「夫婦の生態は大体こんな感じ」ファーストキス 1ST KISS ワッフルマンさんの映画レビュー(感想・評価)
夫婦の生態は大体こんな感じ
映画自体は単純な感じですが、感情描写が豊かで女性的な映画だなと思いました。
夫婦を題材にしているので、彼氏や彼女と結婚したい人、夫婦でも見ていて面白いかもしれません。ただ、中盤の過去に何度も行ったり来たりする部分が冗長です。
夫婦の解像度が高く、男性という生態(記憶がフォルダ的でケースごとに分けられている)、女性という生態(記憶がレイヤー的で総合的に考える)、それぞれの解像度も合わせて高いので、夫婦がすれ違う理由も分かりやすく描かれていると思います。
夫が不慮の事故で亡くなるのですが、その事実は映画を通して変わることはなく、それがまた一段と悲しいものです。
過去の夫に会いに行く時に妻がタイムリープをするのですが、タイムリープを二度重ねてもオチが変わらない時点で夫は「死」というものを受け入れている事実が切なかったです。
妻を残して死ぬというところは、夫の不変的な彼が持ち合わせる道徳や倫理的な価値観に組み込まれているもので、妻にはどうにもできなかったわけでしょう。ただ、妻側としてはその事実を受け入れたくはなかったでしょう。それも分かります。「お前にも、守るもんはあるのに、易々と命を捨てやがって」と言いたくなる気持ちは分かります。
終始共通している部分としては「夫も妻も、お互いなりに愛していたということ」。
ただ、お互いに謝らない、ごめんと言わないとか、そうした積み重ねで序盤に出てきた過去改変を全く経ない夫婦は完全に冷めきっていて、後半に過去改変を何度か経た夫婦は明らかに夫婦としてのコミュニケーションを上手く取れている状態に改善していました。愛の表現や言葉で伝えるという行為を怠らなかったからだろうと勝手に推測します。
特に、妻が若かりし夫に「あなたは勝手にベッドを部屋に買って、ふさぎ込んだ」というシーンがありました。後半の、夫が変わるきっかけになった一言だったかもしれません。そこから夫は「確かに自分が悪い」と非を認め、妻は幸せそうに未来へと帰っていきます。妻としては過去の夫に言いたいことを言えて満足だし、確実に未来で変化がある(でも夫が死ぬのは変わらない)というものを受け入れたのかもしれません。
ただ、後半は妻がタイムリープをしていた事実を忘れたかのようにパタリとその表現が消えて、夫側の視点に変化するので、そもそも妻はタイムリープをするという未来の事実を知らぬまま夫の死を受け入れたのでしょうか。
タイムリープをする際の仕掛け、当て馬のような女性などは設定などがあっさりしていました。とはいえ、もたらされるものは唐突ですからタイムリープをなぜできるようになったのかやタイムリープができる仕組みなどについてはそこまで深く設定する必要なはなかったのかもしれません。当て馬の女性は未練がましく何言ってんだ、なくらいですが。(笑)
正直、死を容易く使う映画はあまり好きじゃないですし、今回のその映画のオチとしては正解なのかもしれませんが、個人的にはフィクションといえど死への扱いの残酷さを見たような気もします。そもそも、誰か大切なものが亡くなった時、残されたものはそこで「時が止まってしまう」わけですから。心情変化の描写が分かりやすく、部屋の中が綺麗になって背景も明るい色になっていたりと、明白でした。
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