劇場公開日 2025年1月31日

「人生はままならないけれど」リアル・ペイン 心の旅 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0人生はままならないけれど

2025年4月30日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

ジェシー・アイゼンバーグが優秀な監督であることを証明した。彼自身による脚本・監督で、小品の豊かなドラマが生まれた。アメリカで生まれ育ったユダヤ人移民の3世の青年二人は、ポーランドから逃れてアメリカにやってきた祖母が亡くなったことで、二人でそのルーツをめぐる旅行に出かける。
キーラン・カルキン演じるベンジーは鬱で薬の大量服薬をしたばかり、普段は明るい奴だが、心に何かを苦しみを抱えている。そんな彼は、ユーモアセンスもありコミュニケーション能力に長けているような、空気が読めないような、複雑な男だ。幼いころは彼と兄弟同然に育ったデヴィッドは、彼が辛い時に力になれなかったことを悔いている。同時に、いつも人に愛されるベンジーが気に入らない、でも、本当はデヴィッドはそんなベンジーみたいになりたかった。愛憎が入り混じる複雑な関係性をさらりとユーモアも交えて描いて見せるジェシー・アイゼンバーグの芝居を引き出す力が素晴らしい。
自分の人生も見つめなおしてみたくなる。

杉本穂高