ココでのはなしのレビュー・感想・評価
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泉さんの靴下
吉行和子さんお目当てでの鑑賞。
てっきり大家さんの役だと思ってました。「雪子さんの足音」を以前に観たもので❤️
東京の三ノ輪(ほぼ浅草吉原あたり)にある古民家ゲストハウスのCOCOが舞台。オーナーの名前は飯友博文。バイク旅好きの独身男性。自由人。うらやましい。40歳過ぎてタイに渡ってプロボクサーを目指す映画の主役の人だった。名前の読みは「めしとも」ではなく、「いいとも」(笑)
舞台は2021年のコロナ禍。
吉行さんの役、泉さんはCOCOの住人で果実酒係り。オーナーの母親の幼馴染み。とは言うものの、中国残留孤児の身の上の設定。オーナーの優しさ。ハルピン生まれの宝田明の最後の東映映画「世の中に絶えて桜のなかりせば」で妻役で共演してた吉行さん。ということはオーナーの母親は両親と日本に無事に引揚げてこられた人なのでしょう。
この映画のロケ地は台東区下谷に実在する古民家ゲストハウス。海外観光客向け価格は国内旅行者の2倍、3倍以上に設定されており、楽天トラベルでは戦時中の兵舎を思わされる男女混合木造ベッド部屋でも予約はまったく取れない盛況ぶり。今や観光立国日本の屋台骨。そのへんはうらやましいかぎり。
この映画の主役はおにぎりだと思う。日本のソウルフードNo.1。苦しいときも嬉しいときも我々はおにぎりとともにあった。おそらく泉さんは中国人の養親におにぎりと引き換えにもらわれたのかもしれない。
さつまいものおこわおにぎり。大葉味噌󠄀のおにぎり。オレンジ色の具のおにぎりなどなど、オーナーと詩子の出会いもキャンプ用品で焼いた焼きおにぎりだった。
「逃げてもいいんじゃない」ってオーナーは無責任に言うから、詩子は東京にでてきちゃう。詩子のいわば義父のモト冬樹がふざけないでいい味出してた。散骨ならぬ散髪。烏帽子岩が見えていた湘南海岸。徘徊おじいちゃんにはバスから叫んでも馬耳東風。
コロナで営業自粛のバッティングセンターバイトの彼。パラリンピック選手とその支持者にアゴで使われて引っ越しの手伝い。このあたりはなんかへんだよ日本人と気づかせる設定なのか?中国人のオタク女子は日本のアニメ文化の好きな自分を優先する人生選択をするし、親切に世話を焼いてくれる男友達をあっさりあしらう。
なんだか、映画の雰囲気自体は悪い感じはしなし、ほんのちょっとの親切が一番大事なのは伝わったけど、日本人はずーっとボケーっとしてなと言われたみたいな感じもしてしまった。
かえってアセるのよ。
今どきの映画人と現実の温度差を感じてしまって、ちょっと残念な感じも。
最後の方で、縁側で泉さんとオーナーが自家製うどんを足踏みする場面は高橋一生と岸井ゆきののNHKのドラマ「恋せぬふたり」を思い出していた。シェアハウスの話でもあるので。泉さんの靴下に萌え〜❤️
仮宿のお結び
ゲストハウスに集った人々の、ささやかすぎる交流の話。
とはいえ、中での話は思いのほか少なく、外での出来事を持ち寄って晩酌ついでに話す程度。
他のキャラの話が“家族”に起因しているので、存くんの話だけやや浮いていた印象。
バイト先の廃業も、国助から言われた「引きずるな」も未回収で終わってしまうし。
ワンさんの話は安易にくっつかないとこも含めて好き。
付き合うかどうかは別として、あの二人の関係は続いていくんだろうな、という最後の会話も。
ただ、カタコト感が強かったのが最初だけで統一感に欠けたのは気になった。
他人しかいなくなった村で、徘徊老人の面倒をみてた詩子はそりゃ逃げたくもなる。
一房の髪だけでもと母の願いを叶える優しさがあるだけに、余計にキツかったろう。
道夫くんはオマケ程度だが、彼のコミュ力が羨ましい。
大きなことは起きないし、小さな変化にどれだけココが関わったかにも疑問が残る。
泉さんはポスターにいる割に存在感が薄く、語りにも新鮮味は感じなかった。
でも、全体を包む仮宿の心地よさは十分伝わる。
最後に「やりとりは続いてる」と言ってたし、あの場所が繋いだ関係の輪は連綿と続いてほしいな。
(オーナーの名前も『いいとも!』だし。笑)
愛らしい映画。それだけに登場人物たちの背景が気になる。
まあ、人は、自分を受け入れてくれる心優しい人たちとともに暮らせる場所を常に求めがちで。それが下宿だったり、アパートだったり、シェアハウスだったり設定は異なるが、似た題材の作品はたくさんある。
「ココでのはなし」に少し違った点があるとすれば、場所そのものや場所のオーナーに神通力があるわけではなく、人生に少し疲れてしまったり先が見えなくなってしまった者たちが身を寄せあい、前に進む力を自発的に取り戻していくところにある。つまりエンパワーというよりも休息をもたらす効果がCOCOにはあるということなのだろう。
だからCOCOでの生活感は規律的ではなく全体に緩く、それが愛らしい。お客さんは保とシャンルーのケースが描かれるが、どちらもギリギリまで追い込まれているという感じではない。(シャンルーの場合は外国人差別が背景にあるのでそんなに簡単な問題でもないような気もするが)
ただ従業員である詩子のケースは、彼女を地元から遠ざけた田舎の閉塞感が背景にありこれだけはかなりえげつない。道に迷った人を家に泊めたら近所が怒鳴り込んでくるなんてどんなクソ田舎かよ。思うに詩子のファションを含めた存在感が田舎では浮いていたっていうことなんでしょうね。
そう、詩子のエスニック調の衣装がとてもおしゃれです。演じる山本奈衣瑠さんによく似合う。ここも見どころの一つです。
おにぎり食べたくなる
シネスイッチ銀座で、予告編の時からおかしいなと思っていたけど、本編始まって数分ほぼ聞こえない。
どなたかが言いに行ってくれて最初からやり直し。
高校生の頃、映画の冒頭でフィルムが溶けたことがあったけど、なんだか久々の経験で少し懐かしい。
それぞれの境遇は穏やかではないものの、ココのアットホームさと、泉さんの雰囲気が全体をゆったりとした空気感にまとめている。演じる吉行和子さんの声や佇まいが映画にぴったり。ヘアピンも可愛らしい。
夜は他人なのに旧知の仲のような感じだったのが、朝になったら元通りの不思議な距離感がなんか好き。
主演の山本奈衣留さんは『SUPER HAPPY FOREVER』に続いて、ゆる〜い映画。
シャオさんを日本人の女優さんが演じるのは良いのだけど、カタコトとまでは言わないけど、言葉のチョイスやリアクションも日本人すぎた印象。
近年の外国人の就職問題を扱うのはいいのだけど、とってつけた感が少し残念なところ。
ラストは少し心配していたけれど、杞憂に終わって良かった。
みんな迷子
東京都内の下町に佇むゲストハウス「COCO」のオーナー他2名とゲストたちの揺らぐ心と交流の話。
元旅人のオーナー、住み込み従業員、オーナーの知人でずっと住んでる婆さんのいる「COCO」が舞台ではあるけれど、引越しの手伝いを頼まれてた青年、東京に部屋探しに来た中国人、そして住み込みの従業員のという3人の悩める若者の外での出来事を軸に、各話形式で悩める若者の機微をみせていく展開で、生臭さのない深夜食堂的な感じとでもいうところかな。
悪い人は出てこないしさらっとしたつくりだから、その分深みも足りないけれど、ほんのり温かみがあってなかなか面白かった。
善い人たちばかり
何だか···時間が空いたので、暇つぶしの映画を観てしまった感。
私は、映画をそういう風には絶対に観たくはないので、いつもちゃんと楽しみに着席する。この日もそうだったはずなのになぁ。
内容は、すごくよく理解出来る。
登場人物たちの気持ちについては、同じ体験をしたわけではないので、よく分かるとか同じ想いだとは言わない。
敢えて、想像は出来るし、想いを寄せることは出来ると言おう。
しかし、みんな善い人だな。ホンワカしてる。
結局、しがらみの無い、善い人が迎い入れてくれる場所で、素直な自分で過ごす時間を持てれば、人は少し前を向けるということかな。みんな少し元気になって良かったよ。
大体、根が意地悪なヤツは、ココには居られないだろう。この作品をひねくれた眼で観た人がいたなら、ちょっと寂しいね。
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