劇場公開日 2025年3月28日

「カラス役の 声による圧倒的な演技」レイブンズ greensさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0カラス役の 声による圧倒的な演技

2025年4月18日
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鑑賞方法:映画館

知的

ふらっと映画館に入って、これ観てみようかな、という軽い気持ちで鑑賞しましたが、観て良かったです。写真家・深瀬昌久さんのことも、そのミューズであった妻 洋子さんのことも何も知りませんでしたが、深瀬昌久さんが写真館を営む父親との間で抱え続けた葛藤や、心の闇が生み出したカラスと対話する様子などが巧みに描かれていました。
妻の洋子から「カメラの後ろに隠れないで、人の目で私を見て」と言われても、何をどうしたら良いのか分からず、戸惑い、どこか踏み出せない深瀬昌久の様子を浅野忠信さんが、眩しいばかりの奔放さで深瀬昌久のミューズであり続けた妻 洋子を瀧内公美さんが、時にぶつかり合いながら苦悩を共に生きた夫婦をよく演じていました。個人的に瀧内公美さんは、1人で立っていても、傍に男性がいる(男性に腕や身体?が絡んでいる)かのように感じてしまう不思議な女優さんなのですが(って、こんな事を書いたらご本人に失礼ですよね。この場でだけこっそりと自分からみた印象を打ち明けておきます)、女の情とか情念を表現する役によく合うように感じました(光る君へ、でもそういう役だったかな)。

この映画で驚いたのは、カラスの声を担当された、ホセ・ルイス・フェラーさんという方。無知なのですが、舞台俳優の方でしょうか?深瀬昌久に内省を促すカラスの存在は、この作品では不可欠に感じますが、映像には、CGではなく、人間より一回り大きいカラスのロボット?のような姿で現れます(着ぐるみではないんじゃないかな)。このカラスのキャラクターは、日本の天狗とか、能楽などにヒントを得て設けたもので、監督にとって一つの挑戦だったそうですが、カラスの声(英語で深瀬昌久に語り掛けます)が、ものすごく説得力があってストーリーに引き込まれます。シリアスな場面に着ぐるみのようなものが出てきたら、もしかしたら少しコミカルにみえてしまうかもしれないと思うのですが、カラスの語り口の重厚感と説得力が凄かったです。声による演技の凄さを初めて知りました!

greens