ファーストキス 1ST KISSのレビュー・感想・評価
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接する瞬間に
駈の死が一瞬のことのように描かれているが、ハルキゲニアが化石として堆積していた時間を考えれば、私たちの人生も一瞬にしか過ぎない。
あってもなくても大差がない今日という一日。死んでても生きてても今日という日は進んでいく〈私〉の存在。人生に定まった意味もないのだから、私たちはただ死が訪れる瞬間を待っていればいい。
でも、
どうして私たちは恋愛をしたり、誰かと生きることを選ぼうとするのだろうか。
カンナも駈の早すぎる死を回避しようと行動する。離婚届を出すほどに関係は冷め切っていたのだから積極的な動機はないのだろうけれど、タイムスリップしたのなら仕方がない。
ここで印象的なのは結婚を回避する行動が失敗に終わる点だ。カンナの発想は正しい。結婚後の行動を変えようとしても難しいのならば、そもそも結婚しなければいい。彼には好意を寄せてくれる里津がいるのだから、尚更カンナと結婚する必要もない。彼女が存在する理由はない。
しかし、物語はこの選択を挫折させる。駈とカンナが赤い糸で結ばれていることを変更不可能な運命として決定づける。それなら〈私〉がいなくなることではなく、〈私〉がどのように他者や瞬間に接するかが問題となってくる。だから本作のタイトルが「ファーストキス」なのだろう。
口に運んだ途端に溶けてしまうかき氷を食べようとするとき、はじめて〈あなた〉に会ったとき。数年前に頼まれた餃子が届いたとき、パンくずがマグカップに入っているのをみてしまったとき、隠されていた手紙を読むとき、どのように接するか。失敗もあるかもしれない。でも写真のように瞬間を振り返ったとき、笑っていたり、よかったと思えているのが多ければいい。それは運命を変えたということではないけれど、解釈は変わっている。
それこそ日常の再解釈や肯定と言うべきものであり、私たちが誰かと生きようとする理由だろう。人生や〈私〉の些末さに変わりはないが、その一瞬は何にも代え難い美しいものだ。
思えば映画だって、瞬間を連続させて動かしたイメージである。
それなら、どう接する?
全てのマンネリ夫婦に捧げる最高のラブストーリー
今一番面白い脚本家・坂元裕二と今をときめく監督・塚原あゆ子が初タッグを組んだオリジナル恋愛映画。これは絶対面白いだろうと、期待して映画館に足を運んでも、決して裏切られることのない安心感。素敵なMOVIX DAYを過ごすことができます☺️
驚くべきは、若い頃の松たか子さんの透明感。松村北斗くんとの年齢差18歳を全く感じさせません。誰がどう観てもお似合いの夫婦に見えるのが素晴らしい。そしてさすがヤマザキ春のパン祭りを四半世紀にわたり請け負ってきた松たか子さん!朝はパンがお似合いなんです♪
元ジャニーズには、二宮和也さんや岡田准一くんなど、俳優として頭角を表すアイドルグループの方が沢山いますが、今を代表するアイドルグループでまさに俳優として頭角を表しているのが、SixTONESの松村北斗くん。昨年の映画「夜明けのすべて」では、数々の賞を受賞しており今後ますますの活躍が期待されています。彼は作品にも、共演者にもいつも恵まれている気がします。
そして何より、作品として完成度が高いのは、松たか子さんと松村北斗くんの圧倒的ナチュラルな演技力によるものでしょう。いい意味で、顔も演技も個が立ちすぎていないので、観る側はすんなり物語に集中できるのです。ストーリーは、これまでの坂元ワールドを打ち破るタイムスリップ系?!これを不快と思う方は、評価は若干低いかもしれませんが、私は素直に面白かったです。
どんな夫婦でも思い返せば、
好きで一緒になったハズ。
「恋愛」は、いいとこ探しで
「結婚」は、嫌なとこ探しなんて
そんな寂しいことは言わないで
もう一度思い出そう!あの頃を🙄
全てのマンネリ夫婦に捧ぐ
最高のラブストーリーの爆誕です♪
鑑賞後久しぶりに旦那と手を繋いで帰った
結婚して⚫︎年、付き合い当初のトキメキや、お互い良いところしか見えなかったあの頃はとっくに終わった。そんな夫婦に特にオススメしたい。刺さると思うし自分ごとのように思って見れると思う。
私は正直恋愛映画が得意ではなく、キュンよりも照れくさいが先にきてしまい、基本ゆるい涙腺も、恋愛シーンになると固く絞まってしまう。
なので『花束みたい〜』はあまり刺さらなかった。
けれど今作は違った。純粋な自分が久しぶりにムクっと起き上がったみたいにキュンとして、感動して、最後は泣いてしまった。素直に2人が素敵だなと思った。そして夫婦生活の初心に戻れた。
これは脚本やカメラワークだけではなく、松たか子さんと松村北斗くんの演技の力も大きいと思う。
見る前は多少歳の差の違和感とか無理感を感じるかなと思ったらとんでもない。もしこれが別の人が演じていたら、カンナは若作りイタいおばさんになっていたかもしれないし、駈は少女漫画実写化歳下男子になっていたかもしれない。
けれど2人のとても自然体で、感情を滲ませるような演技がめちゃくちゃ良かった。
ビジュアル面でも、20代の肌艶編集加わった松たか子さんは、昔のドラマの頃のようでめちゃくちゃ綺麗だったし、40代の松村北斗くんのメイクも自然で驚いた。
台詞回しは坂元節はありつつも『カルテット』や『大豆田とわ子』よりはマイルドで、ロマンチック度が上がった感じ。好きな人はコレコレーってなるやつ。
またもう一度見たくなる、素敵な夫婦再生物語でした。
そいつ、おばちゃんのこと、好きなんだよ
日本映画界のヒットメイカー、といつの間にか言われるようになった塚原あゆ子監督。正直、「わたしの幸せの結婚」(’23)とドラマ「海に眠るダイヤモンド」しか観ていないが、TVドラマの経歴は長い。「わたしの」「海に」を観る限りは、主人公を際立たせる、という最大の要求をきっちりこなしつつ、世界観のバランスを崩さない、という、結構難しいことをこなす方だな、という印象。
だがちょっと悪く言うと、演出の強弱が見る側にあまり感じることがなく、ストーリーの弱い部分は補えず、観る側におっと思わせるストーリー展開であっても、決めどころがさらっとしすぎるため、どこかもやもやが残る、カタルシスを得るところまでには到達せず、キャラと演者の力のおかげで、面白かったね、という作品が続いている印象。力業でねじ伏せる、強弱でインパクトを与える、という点が1本の映画では必要だが、話が途切れ、視聴者側にリセットがかかる「ドラマ」はそれが必要ない。そういうことだ。
もちろん、キャラと演者で映画は成り立つ、を持論とする名監督もいるわけで、そこから先はある意味ないものねだりや、好みの問題だ。
そこにかつて「トレンディ・ドラマ」で名を馳せた坂元裕二の脚本とのタッグ。オレは「花束みたいな恋をした」(’21)はあんまりかってなくて、近年の「怪物」(’23)は観ていない。そもそも塚原監督は今や名脚本家と言われる野木亜希子氏とともにキャリアを築いてきた人だ。
なので、塚原さんと坂元さんの初タッグという話題性には特に惹かれることはないのだが、本作を初日に鑑賞したには訳がある。
タイムリープ。
これです。現在の日本の映画界最高峰とされる、スタッフ、キャストでのこの題材。「オール・ユー・ニード・イズ・キル」(’14)がこの題材の最高峰としているメンドクサイおっさんが本作を鑑賞。
「ファーストキス 1ST KISS 」
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タイムスリップする方法や帰ってくる方法は、まあ、いいです。気にしては本作、その時点で楽しめなくなる。
問題なのは、同じ時間にしか帰れない、そうではない、が結構あやふやで、「何度やっても失敗する」という悲壮感が薄すぎる。「最愛」の旦那を絶対に死なせない、という理由ではないので、危機感はどうでもいいことではあるが、終盤の写真の枚数の積み重ねがただの枚数でしかなくなる。(積み重ねを写真で、というのは上手いんですけどね。)
また、積み重ねはおばちゃんの方であり、若い旦那は「いつだって」初めてなのに、話の展開が積み重ねあっての心情の変化に見えるのも強引。ただし、演者の松村さんはそのことが分かっているかのようで、いつだって「初めて」の演技をしているのは素晴らしい。
しかし、いろいろ欲張っているものの、ストーリーの緩さと演出の強弱がないため、なんだが、「あえて」中途半端な形で終わらせようとしている感がある。完成までに時間がなかったのか、という風には思える。それともタイムスリップものに腰が引けたのかな。
腰が引けた感は、偶然靴下にくっついたポストイットで終わらせにかかるところなんかもそうだね。
なんだか、演者の力と、坂元脚本の「例の」会話のやり取りで作品できました!ってな風にみえすぎちゃって、今回特にセリフに押しつけがましさが目立ち、見どころである会話劇もオレはノれなかった。
ひねくれたおっさんはやっぱり観てはだめだな。
予告では、おばちゃんが、死んだ旦那の若いころの時代にタイムスリップし、死なないように手を打つが、青年旦那におばちゃんのほうを好きになる、という、言うまでもなく「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の例の展開が想起される。
おばちゃんが若いイケメンの子に好かれる、というのはこれはこれで立派なネタだ。そして本作の話の原動力は間違いなくそこである。
だがおばちゃんと若いイケメンの子が結ばれる、という表立って熟年層のおばちゃんが「ムフフ」というような映画にできなかったのは、死んだ旦那の死因がああいったもののため。
松さんと松村さんの「1ST KISS」で満足できればいいが。
死んだ旦那の死因の設定がこの映画の最大の欠点。この死因でなければ、もっと面白くなったかと思うし、日常の尊さのテーマと旦那の決意が飛躍しすぎるので、正直その設定は不快だった。
松さんも、独り言がおおく(もちろん、孤独感、イタイ感もあるが、タイムスリップの説明をさせる言い訳でもある)なに、このおばさん?というウザイ役も素晴らしい。
だが、オレが一番面白かったのは、かき氷の並びのところで、後ろの人に「そいつはおばちゃんのこと、好きなんだよ」と「モブ」に言わせる点。ここ最高だった。
追記
stではなくて、STなんだね。ST(大文字)は「本当の初めて」ではないよ、という意味なのかもしれない。でもターゲット層にはシンプルにアピールしたいから、「本題」「副題」として、「1ST」を入れたのかな。
トータルとしては、ゆるい感はあるが、「ターゲット層へ向けた」という意味では非常に「欲張り」な作品になっており、結果、塚原あゆ子監督らしい「お客さんを呼べる」娯楽作品に仕上がっているのは、いい意味で、演者の力で作品を持たせた、ということできっちり仕事をこなした、という点で素晴らしかった。
追記2
全く余談。
「オール・ユー・ニード・イズ・キル」がいつも同じ時点にタイムリープするが、うまいのは、前任者がいて、理解、協力する存在、その人がうまく機能(美しい女性に主人公を殺させて、タイムリープしなおす)していた点。
そういう意味では、森七菜さんや吉岡里帆さんをそういう存在にしてもよかったんじゃないかな、と思ったが、主人公2人の「セカイ」だから、難しいところだ。
追記3
おっと、忘れていた、ヴィルヌーブの「メッセージ」(’16)。
冒頭に、それらしいナレーションはあり、本人はそれでいいかもしれないが。
タイムトラベルの掘り下げ不足を感じるも「会話劇で魅せる不思議なラブコメ映画」としては十分面白い。
本作は、会話劇が楽しく、ベースの完成度は高いと思います。ただ、会話がリアリティーを醸し出しているぶん、タイムトラベルという非常に「特異」な設定については受け止めが分かれるところ。個人的には以下の2点がマイナス要素に。
1点目は、松たか子が演じる妻は、とても論理的な人物として描かれていて作品の魅力を高めて良いと思います。
その一方で、「タイムトラベル」についての根本的な考察がほぼ抜けていた点は不自然に思えました。高速道路を走り、たまたま「15年前の2人が出会う直前の場所」にタイムトラベル。ただ、どうやって現代に戻るのか? 戻った際の時間はどのくらい過ぎているのか? 再びタイムトラベルできたら、いつのどの世界に移動できるのか?
このような初歩的な大前提について、せめて「東京リベンジャーズ」くらいの最低限の考察は劇中で欲しいところでした。
2点目は、妻が15年前の過去に何度も行き、松村北斗が演じる夫の将来に変化を与える設定は面白さを生んでいます。それなのに、終盤での夫は、2つの可能性のうちの「片方だけ」を前提にしていて、論理的に必然性が欠けているように思えました。
以上のような特異な設定に起因する不自然さも見られますが、「会話劇で魅せる不思議なラブコメ映画」と割り切って見れば、十分に面白い映画です。
一人の登場人物をフォーカスする場面や綺麗な景色の場面などあり綺麗...
松村北斗さん良すぎ
意識があれば、大丈夫なのか。
変わると知りながら
慣れてくると当たり前になって
無になってしまう。
せっかく出会えて恋に落ち合って一緒にいられているのに
そうなってしまう流れに共感でき少し怖かった
けれどもすぐあたたかい気持ちになれる結婚もあるのも知っている
松村北斗さんは声も変えながら年齢の違う表現が上手い。
後ろ姿でも感情がわかった
正直そこまで刺さる言葉はなかった
松さんのおてんばで自由な感じ、とても良い
けれど湧き出る感情は苦手みたいだ。
そこはとても繊細な感情の揺れを松村さんがしていた。
松さんは受け取っていたように思う
構成の巧みさと本筋の深さに驚愕も‥今年外せない邦画の代表作に
(完全ネタバレですので必ず鑑賞後にお読み下さい!)
(レビューが遅くなりました、スミマセン‥)
(正直に言うと、坂元裕二さん脚本の連続ドラマはメタファーの過剰さと本筋になかなかいかないまどろっこしさで最近は私的は苦手な作品の方が多かったのですが)
今作の映画『ファーストキス 1ST KISS』は、構成の巧みさと本筋の深さにとにかく驚かされました。
今年外せない作品で今年を代表する邦画になることは間違いないのではと早くも思われています。
今作はどこを切り取っても凄さが垣間見えるのですが、例えば、舞台美術スタッフの世木杏里(森七菜さん)が、<過去と現在と未来のミルフィーユ>の話をする場面がその1つに当たると思われます。
もちろん、世木杏里が話した<過去と現在と未来のミルフィーユ>の話は、この映画そのものの構成の話であり、主人公・硯カンナ(松たか子さん)が15年前の過去に戻った時に、硯駈(松村北斗さん)とかき氷屋の前で話す内容の伏線になっています。
ところが一方で、世木杏里が中学生の時に<過去と現在と未来のミルフィーユ>のSF小説を書いたというエピソードは、世木杏里が後に、違和感なく演劇のスタッフになったと思わせ、そこに至る世木杏里の人生の道筋を観客に想像させる表現場面にもなっているのです。
この1つのエピソードから、人物背景や他の人物や場面に様々繋がって行く物語構成の重層性は、今作のあらゆる場面にちりばめられていたと思われます。
例えば、テレビ局プロデューサー・田端由香里(YOUさん)らが、主人公・硯カンナのマンションの前で、硯カンナの夫・硯駈が駅のホームで自らの命を顧みず赤ん坊を救出した件に関するドキュメンタリー番組の許諾を、主人公・硯カンナから取ろうとしてる場面にもそれが当たると思われます。
もちろん、テレビ局プロデューサー・田端由香里が番組の許諾を取ろうとして話している”夫婦の愛”の美談のコンセプトは、現実は主人公・硯カンナと夫・硯駈は既に夫婦関係が破綻していたので全くズレ切っていて、(昨今言われている)浅いTV局などのメディアへの皮肉として伝わるのが、この場面の趣旨だと思われます。
しかしながら、ズレ切った主張でも、マンション入り口前で足止めされながらでも、必死にストーリーボードを見せながらドキュメンタリー番組の趣旨を説明しているテレビ局プロデューサー・田端由香里の背後に、この時までに田端由香里がやってきただろうテレビ局内での会議や準備の積み重ねの労苦が垣間見えるのです。
つまり今作の映画『ファーストキス 1ST KISS』は、些細なちょっとした場面でも、そこに出て来る登場人物を主要人物を引き立たせるための道具のように蔑ろに扱っていないのです。
そして、出て来る登場人物はほぼ全て、背景を想像させる生きた人物として存在し登場しているのです。
例えば、硯カンナの夫・硯駈がホームでの救出劇で亡くなった後に、天馬里津(吉岡里帆さん)が主人公・硯カンナを訪ねて来る現在の場面があります。
天馬里津は、かつての硯駈の恩師である天馬市郎教授(リリー・フランキーさん)の娘であり、本当ならば硯駈と結婚したのは自分(天馬里津)の方だった、自分なら硯駈を死なせなかったのにと、最近すれ違った時に硯駈の襟が黄ばんでいた話をしながら、硯カンナに対して批判的に話をします。
そして主人公・硯カンナも、そうかもしれない、自分と結婚していなければ硯駈は死なずに済んでいたのではないかと、天馬里津の話を受け止め、その後の過去に戻った展開もあった場面です。
しかし、硯駈が恩師の天馬市郎教授の娘である天馬里津と結婚しなかったのは、硯駈が主人公・硯カンナと出会ったからだけが理由ではありませんでした。
硯駈の恩師であった天馬市郎教授は、一見人当たりが良さそうで知識も深く、当然、硯駈が引き続き恩師として従っても良さそうな人物として描かれています。
しかし、学会の準備での細かい天馬市郎教授による硯駈への苦言は、天馬市郎教授と硯駈との関係性のほころびを現わしていたように思われます。
硯駈はちょっと変わった感覚の持ち主で、そのことは15年前の過去の場面でも垣間見せていたと思われます。
そしてこのまま行けば、(学会準備で示されたような)常識的な考えを無意識にでも強く促す天馬市郎教授との硯駈の関係は、破綻していただろうとも想像がされるのです。
つまり、硯駈が亡くなった後の、現在での主人公・硯カンナと天馬市郎教授の娘・天馬里津との対峙の場面は、硯駈と天馬市郎教授とのもしかしたらあったかもしれない並行世界での(結局は破綻していただろう)対峙を想像させる場面に、実はなっていたのです。
ここに上げた場面に限らず、今作の映画『ファーストキス 1ST KISS』は、あらゆる場面でそこから様々な人物や場面につながって立ち上がる、複雑な構成がそこかしこになされていたと思われました。
この作品の脚本構成は、考える限り最高点で見事な構築だったと言わざるを得ないと思われました。
その上で、本筋である、主人公・硯カンナと夫・硯駈との、過去と現在の描写の深さも素晴らしさがあったと思われました。
主人公・硯カンナは、実はちょっとクセある人物として造形されています。
硯カンナは現在、舞台の美術スタッフとして働いているのですが、舞台出演者に対して裏で割とあけすけに辛辣な事を言っていたりします。
舞台の出演者のペットの現場への持ち込みに批判的で、硯カンナ自身も犬が苦手で、15年前の過去に戻った時には大型犬に囲まれて大変な目に合ったりしています。
この主人公・硯カンナの少し人とは違うクセある性格は、こちらもまた周りとは少し変わった感覚の持ち主の硯駈にとって実は勇気づけになっていたと思われるのです。
主人公・硯カンナのクセあるあけすけな言動は、人とは少し違う硯駈の存在を肯定し、硯駈が主人公・硯カンナに好意を寄せ結婚に至るのは、全く持って必然だったとも思えるのです。
硯カンナの方もまた、クセある自分がそのまま肯定され、少し変わったところはあっても誠実さある硯駈に惹かれたのも必然だったと思われるのです。
そして一方で、主人公・硯カンナのクセあるあけすけな言動はまた、コインの裏表の反転のように、あけすけだからこそ硯駈を傷つけ追い詰めて行く要因にも、その後なって行ったと考えられるのです。
この主人公・硯カンナと硯駈とが互いに惹かれ合う理由と、互いに溝が出来て断然して行く理由とが、コインの裏表で同じだというのも、この作品の深さと凄さがあったと思われます。
そしてこの事は、夫婦の(本当は修復可能かもしれない)ちょっとしたことでの亀裂が、深さを持って普遍的に表現されていたとも思われるのです。
なので事情を理解した15年前の硯駈は、逆にちょっとしたことでの夫婦関係の修復にその後挑戦することになります。
その後、結局は大きな運命の結論は変わることなく映画は終わりを迎えます。
しかしながら、主人公・硯カンナと夫・硯駈の2人にとっては、重要な修復がそこでは実現していました。
1観客としては、本筋の主人公・硯カンナと夫・硯駈の主要な2人の関係性の描写においても、深さを獲得している素晴らしい作品だと思わされました。
映画作品において、脚本物語構成の厚みがある優れた作品も少なくても存在しますし、一方で、本筋の主要人物の関係性の深さがきちんと表現されている優れた作品も存在していると思われます。
しかしながら、脚本物語構成が分厚いままで、かつ本筋の主要人物の深さが同時に表現されている作品は、めったにお目にかかれないのではないかと思われるのです。
しかも今作は、実話ベースでないほぼ全くのフィクションの映画であり、それでいてこのレベルの構築の厚みと人物描写の深さある作品は奇跡に近いのではないかと、僭越思わされました。
よって私的には今回の点数となりました。
おそらく今年の邦画の代表作になるのではないかと予感がしていてます。
今作の映画『ファーストキス 1ST KISS』は、その上で、クセある主人公・硯カンナや人とは少し感覚が違う夫・硯駈だけでなく、少し普通とは違う人物の存在をそれぞれで肯定しようという根底が流れているようにも感じました。
それは、一見すると否定的に描いてるように思える天馬市郎教授やテレビ局プロデューサー・田端由香里も、(演じているリリー・フランキーさんやYOUさんの表現と相まって)実にある一面ではチャーミングに肯定されて描かれていたと思われました。
ところで映画のタイトルにもなっている『ファーストキス 1ST KISS』ですが、映画の最後に15年前の過去で、主人公・硯カンナと硯駈が交わすキスは、2人にとって硯駈のファーストキスでありながら、硯カンナにとってはラストキスでした。
この重層性も、今作の最後の感動をその後の2人の歩みを象徴した場面として高めていたと思われます。
この運命の厳しさを踏まえた上の人間賛歌とも思える今作が、普段ウェット気味とも思える坂元裕二 脚本に、さばけたドライ感もある塚原あゆ子 監督の演出により、間口の広さと構成の厚みと主要人物描写の深さを併せ持った作品として、世に公開された事は、素晴らしさ以外になかったと、僭越思われました。
リアルな夫婦
『ファーストキス』観てきました!
主人公と同世代の既婚者は、きっと色々共感できる部分があるんじゃないかな〜と思いました。
倦怠期を迎えて離婚寸前の夫婦が、タイムリープで過去に戻るっていうストーリーなんだけど、「若い頃に戻ってまた夫に恋する!?」みたいな展開は、現実にはなかなか無いかも(笑)。
でも、非現実的ではあるんだけど、坂元裕二さんの脚本が本当に素晴らしくて、長年連れ添った夫婦の空気感がすごく出てて、引き込まれちゃいました。
あと、松村北斗さんの40代の男性を演じる時の、ちょっとした咳払いとかが、妙にリアルで、「うちの夫もこんな感じ…!」と思ったり(笑)。松村北斗さん、これからもっと活躍しそうな役者さんですね。
全体的に、笑えるところもあれば、考えさせられるところもあって、すごく面白かったです。夫婦の在り方を少しだけ見つめ直せる映画でした!
会話劇
倫理問題をスルーした、よくできた恋愛映画です。
今まで観た中で1番好きな映画になりました
普段映画見ないけどすごく話題になってたので気になって見に行きました。若い頃と40代になった時の2人の演技もすごくてリアルすぎて結婚に対する味方が少し変わりました。後半は自然と涙が出てきて止まらなかった🥲考察も楽しい映画だから見る度に違う気づきを得られそう😌
掛け合いのような会話が良かった。
離婚前の2人、食卓もバラバラだし寝るところ別になり、お互いに関心がない、離婚前のリアルな夫婦を再現できているような気がして、俳優の演技力はもちろん、生活感のある雰囲気が伝わる部屋のセットも素晴らしかった。
離婚前の描写で、朝ごはんにカンナはパン派、駈はご飯派というわかりやすい好みの違いにすら、“相性が合わない夫婦なんだろう”と思わせたのですが、15年後に同じ描写で、同じ食卓で朝ごはんを仲良く食べているシーンを見て、同じテーブルでにこやかに食べているだけで、好みが違ってもとても素敵に見えるなあと、、、
むしろ、好みが違うけど同じ食卓で食べているのは、お互いの好みを受け入れている、素敵な夫婦に見えた。
夫婦とはこういうことなのだと思った。
タイムトラベル系はツッコミどころが多いこともあり、一度気になると醒めてしまう気がするが、この映画は心地よかった。
松村さんの朴訥とした演技が、愛おしく誠実でとても良かったし、松たか子さんのサッパリとした綺麗さに見惚れ、気持ちの良い映画だったなあと思いました。
初めて何回も見たいと思った映画
映画館はちょっと苦手で1人で見に行くのは人生2回目くらい。
Xでの高評価を目にして観に行ってみました。
導入部分はタイトルと予告から予想していたのとはちょっと違いましたが、タイムリープのルールや主人公カンナの心情の変化などが分かりやすく、また松たか子さんと松村北斗さんの演技が素晴らしくて年齢差を一切感じず楽しく見る事ができました。
松たか子さんはCGを使って若かりし頃を演じた松村北斗さんは体重増加やメイクで現在の44歳の役を演じていらっしゃるとのことですがどちらもとても自然でした。
離婚するほどお互いを思いやれない関係になってしまった2人だけど、やっぱり心の奥では結婚した当初の気持ちが消えないし情もあるしでタイムリープをきっかけに夫のために奮闘する姿がリアルだったし、付き合い始めの自分に好意を抱いている若くて素直な夫に会いにタイムリープする度オシャレで綺麗になっていくカンナの姿も微笑ましく思いつつ共感出来てとても良かったです。
泣き所はやはり松村北斗さん演じる硯駈が残されたカンナに宛てて書いた手紙のシーン。
松村北斗さんの声が、本当に良い。「すずめのと戸締まり」でも声の演技が素晴らしいと評価されていましたが、40代の声も素晴らしい説得力でした。
タイムリープする度少しずつ変わる未来(現在)が部屋のオブジェに貼られたレシートや付箋であらわされていますが、1度見ただけではちょっと覚えていられず...できれば数回観たい。DVDも欲しいな。と思いました。
うちは子供がまだ小さくて何度も1人で映画館に行かせてもらったり子供も一緒に映画館で観たり夫と2人で観に行くというのは難しいので、DVDが出たらぜひ夫にも観てもらいたい!
現状の夫婦関係に満足はしていますが、この映画を観たら私たちの未来も更に良いものになるのではないか・・・と思います。
結婚している方はもちろん、今後結婚するであろう若い人やカップルにも是非観てもらいたいおすすめの映画です。
松たか子さんの可愛さを愛でるための映画かな?
松たか子さんの可愛さを愛でるための映画だったかな。松たか子さん、好きだから全然オッケーだけれど。
いわゆるタイムスリップ物。
面白いけれど、そんなに心にずんっと残る映画ではない。私が珍しく泣かなかった。
夫婦関係、結婚生活が1つのテーマ。それについては、考えさせられるところはあった。
もう1つのテーマは、生きるということは何か、人生とは何か。こっちは、あまり深く描かれていなくて、ピンとはこなかった。
松村北斗くんの演技は良かった。
最近のタイムスリップ物は、タイムパラドックスについて、真剣に検証しなくなっている傾向がある気がするかな。
タイムスリップは、物語のベタな技法の1つとして定着して、野暮な科学的考察は脇に追いやられたということなのだろう。
やり直したかったことは
結婚して15年、すっかり倦怠期になった夫婦。ある日夫が事故で亡くなったが、ひょんなことから15年前にタイムスリップする術を見つけ、若き日の夫と出逢い、カンナの心にも変化が訪れ…といった物語。
感動は勿論、SFチックでコメディも散りばめたドラマ作品。
現代では倦怠期を迎えていたものの「やっぱりこの人が好きだ」という気持ちの再発見は素敵ですね。
今は45歳のカンナが、29歳の駈の気を引こうと一生懸命になっている姿は、乙女チックでほっこりしますね。しかし松さん、コミカル演出のつもりでも、どうやったて可愛くなってしまうウィンクが(笑)
兎に角終始、なんやかんやで相手の事を本当に好きなんだなと感じれるし、かと思いきや所々にお笑いを交えているのが素晴らしいですね。かき氷の列の件は全部面白かったなぁ。後ろの奴ほど馬鹿って…w
タイムリープものにありがちなテンポの悪さや飽きも全然なく、常に次の展開が気になって引き込まれるし、何よりこの行動の結果、駈の未来というか正義が変わって欲しいような、そのままでいて欲しいような…。
そんな複雑な気持ちに苛まれながらも、2人の愛の姿にずっと心が満たされる傑作だった。
僕がやり直したいのは…って(涙)‼
とはいえ終盤は、結婚当初のカンナの可愛さにばかり目がいってしまっていたワタクシですが(笑)はぁ~あ…こんな人と近所に愛されるパン屋でも始められたらなぁ…。
語彙力が無くなるとはこのこと
本当に良かった
めっちゃいい映画だった
普段なく人間では無いけど何度も泣いたし
終わった後も思い出し泣きしそうになった
こういう映画で1番好きなのが"花束みたいな恋をした"なんだけど、脚本家が一緒で納得した
そして、松たか子と松村北斗の演技に魅了された
感想が出ない
語彙力が無くなるってこういうことなんだな
無理くり感想を言うとするなら
松たか子が可愛いすぎた
ドジっ子キャラというかお茶目キャラというか引き込まれる
47歳とは思えない魅力にびっくり
そして松村北斗くん
SixTONESだとは思わなかった
演技上手すぎた
か弱そうで大人しいキャラに合いすぎてる
だいたいネームバリューで出てるジャニーズ系の人とかの演技は普通の演技は普通なんだけど、泣く演技だったり重い演技がどうしてもチープに見えがち
だけどこの子はそこが全く無くて違和感一切ない魅了される演技だった
道路で未来かんなと過去かけるが話すシーンの
かんなの「ないないない!」のくだりの後
「すいませんでした」と言うシーンの表情、トーンは誰が見ても素人の演技じゃない
頑張ってこれしか出てこなかったけど
それだけ感情移入できて没入感があり満足度の高い濃い内容の映画でした
もう一度二度と行きます!
ほんとに感動した
ありがとう
正に、君たちはどう生きるか
すれ違って、嫌いなところばかりが見えて、離婚したけど、憎んだわけじゃないから救えるなら救いたい。そんな思いからタイムリープを繰り返すうちに、若い頃のカケルの良さを認識し直し、若い頃の好きだった気持ちを思い出すカンナ(松たか子)。もう一度恋に落ちたと言った方が良いかもしれないが、彼を救いたくて、ひどい言葉をかけて未来に帰る姿に涙。
そして、死を避けられないとしても、気が合うから好きだから、やっぱり結婚する、そう決めるカケル(松村北斗)の愛情深さ。変わった未来で愛情深く過ごした2人の尊い時間にまた涙。遺影がきっと変わってるんだろうな、と思っていたけど良い笑顔になっていて、正に、どう相手に接するか、どう生きるかで、こんなにも変わるのだなと実感。
恋愛はお互いの良いところを見つけて行き、結婚はお互いの嫌なマイナス面をぐりぐりつついていくものって、ちょっとわかる気もして笑っちゃったけど、そんな悲しく恐ろしいことを言わずに、思いやりと愛情を持って日々過ごしたいと思わせる映画です。
主演のお二人の演技力が素晴らしかったです。
それにしても、年取った松村北斗がふくよかになってるのは、綿詰めたりでできるんでしょうが、若い時の松たか子は?!どうなってるの? 若い時の姿が若干の加工で、44歳が老けメイク?? そこも知りたいですw
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