「本編がやはり傑作だったと確信させるメイキングドキュメンタリー」ドキュメンタリー オブ ベイビーわるきゅーれ komagire23さんの映画レビュー(感想・評価)
本編がやはり傑作だったと確信させるメイキングドキュメンタリー
(完全ネタバレなので必ず鑑賞後にお読み下さい!)
面白かったです!
個人的な本編の方の採点(4.5点)に比較すると点数が低いのではないかと思われるかもですが、私的には3.5点は十分な良い点数です。
ただ、ドキュメンタリー作品単体としては、(古いですが)映画『ボウリング・フォー・コロンバイン』や映画『ゆきゆきて、神軍』などと比較すれば、今作の映画『ドキュメンタリー オブ ベイビーわるきゅーれ』は、主に1つのテーマを掘り下げて行くドキュメンタリーというよりも、本編のメイキング映像(映画)に近かったと思われます。
しかし、その中では相当、興味深く面白い作品に仕上がっていると思われました。
個人的には特に2点、興味深く面白い場面がありました。
1点目は、七瀬りく役の大谷主水さんが駐車場のアクションシーンで肉離れを起こす場面で、大谷主水さんは無念だからこそ、その気持ちを隠すために饒舌になっていて、一方、阪元裕吾 監督は大谷主水さんの話もそこそこに、大谷主水さん不在のままでこの後どのシーンの撮影が可能か頭をフル回転させているだろう表情をしていた、場面です。
まるでサッカーの重要な試合で中盤の重要なベテラン選手が負傷し、その落胆する負傷選手を心配するよりも、誰と交代させ当初考えていたプランを維持するためにどのような策が必要かを考え続けているクラブチームの監督という、それぞれが正しい選手と監督の交差する場面かのようにも感じました。
2点目は、杉本ちさと役の髙石あかりさんだけじゃなく、本来はアクションが専門の深川まひろ役の伊澤彩織さんまで、過酷なアクションシーンの連続でダウンし、スケジュールを管理している(チーフ?)助監督が、スケジュールの変更をスタッフ会議で提案する場面です。
(緊急を示す明らかに選んで欲しくないメッセージが込められた)赤で枠が色付けされたタイトなスケジュールと、安全を示すしかし撮影延期期間も含む青で枠が色付けられたスケジュールを示し、スケジュール担当の助監督は青のスケジュールの方の選択を促します。
しかし、美術監督・装飾の岩崎未来さんは、(美術は建て込みからバラシまで他の部署に比べてもう一手間掛かるため)無理を承知で撮影延期の無い赤のスケジュールの選択を提案します。
ただ、(話し合いのやり取りの場面のカットもあったでしょうが)あっさりと美術監督・装飾の岩崎未来さんの提案は却下され、撮影延期期間も含めた青のスケジュールの方が選択されます。
その時の美術監督・装飾の岩崎未来さんの表情に、全ての段取りをやり直さなければならないとの受け止めの裏側が現れていて、私的にはその大変さを想像ししかしあっさりと却下された赤スケジュールの選択に、失礼ながら逆に噴出してしまいました。
映画作るって大変だよな、と、改めて1観客としても思わされた2つの場面でした。
(欲を言えば、その撮影延期の方が実際どう解決したのかも観たかった感想も持ちましたが‥)
今作は他にも、特にアクションシーンの積み重ねの撮影の大変さが伝えられ、冬村かえでを演じた池松壮亮さんと伊澤彩織さんとのアクションは特に過酷だったことが分かります。
と同時に、冬村かえでを通して、杉本ちさと深川まひろとの2人の関係性の深さが本編で表現されていたことが、今作でより深まって理解され、本編の映画『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』はやはり傑作で間違いないと確信させる、ドキュメンタリー映画になっていると、僭越ながら思わされました。
本編が面白かった人は必ず観た方が良い、素晴らしさあるドキュメンタリーでした。