「大日本帝国村」嗤う蟲 レントさんの映画レビュー(感想・評価)
大日本帝国村
田舎でのスローライフにあこがれて移住してきた杏奈、輝道のカップルが異様な村で恐ろしい体験をするという物語。
昔ながらの閉鎖的なこの村では住民同士は皆が顔見知り。あらゆる情報は口伝えで瞬く間に村中に広がるため、村での出来事を知るにはインターネットなど不要なほど。住民同士の関係はそれくらい緊密だった。
昔大規模な土砂災害で村の存続が危ぶまれたとき、現在の村長の尽力により村は復興を遂げ今では彼を頂点とした文字通りの村社会が築かれていた。
一見、温和で人当たりがいい村長は新参者の二人にも優しく接してくれ、いろいろアドバイスもしてくれる。村人も少々おせっかいが過ぎるもののこれも田舎らしい人間関係だとして二人は受け入れるのであった。
しかし隣の住人である三橋が村八分にあっているさまを目の当たりにしたのを機に徐々にこの村への違和感が募り始める。
三橋たち夫婦は輝道たちよりも前にこの村にやってきた移住者だった。そんな彼らが自分たちとは違い村八分にされている。その理由を輝道は徐々に知ることとなる。
三橋の代わりに国から許可を受けた大麻栽培の手伝いに誘われた輝道は自分の仕事を理由に断る。しかし会合の帰りに道端に倒れていた三橋を誤って轢いてしまい弱みを握られた彼はもはや断れなくなる。実は大麻栽培は違法な取引のために行われていたのだ。また輝道は三橋をひき殺したと思い込んだために大麻に手を出しさらに泥沼に入り込んでしまう。彼の異変に気付いた杏奈は大麻栽培の事実を暴露し村から逃げ出そうとするが。
土砂災害で甚大な被害を受けながらも国から見捨てられた村、昨年震災被害を受けた能登半島を思い出した。国を頼ることもできず自分たちで村を復興するには違法な大麻栽培に手を染めるしかなかったというのは見ていて切ない。
祭りの炎に大麻草を投げ込み村人たちを中毒にした隙に逃げるというのはイーライ・ロスのグリーンインフェルノを参照したのかな。
この村を覆う同調圧力、村長を絶大なる指導者とした全体主義的な村の体質、隣組のように密告し合う村人たち、意にそわない者は村八分の上で抹殺、特攻隊員にヒロポンを与えていたように人心を操るために大麻を与える、空を不気味に飛び交う烏の群れは特高警察、靖国神社に奉納する玉串の材料となる大麻草の栽培、男系男子を切望する村人たちの姿。なぜだか戦前のある国を連想してしまった。
本作の結末は村から逃げ出した二人が警察署に駆け込み事情を説明すると、警官が訝しげに答える。おかしいなあ、あそこに村はないはずだけど。確かあそこにあった村は敗戦後廃村になったはずだけどと答える。
レントさん、共感&コメントをありがとうございます。輝道は確実に田久保に嵌められていますので、おっしゃる通り無実だと思います。まあでもクスリをやっちゃいかんですね。そこも嵌められているという、輝道の弱さが招いた結果とも思います。そんな中、深川麻衣の杏奈は強かったですね。目の演技は忘れられません!