「とても良い」リアル・ペイン 心の旅 miさんの映画レビュー(感想・評価)
とても良い
劇場で予告を見て気になっていた作品。
デヴィッドがひたすら留守電に状況報告し続ける冒頭のシーンで、すでにこれは好きだと確信。
テーマはかなり重いものだと思いますが、ピアノ音楽が心地よく、全体的にゆっくりと穏やかに時が流れるようなロードムービーで、心癒される時間でした。所々で笑わせてくれるのも良かった。
社会人になりきれず引きこもり(に近い)生活を送っている私は、ベンジーの行動や気持ちに共感できる部分が多く、完全にベンジーの視点から観ていました。
ベンジーのように素直で純粋で人の痛みが分かり、どこか子供のように無邪気で誰よりも優しい心をもった人は、大半の大人たちのように社会で生き延びることが難しいのだと思います。
一方でデヴィッドのように仕事があり幸せな家庭も築いて、辛いこともあるけど表には出さずに社会で生き抜いていくには、人(や自身)の痛みに鈍感になる、または気付いてもスルーするスキルが多少必要なのではと思います。
これは、ツアー初めの方でマーシャが深い悲しみを秘めた目をしていることに気付き、話しかけに行くベンジーと、そんな風には見えなかった、1人になりたいのでは、と話すデヴィッドにも表れているかと思います。
この旅を通してベンジーに心境の変化があったのか、この後ポジティブに人生を歩んでいくのか、それともまた自殺しようとしてしまうのか、エンディングからは読み取れないところもリアル。
この映画を観て、人の痛みを本当に理解することは難しい、そして理解できたとしても、他人の力でその痛みから解放してあげることは不可能に近いのではとさえ思いました。
でもだからこそ、家族や友人など周りの人が何か痛みや悲しみを抱えていれば気付いて味方になってあげられるよう、普段からもっと気にかけたり会話をしたりしよう、とリマインドしてくれているような気がします。
キーラン・カルキンの演技、本当に素晴らしくて最初から最後まで引き込まれました。ジェシー・アイゼンバーグも。特にレストランでベンジーが席を立っている間に本音があふれて止まらないシーンが印象的でした。
観る人によって捉え方が大きく変わってくる映画だと思うので、他の方のレビューも読んでみたいと思います。