「うーむ。。結末が余りにも惜しい!【ネタバレ】」ファーストキス 1ST KISS 秀行さんの映画レビュー(感想・評価)
うーむ。。結末が余りにも惜しい!【ネタバレ】
あんなに好きになってくっついたのに、いつの間にか2人の距離がどんどん離れて…と言う現実によくあるような冷え切った現代の夫婦が、ある日突然旦那の死により死別。それから程なく生き残った妻が期間限定で、しかも15年前の夫婦が知り合う直前の同じシチュエーションに何度でもタイムリープする術を知り、あの手この手で何度も何度もタイムリープを繰り返して、何とか旦那が死なない未来に変えようと悪戦苦闘する様子が可愛らしくも滑稽に描かれます。
若かりし結婚前の彼の方は、突然現れた15歳も歳上の女性に何故か運命的な好意を感じてアプローチを試みますが、女性の方は彼が死なない未来への変更に執着していて当初はドタバタを繰り返すばかり。ところがそうしているウチに、女性の方も自分に好意を寄せてくれる彼と、再び恋に落ちて行きます。この辺りは男性の純粋さ、女性の健気さが段々と噛み合って行く様がとてもキュンと来ます。
やがて彼女のタイムリープもこれが最後と言う段階になって、遂に彼女は2人の未来になにが待っているのかを洗いざらい話すのです。そして彼が未来で死なないためには、自分と結婚してはいけないとまで言うのですが、彼の方はかえって彼女と結婚する未来を頑なに選ぶと言い、彼女に求婚までして2人の恋は時空を超えてまた実を結ぶのでした。そしていよいよ彼女が過去の彼と別れて現代に戻る時に、絶対に死なないでと懇願して去って行くのです。
とここまでは、ずっと現代の彼女の視点で物語が進むのですが、ここから先は過去の彼の視点に切り替わってしまいます。彼女から2人の関係が冷え切って行き、やがて自分が死ぬ事を聞かされていた彼は、自分と同じ時間軸にいる彼女と出会い、恋を育み結婚した後も、ずっと彼女に優しく向き合って、相思相愛の理想の夫婦関係を築いて行きますが、結局元々の死を避けずに死んでしまい、後に残された彼女は、彼が死の前に書いた手紙を見つけて、そこに書かれた彼女への愛の大きさに涙して物語は終わります。
と、一見感動的な終わり方のようですが、あれだけ苦労してタイムリープを繰り返し、彼が死なない未来を作るために頑張っていた彼女の視点に感情移入していた視聴者からすると、1番盛り上がってきたクライマックスに、その未来の彼女の視点からハシゴが外され、過去の彼の視点での結末に向かう事で、余りにもやるせ無い肩透かしを感じます。更にその過去の彼は、その後自分と同じ時間軸の彼女との愛に満ちた結婚生活を15年間続けた後に、元々の死の経緯同様に呆気なく死んでしまうので、彼女からすれば冷え切った関係での死別に比べて遥かに大きな悲しみと喪失感を味合う事になり、より残酷な死別を迎えて物語が終わってしまうのです。
過去の彼と恋に落ちて、現代に戻る彼女の視点で描き続けなかったのが、この映画最大にして致命的な失敗だと思います。それまでは非常に素晴らしい流れだっただけにとても残念な気持ちにさせられました。
因みにもし私が監督だったら、過去の彼と恋に落ちながら最後に彼女が現代に戻ると、そこでは彼女と彼が結婚していない世界になっていて、独身の彼女の元に、15年後も独身の彼が訪ねて来て、おかえりと言ってキスするシーンで終わらせると思います。そうすれば彼女が何度もタイムリープした苦労が報われて、そこから先の2人の愛と幸せを連想させる超ハッピーエンドでのエンディングになったでしょう。