「あの頃の自分を抱きしめる」遠い山なみの光 ハルさんの映画レビュー(感想・評価)
あの頃の自分を抱きしめる
後半になって、佐知子は、悦子本人だったと判る、悦子がどのように景子という娘を得たのか?
夫の二郎、悦子と二郎を繋いだであろう緒方も、映画のあるエピソードは、真実ではなさそう。こういう暮らしの中で、景子を産みたかったということではなかったか?
自分の生き方を嫌う景子とは、景子が自殺する最後まで、和解することはなかったようである。
お祭りからの帰りの電車のシーンが一番秀逸、捨て猫のおうちをゲットして喜び、珍しく悦子にやさしい景子。
その電車の中の母子を遠くから見つめる
悦子の心、悦子は嗚咽していたか。
自分の生き方の犠牲者になってしまった景子に対する贖罪か、でも
当時の長崎の状況、被爆し、頼る者をすべて失った境遇の中、娘を守って、なんとか生き抜こうとすることの過酷さは、想像を絶する。
英国で、なんとか暮らしを立てたのに、
一番守ろうとした景子が自殺してしまう悲しみは、自分の行き方を二度と許されないことが確定した絶望。
それでも、もう1人の娘、ニキには
なんとか、解ってもらいたくての回想、作り話、一人語りだったのだろうと思う。
悦子は、あの頃の自分を、
思いきり抱きしめて、「でも、よく頑張って生き抜いたね」と言ったのだと思う。
遠い山なみを見ながら。
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ノーキッキングさんのコメント
2025年9月7日
路面電車の母子(自身と景子)を外から愛おしく見つめる悦子(吉田羊)の表情がたまらない! 教え子を見殺し、我が娘さえも救えなかった悔恨の情は、どんなに深いものか。胸がつまります。
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