拳と祈り 袴田巖の生涯のレビュー・感想・評価
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お姉さんの強さに圧倒された
こんな事があっていいのか、絶望的な気持ちになる。最近のニユースで表情の乏しい袴田さんしかお見かけしてなかったような気がする。映画では時おり柔らかな表情をしたり、ユーモラスな事を話したり、安心したい自分がいた。お姉さんの秀子さんがどんな袴田さんもその大ケガをも笑い飛ばしていた。その長きに渡る戦いで強くならざるをえなかったのかと涙が出た。みそ店で働く前にバーまで経営してたとは袴田さん驚いたよ。
いわれなき罪により、損なわれた心を取り戻す話
幸運な事に袴田さんは58年掛けて死刑判決を覆し、無実を勝ち取った。
この話の裏には、冤罪事件に巻き込まれて、いわれなき罪を背負わされている人が沢山いることの深い闇が見える。
稀有なドキュメンタリー
ドキュメンタリーを観たあとよく二度と観たくないけど観てよかった、でも人には勧められないと思うことがよくある。これは二度とこんなことがあってほしくないし観てよかったしなんなら人に勧めたいドキュメンタリーだった。
袴田巖さんと姉秀子さんの日常があまりにも自然に映される。人が撮っているのではなくそこにポンとカメラが置かれているだけのように感じる。
監督は袴田巖さんが釈放される前から秀子さんの取材をし、記者と取材対象という関係を越えたものだったとかどこかで読んだが、そんな関係だったからこそここまで自然に撮ることができたのだろう。この監督でなければ撮れなかったドキュメンタリー。
巖さんは拘禁症状から意味のわからない言葉を口にする。だが本当にこの人に正気は1ミリもないのか?と思えるシーンが多々ある。ボクシングのことになれば雄弁に語るし、自分に縁がある場所はどれだけ朽ちようと覚えている。街を歩き周り甘いもの(好きなのかな?長年食べる機会が少なかったから?)を食べると目を細めて嬉しそうにする。そのギャップがあまりに切ない。
そして秀子さんの底抜けな豪快さに救われる。離婚したことは「女1人のほうが楽しいじゃない!それに結構モテたのよ?」なんて茶目っ気たっぷりに話して、巖さんが夜中まで帰って来なかろうが階段から転げ落ちようが最後には笑い飛ばしてしまう。テレビで見かけるたびに思っていたが改めて思う。なんて強い人なんだろうか。
冤罪と死の恐怖が人をここまで変えてしまうということ、そしてあまりにも時間がかかりすぎた自由までの時間と戦い続けた人々をこの短い時間によくぞまとめられたと思う。ほんの少しでも袴田事件や冤罪に興味がある人は見てほしい。
自由が薬となって、巖さんと秀子さんのこれからが幸福に満ち溢れたものであってほしい。そして当時の裁判官であった熊本さんの魂が救われること願ってやまない。
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