「主人公に反発して離れていったメンバーの気持ちが分かってしまう」てっぺんの向こうにあなたがいる tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
主人公に反発して離れていったメンバーの気持ちが分かってしまう
主人公が、1975年に、女性として初めてエベレストの登頂を果たすまでを描いた序盤の展開は、男性優位の社会に抗って、女性だけのグループが偉業を達成する様子が面白い。
その後、登頂した主人公だけに脚光が当たることに反発したメンバー達が、主人公のことを非難すると、「そんな仕打ちを受けたら、自分だったら登山家をやめるだろう」と思われて、主人公がどのようにして立ち直り、登山家を続けることになったのかが気になった。
ところが、そんな経緯はまったく描かれず、主人公が、何事もなかったかのように登山家として活躍していることが分かると、彼女が味わった確執や挫折は何だったのかと、拍子抜けしてしまった。
次に、主人公の息子が、高校生の時に、母親が有名人であるがゆえにグレる様子が描かれるのだが、この騒動も、何となく丸く収まってしまって、どういう経緯で彼が更生したのかが描かれなかったのは、物足りないとしか言いようがない。
やがて、ガンで余命宣告を受けた主人公が、東日本大震災の被害地となった福島の高校生達を、富士登山で励ますイベントに打ち込むようになると、彼女のバイタリティーには感心するものの、子供達に教えるべき山の素晴らしさや厳しさのようなものが今一つ伝わってこなかった。
それどころか、登山のインストラクターとしてイベントをサポートする親孝行の息子や、主人公のことを献身的に支え続けてきた理解のある夫だけでなく、今も主人公と一緒に山に登ってキャンプをする女性記者の姿を見ると、主人公が、家族や友人に恵まれ過ぎているように思われて、何だか、彼女に反発して離れていった登山仲間の気持ちが分かるような気分になってしまった。
それから、主人公がホスピスに入所してからのエピソードだが、寝言を言ったり、エベレストの絵を描いたりする描写が冗長に感じられて、不謹慎だが、「一体いつになったら亡くなるんだ」と、少しイライラしてしまった。
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。
