「文化的な面で理解しきれなかった」リアル・ペイン 心の旅 クックーさんの映画レビュー(感想・評価)
文化的な面で理解しきれなかった
国内線の機内で見ました。作中でも飛行機を含めた旅行記、ロードムービーなのでなんとなくシンパシーを感じながら見るにはちょうどよかったですね。
それくらいたまたまの鑑賞なので本当に簡素なあらすじでしか事前情報は無いです。
二人の若者が旅の中で自分と向き合い、グループと親睦を深めていく。
そんなくらいの認識で見はじめました。
主人公二人のキャラクターはオープニングからわかりやすく、マイペースで空気を読まずずけずけ行くタイプのベンジー、気配り屋で心配性のデビッド。どっちものキャラクターも誇張されつつも、誰しも現実の交友関係の中で思い当たる友人を当てはめながら見られるような造詣。
会話のやり取りもあからさまに今イラっとしてるんだろうな(笑)とか、嫌々だった割りに結果楽しそうだなとか、見ててすんなり感じ取れる上手なテンポでした。
性格の違う二人がお互いを思い合いながらもそれぞれの生活、歳とともに距離が開いてしまっている感じもなんだか現実的で思うところがありました。
最終的にはほんの一部かもしれないけど、二人の胸の内を吐露しあって、お互いの絆を再確認して幕を閉じる。
この後二人がどうなっていくのかはわかりませんが、なんとなく昔仲良かったけど疎遠になってしまった古い友人にまた会いたいななんて気持ちがじんわり湧く良い映画でした。
ただ、もう少しツアーグループの他メンバ達にも光を当てるのかと思ったら特にそんな深掘りも無く、なんだからあっさりと解散してしまいました。おばあちゃんちの写真は送ったのかな。たぶんベンジーのキャラだとそんな社交辞令すっかり忘れて送ってないだろうな(笑)
ベンジーの人を振り回しつつも魅了するキャラクターを際立たせるための舞台装置だった感が否めなかったですね。
二人の共通の祖母のルーツに深く関わるホロコーストの記憶を巡る旅。この辺も日本人の感覚からかなり遠くてイメージが全然つかなかったです。歴史的に痛ましい事実であることをは知識として知っててもあそこまで感傷的なツアーを巡るのってなんだかリフレッシュを目的とする旅行の目的に相反するような…自身の祖父母の第二次大戦の痛ましい記憶(があったとして)を追体験するツアーに参加したいか?って考えるとちょっと想像が付かないですね…この辺は現代日本人の平和ボケ感覚なのかもしれない。
二人が心情を吐露するためには心を揺さぶる旅である必要があったのかもしれないけど、なんだか歴史の傷を描きたいのか現代に生きる人々の傷を描きたいのか、特にガス室あたりとかはもう題材が重すぎてどっちにどう感情を抱けばいいのかよくわからなくなりました。
欧米(作中でもそうですが巻き込まれた移民の方々もいるのであえて米も含みます)の人達には共感できるくらいには鮮明な記憶として刻まれてるのかなぁなんてちょっと作品に入りこめなかった部分もあり☆3とさせていただきました。というかあらすじにコメディって書いてあったけどコメディ要素少なすぎません?と今更思いました。