劇場公開日 2025年9月5日

「信頼できない不安に塗りつぶされた過去」遠い山なみの光 コージィ日本犬さんの映画レビュー(感想・評価)

2.5 信頼できない不安に塗りつぶされた過去

2025年9月7日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

主人公視点(一人称)で語られる「殺人事件の犯人が主人公」ってミステリー、小説なら面白くできるけど、映画だと(=映像化すると)めちゃつまらないケースが多いじゃないですか。
語り手の信頼度を落とすことで、客を不安で揺さぶる、いわゆる「信頼できない語り手」。
本作も、そんな作品に似た印象。

語り手の自分(主人公)が嘘をついているというか、妄想を信じたがっているというか。
おそらく「こうだったらいいな」という夢見た過去、目指した姿を、虚実入り混じえて娘(=観客)に語り、そこに生じる謎を"ミステリー"と言われても……

原作未読なので、再現度、忠実度は分かりません。
ただ、おそらく原作小説は語られない事項を増やしてより曖昧模糊とすることで、「人間の記憶の曖昧さ」と「信じたいもので自己の記憶が塗り替えられていく罪深さ」みたいなものを伝えるために、もっと解釈の幅を広げる余地を残し、読者の心理を揺さぶったもののようにしている気がします。
映像化した故に、過去の記憶が具体性を帯びて生臭く、そしてうさん臭くなったような。
ちゃんと原作が読みたくなりました。

石川慶監督は、『ある男』『蜜蜂と遠雷』は好きだったんだけどな……
今回は『不都合な記憶』『愚行録』寄りで、ちょっと苦手。

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