劇場公開日 2025年9月5日

「人の記憶の不確かさ」遠い山なみの光 シンジさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0 人の記憶の不確かさ

2025年9月6日
iPhoneアプリから投稿

大学の卒業論文がカズオイシグロだった者です。
カズオイシグロの作品のテーマは「人の記憶」なんです。それも「人の記憶の不確かさ」です。

誰もが現実を受け入れられない時に自分にある種の嘘をついて生きている。その嘘は生きるために必要なものなんです。それが悪いのかというと、視聴者に考えさせるかのように、過去の自分を時代に合わせて捉え直さずに生きようとすると周囲と衝突する事もとある人物を通して描かれています。

前提として、エンターテイメントではないので説明的なカットやセリフは少なく文芸のように読解する必要があります。小説の場合、語り手が一人称なのか二人称なのかに着目して読む必要があります。そうではないと読んでいる方が騙されてしまいます。え?どういうこと??とページを遡りながら読む必要があるんです(これも楽しみなのですが)逆に過去の自分がした事を時代に合わせて捉え直さずに生きようとすると周囲と衝突してしまいます。とある人物と対照的に描かれていますね。

芥川龍之介の藪の中、フォレスト・ガンプのように小説や映画などの物語において、語り手(ナレーター)の信頼性をあえて低くすることによって、読者や観客を惑わせたりミスリードしたりする技法です。この語り手は、たとえば精神疾患や記憶の欠落、強い偏見、悪意によって意図的に事実を歪める、あるいは自覚なく誤った情報を伝える場合があります。

こういう作家が現れるからノーベル賞に文学がある理由です。人類を進歩させた、言い換えると「人は何をする生き物なのか」にまた一歩近づいたと言っても過言ではないと思います。

映像化されると聞いてどうするんだろうとずっと思っていました。広瀬すずの演技無しに決して成り立たない作品だったと思います。

シンジ
PR U-NEXTなら
映画チケットがいつでも1,500円!

詳細は遷移先をご確認ください。