劇場公開日 2025年9月5日

「美しい映像と感動的なドラマにミステリー要素も織り込んで、最後まで映画的な面白さを堪能できる一作」遠い山なみの光 yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5 美しい映像と感動的なドラマにミステリー要素も織り込んで、最後まで映画的な面白さを堪能できる一作

2025年9月5日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

予告編からも明らかなように、この映画は光の使い方、構図がとても美しく、どのシーン、というかどのショットも見事な一幅の絵画のようです。映像だけでも十分スクリーンで鑑賞する満足感を与えてくれます。

加えてカズオ・イシグロ原作だけに、ドラマの中にある種の違和感を忍ばせ、そこから作品全体を覆う「謎」を明らかにしていく過程がスリリングです。母娘の織りなすドラマが本作の物語的な柱ではあるんですが、そこに加味されるミステリアスな展開は、物語の面でも鑑賞意欲を高めてくれます。

後にカズオ・イシグロの代表作の一つとなる、ある作品にも共通した叙述上の技法を使っていることもあり、作品の「謎」が何なのか、察しの良い人なら途中で気づくかも。とはいえ本作は、母(広瀬すず・吉田羊)と娘(カミラ・アイコ)を軸に、悦子と友人、長崎とイギリス、戦前と戦後…といったいくつもの折り重なった二項対立的構図から浮かび上がってくるものを実感する作品となっているので、謎解きで作品の面白さが左右されることはあまりないと思います。

本作では長崎の原爆被害については様々な形で言及はあるものの、直接的な描写はありません。その点で先般公開の『長崎 ~閃光の影で~』(2025)は、長崎の被爆状況を描いた作品として、本作の主人公、悦子らがどんな体験をしてきたのかより深く理解できる作品です。もし機会があれば、併せての鑑賞をおすすめ。

カズオ・イシグロ原作、あるいは彼が脚本を担当した映画には良作が多いので、本作で彼の作品に興味を持った人はどの作品からでもあたってみるとより楽しめるかと思います。

また石川慶監督の作品でも、『ある男』(2022)は物語的に本作とちょっと通じるところがあるので、こちらも関連作としておすすめです!

yui
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