「【「哀しきCeremony」今作は1952年被爆地、長崎と30年後の英国を舞台に、戦争の傷跡と当時の女性の生き方と願望をアーティスティックに描いた作品であり、解釈を観る側に委ねる作品でもある。】」遠い山なみの光 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【「哀しきCeremony」今作は1952年被爆地、長崎と30年後の英国を舞台に、戦争の傷跡と当時の女性の生き方と願望をアーティスティックに描いた作品であり、解釈を観る側に委ねる作品でもある。】
■1982年。英国の郊外の邸宅で暮らす悦子(吉田羊)に、娘の英国人との間に生まれたニキ(カミラ・アイコ)は過去の話を聞かせて欲しいと頼む。
口を開いた母は長崎時代に出会った母と娘の事を淡々と語りだすのである。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・ご存じの通り、原作はカズオ・イシグロが1982年に発表し、王立文学協会賞を受賞したデビュー作である。但し、石川慶監督は若干内容を改編している。
・冒頭、”New Order” のデビューシングルでフッキーのリフが印象的な「Ceremony」が流れる。
”人は皆 それぞれ異なる物語を見出す・・。”と言うバーナード・サムナーが歌う印象的な歌詞と共に。
それを聞き、石川慶監督が原作をどのようにアレンジメントしたのか楽しみになる。
■長崎に住む悦子(広瀬すず)は、記者の夫、二郎(松下洸平)と暮らしている。彼女のお腹には新しい命が宿っている。ある日、悦子は知り合いの米兵とアメリカに行こうとしている佐知子(二階堂ふみ)と娘の真理子と出会う。
佐知子は悦子と違い自由人であり、河原で生活するも自立している。この佐知子を久しぶりに二階堂ふみさんが、眼光鋭く演じている。
そして、観て行くと分かるのだが、佐知子は夫に従う日々の悦子が作り出した、”憧れの像”である事が徐々に分かって来るのである。
・今作では二郎の父で且つて校長だった男(三浦友和)が、悦子と二郎の家に長逗留する。彼は紳士だが、彼の元教え子(渡辺大知)から戦時中の彼の教育を激しく糾弾した論文をある雑誌に書かれたことに激昂している。又、二郎も且つて戦地に出征した時に、父が両手を上げて万歳をした事に違和感を持ち、父と積極的には交わろうとしない。
又、佐知子は被爆している事への差別に毅然と向き合うが、悦子は自分が被爆している事を夫には内緒にしているのである。
ー この辺りでは、反戦思想がやんわりと描かれ、且つ佐知子と悦子の生き方の対比が描かれる。-
・ある日、悦子が窓の外を見ていると、知らない女が佐知子の家の近くの橋を歩いており、多発する児童殺害事件を心配していた彼女は佐知子の家に急ぐ。真理子も佐知子も家にいるが、佐知子はアメリカに急に行くことになったと言い、荷物を纏めているが真理子は可愛がっている猫を連れて行けない事に拗ねており、それを見た佐知子は猫が入った箱を川に沈めるのである。非常に印象的なシーンである。
その後、”佐知子が居なくなったあとに”一人で川の傍に居る真理子の元に、手に縄を持った悦子がにこやかな顔で近づいてくるのである・・。
・そして、ラストに再び流れる”New Order ”の「Ceremony」。成程ね。
今作は女としての自由を求めた悦子の、戦時長崎からの1982年に至る哀しき「Ceremony」を描いたのだろう、という事が分かるのである。
<英国の悦子が一人で住む家。
一番奥の部屋は普段は鍵がかかり入れないが、ニキが偶々その部屋に入った時に見つけた箱の中には”母が言っていた佐知子の写真や持ち物”が入っているのである。
そして、ニキの姉景子の縊死の理由は最後まで語られないが、物語の展開を見ていれば、自由を求めて夫を捨てて英国に来ながら、何処か虚無的に生きる悦子の姿を見ていれば、推測は付くのである。
今作は、1952年被爆地、長崎と30年後の英国を舞台に、戦争の傷跡と当時の女性の生き方と願望をアーティスティックに描いた作品であり、悦子の女としての哀しき生き方を「Ceremony」として捉えた作品でもあるのである。>
今晩は^ ^
深良いレビュー有難う御座います♬
なかなか劇中歌までフォーカス出来ずにいたので有難たいです。原作未読での鑑賞だったので見終わった後は??でしたが段々と他の方のレビューや考察で謎解きやっていますが興味深い作品でした。
お疲れ様です~NOBUさんは高評価するだろうなと予想はしてました。
万里子=景子で、景子の死は首吊りって本作で語られてましたが…やはり悦子の手に持った縄でって解釈でいいんですかね、一瞬作品観てて過ったんですが、見せ方の問題で何か難しかったです。
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