劇場公開日 2025年10月31日

「山に人生を捧げ、家族に愛された女性の半生」てっぺんの向こうにあなたがいる おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 山に人生を捧げ、家族に愛された女性の半生

2025年11月3日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

幸せ

■ 作品情報
監督は阪本順治。主要キャストは吉永小百合、のん、木村文乃、若葉竜也、工藤阿須加、茅島みずき、円井わん、安藤輪子、佐藤浩市、天海祐希。脚本は坂口理子。原案は、女性で初めて世界最高峰エベレストの登頂に成功した登山家・田部井淳子のエッセイ『人生、山あり“時々”谷あり』。

■ ストーリー
登山家・多部純子(吉永小百合/青年期:のん)は、1975年にエベレストを制覇し、世界を驚かせた。しかし、その輝かしい偉業は、純子自身や夫の正明(佐藤浩市/青年期:工藤阿須加)、盟友である北山悦子(天海祐希/青年期:茅島みずき)ら家族や友人たちに、光だけでなく深い影ももたらすこととなる。物語は、登山家として、また母として、妻として、一人の人間として「てっぺん」を目指し続ける純子が直面する様々な問題や葛藤を描く。晩年には余命宣告を受けながらも、笑顔を忘れずに山に挑み続ける彼女の姿を通して、人生をかけて挑むことの意味を問いかける。

■ 感想
実在の登山家・田部井淳子さんをモデルとした、多部純子の半生を追体験する中で、エベレスト登頂という人類の偉業だけでなく、その後の人生を山に捧げ続けた彼女の生き様と、彼女を取り巻く人々との絆に心揺さぶられます。

特に印象的だったのは、純子の情熱を献身的に支え続けた夫・正明と子供たちの存在です。山への純粋な想いが故に、時に周囲が見えなくなってしまう純子を、温かく、そして強く支える家族の絆がひしひしと伝わってきて、後半は何度も涙があふれます。偉大な業績の裏には、かけがえのない家族の愛があったのだと、改めて実感させられます。

一方で、一つだけ腑に落ちなかった点があります。純子に対する世間の扱いに嫉妬し、距離を置く女性登山仲間たちの心情です。純粋に山を愛する気持ちがあれば、世間の評価やスポットライトの有無にかかわらず、仲間と共に困難を乗り越えた達成感だけで十分なのではないでしょうか。それでは満足できないというなら、それは山への愛より名誉欲の方が強いということで、それはそれで不自然なことではありません。いずれにせよ、そのあたりの心の機微をもう少し丁寧に描いてほしかったです。そうなれば、作品全体への共感度がさらに高まったかもしれません。

とはいえ、本作は単なる登山記録映画ではなく、一人の女性が山という壮大な夢を追い続け、その中で家族との深い絆を育んでいく、人間ドラマとして見応えがありました。田部井淳子さんの情熱と愛と生き様は、子どもたちにしっかりと伝わり、そこからさらに次の世代へと受け継がれていくように思います。

おじゃる
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