊は祖母はいるが、母を喪ったばかりで文字通り孤独で人を寄せ付けないようにしているところがある。
結局、湊は最後の最後まで自分の秘密は美海にも琉晴にも明かさないまま、美海への愛と自ら選んだ孤独を背負って雑踏の中を歩き、空を見上げる。あのラストシーンの赤楚くん演じる湊の表情が何ともやるせなくて不憫で、命は短かったが、家族に見守られ、約束の音楽も聴くことができた美海とはあまりにも対照的で、彼にもこの先温かい家庭ができることを切に願ってしまったが、多分湊は生涯美海一筋なんじゃないかという気もする。
悪い人は出てきません。静かにお話が進んでいきますが、湊を見守るのはひたすら切ないです。見てください。
追記
湊が病気のことをなぜ話さなかったかというご意見を見かけるのでそのことについて一言
私は同じような宣告を受けたことがある。その時真っ先に考えたのは自分のことではなく、家族やペットのことだった。治療が始まるまでは、家族やペットのための段取りをつけることに忙しかったくらい。家族だから話さないわけにいかなかったが、知り合いはお子さんの就活が終わるまではお子さんには隠したそうだ。家族でも話さないことはある。
まして湊と美海はまだ法的関係にはなく、夢の実現が美海への最大の恩返しと考える湊にとって自分の身を切るようなあの選択をすることは私には何ら不思議ではない。
もう一つ、香澄には話したのにというご意見もあるが、香澄は湊と同世代でまだ大学生だった美海とはそもそもの立脚点が違う。もう歌手としてデビューが見えているので、就活に苦戦している美海のように失うものはない。また、湊の勤務先の所属のようだから、長期に休めば隠し通すことはできない。