たべっ子どうぶつ THE MOVIE : インタビュー
松田元太にとって“芝居は快感” “アイドル”らいおんくん役を通じて考えたこと

誰もが“まさかの映画化”と感じた作品が、遂に全国公開を迎えた。
1978年の発売開始から世代を超えて愛され続けるギンビス社の動物型ビスケット「たべっ子どうぶつ」を3DCGアニメーションとして映画化した「たべっ子どうぶつ THE MOVIE」(5月1日公開)だ。
物語の舞台となるのは、おかしと人間が仲よく暮らすスイーツランド。そこでは、歌って踊るスーパーアイドル「たべっ子どうぶつ」が大人気だった。しかし、この世の全てのおかしを排除し世界征服を狙う最凶の“わたあめ軍団”によって、ぺがさすちゃんが捕らわれてしまった!! 大切な仲間のため、モフモフカワイイだけで戦闘力ゼロのたべっ子どうぶつたちは、1000%不可能な“ぺがさすちゃん救出ミッション”に立ち上がる。
たべっ子どうぶつたちの“リーダー”らいおんくんの“声”を担当したのは、「Travis Japan」の松田元太。「ライオン・キング ムファサ」のタカ(超実写プレミアム吹替版)に続き、2度目のライオン役――インタビューでは、キャラクターに“命を吹き込む”作業でのこだわりや、芝居との向き合い方についてたっぷりと語ってもらった。(取材・文/映画.com編集部 岡田寛司)

(C)ギンビス (C)劇場版「たべっ子どうぶつ」製作委員会
●「たべっ子どうぶつ」映画版は想像の斜め上!?「きっと大人の方々は侮っていると思う」
――まずは、お菓子「たべっ子どうぶつ」についてお伺いさせてください。松田さんにとって「たべっ子どうぶつ」はどのような存在でしたか? 身近なものだったのか、はたまた遠い存在だったのか。
身近な存在でしたね。何かのご褒美としてもらえるお菓子でもありましたし、スーパーに並んでいると、思わず買って食べたくなるような……見るだけでもハッピーになれるお菓子でした。
――「たべっ子どうぶつ THE MOVIE」に参加されたことで“見え方”が変わった部分はありますか?
見え方については、そこまで変わってはいないんです。これまでも、これからもずっと好きです。らいおんくんの“声”を担当することになって思ったのは、こんなにもたべっ子どうぶつたちについて深く考えたことはなかったなと。色々なギャップを感じることもありましたが、やっぱり“可愛さ”は変わらない。一層好きになりました!

(C)ギンビス (C)劇場版「たべっ子どうぶつ」製作委員会
――今仰られたように、多くの人にとって、これまでらいおんくんがどんなキャラクターなのかを考える機会はなかったんですよね。本作の面白い部分は、たべっ子どうぶつたちのキャラ設定だけではなく、物語もゼロから生まれているところ。“完全オリジナル”の脚本を読まれて、どう感じましたか?
想像の斜め上というか……もちろん子どもが楽しめる物語なんです。でも、きっと大人の方々は侮っていると思うんですよね。僕自身も、最初はそうでしたから。想像のできる物語が始まり、予想できるオチがあって、起承転結も緩やかなイメージ。そんなストーリーを予想していたら、全然そんなことがなくて。ウラをつかれたというか、やられたなって。超面白い!ってなりましたから。
心が綺麗な人にはとてつもなく刺さって、心を見失っている人には自身を見つめるきっかけにもなるほど。それほどのターニングポイントになってしまうぐらいの面白い作品なんです。絵は可愛らしいのに、たべっ子どうぶつたちの“言葉”はなんだか深くて、重みがあって、人間として大事なことをたくさん伝えてくれている印象があります。
――“カワイイ”だけで突き進んでいく作品なのかな?と思っていたんですが、実は“良い意味”で裏切られますよね。
そうなんです。スタッフの方々の“頭の中”は本当にすごいなって思いましたから。この作品に出合えたことに本当に感謝していますし、なによりらいおんくんから“教わること”もたくさんありました。

(C)ギンビス (C)劇場版「たべっ子どうぶつ」製作委員会
●「ライオン・キング ムファサ」に続き、2度目のライオン→心の余裕は?「全くなかった(笑)」
――らいおんくんを演じるにあたって、どんな準備をされたのでしょうか?
今回は、子どもから大人まで楽しんでもらう作品ということを頭に入れながらの作業でした。らいおんくんはリーダーなんだけどわがまま、でも熱い部分も持っていて――色々な要素を“声”で表現する時には、耳で聞いてもらう時に嫌な気持ちにさせないことを心掛けていました。可愛らしいんだけど、リーダーでもあるというイメージを持ちつつ、監督のアドバイスも参考にしながらの作業でした。
それと、アニメ作品では、主人公がどのようなキャラクターなのかによって、他の仲間たちの軸も左右されるという印象がありました。ですから、その点には真摯に向き合って、小さな子どもたちに楽しんでもらう。さらにいえば、大人の心にもセリフで“何か”を届けたいという思いがありました。

(C)ギンビス (C)劇場版「たべっ子どうぶつ」製作委員会
――“声”のお仕事は「ライオン・キング ムファサ」に続き、2度目。さらに“ライオン”が続くという、ユニークな流れとなっていますが、今回の仕事、心の余裕は……?
全くなかったです、1ミリも……(笑)。「ライオン・キング ムファサ」の時もそうだったんですけどね。とにかくしがみつきながら、だけども楽しみながら、自分にしか出せないらいおんくんを表現したつもりです。それともともと声優の方々へのリスペクトがとても高くて、今回も“レジェンド”の皆さんがいらっしゃって――もう緊張まみれです(笑)。収録をご一緒することは叶わなかったんですが、完成した作品を見ると、改めて“凄さ”を感じました。
――声優業を一度経験していたからこそ“プラス”になったこともあったのではないでしょうか?
たとえば、通常笑う時には「あはは」とか「えへ」って言わないですよね? そういう表現を恥ずかしがらずに、一旦全部トライしてみる。その上でNGだったら、教えて頂きつつ、修正をしていくというオープンマインドな感じで声を入れていきました。らいおんくん役は、セリフの量もかなり多かったので達成感もあったんですが、やっぱり「こういう表現もできたかな?」と考える部分もあったり。新たにトライする機会があれば、(さまざまな表現に)挑戦してみたいです。

(C)ギンビス (C)劇場版「たべっ子どうぶつ」製作委員会
●らいおんくんとは“アイドル”という共通点 ファンの存在が“救い”
――らいおんくんは、松田さんと同じく“アイドル”でもあるんですよね。共通点はありましたか?
まっすぐなところは似ているかなと思いつつ、僕はここまでまっすぐじゃないなと…(笑)。アイドルという環境は同じですが、たべっ子どうぶつたちはプライベートジェットを所有しているじゃないですか。いやぁー、売れているなって。こんなにお金があっていいなと……(笑)。
――(笑)。注目して欲しいシーンはありますか?
らいおんくんとぞうくん(CV:水上恒司)の掛け合いですかね。ほっこりする場面もありますし、何よりぞうくんは、ひとりで突っ走っちゃうらいおんくんをしっかりと支えてくれる存在なので、その点にも注目して欲しいと思っています。
それとゴッチャンとのやり取り――個人的には「スネ夫との共演だ……!」と思っていましたから(註:ゴッチャン役は「ドラえもん」のスネ夫役でも知られる関智一)。
――らいおんくんとゴッチャンの凸凹バディ感も見どころのひとつですよね。ケンカはするけど“離れられない”。やがてはぶつかり合いながらも、力を合わせていく――まさに“腐れ縁”なのですが、松田さんには、そのような存在はいますか?
「Travis Japan」のメンバーとの関係性が近いのかな。もちろん喧嘩をすることもありますが、“離れたい”と思ったことはまったくないですよ。互いに高め合っていく関係性が近いのかもしれません。

(C)ギンビス (C)劇場版「たべっ子どうぶつ」製作委員会
――本作の完成披露試写会では「Travis Japanだけで世界を救いたい」と発言されて大きな歓声を浴びていました。本作はたべっ子どうぶつたちが「救う」物語でもあり、彼らの存在は人々の希望と勇気となっていきます。松田さんは「Travis Japan」の活動をしている中で「少しでも救いになれた」、もしくは「自身が救われた」と感じたことはありますか?
やっぱりファンの存在が“救い”ですよね。最近では、生放送の観覧席、外から撮影風景が見える場所に親子で来てくれる方々もいたりするんです。うちわに書いてあるコメントを見るだけでも励みになりますし、Instagramのコメントにも「顔を見るだけでも笑えます」ってあったり(笑)。そう思っていただけているだけですごくありがたいなと。そういう方々がいる限りは、まずは“自分が楽しんで届ける”ということが大切なのかなと思っています。
――うちわに書かれているコメントは、しっかりと見ていらっしゃるんですね。
はい、しっかり見ています。ただ、ちょっと角度によっては……光の反射でね……見えない時があるので、もうちょっと角度を調整してほしいなって時もあります(笑)
――(笑)。らいおんくんは喜怒哀楽激しめなキャラクターですよね。松田さんにとって、最も気分が上がる瞬間と、反対に下がってしまうのはどのような時ですか?
気分が上がるのは、お芝居をしている時です。やっぱりすごく楽しいんですよ。「快感」といえるほど大好きです。それとメンバーといる時間、ライブの最中――反対にライブが終わってしまうと、テンションが下がっていきますね。これは多分“燃え尽きている”んだと思います。


●芝居は快感――目指している“未来”も明かす
――「芝居は快感」、とても素敵な言葉です。何故そう感じるようになったのでしょうか?
「快感」の明確な理由はわからないんですけど。お芝居をしている時なのか、演じるまでの準備期間なのか、演じ終わった後の達成感なのか――しっかりとはわからないんですが、めちゃくちゃ気持ちいいんですよね。普段の自分ではない、けれども“自分”が考えたりもする。さまざまなキャラクターになりきって、自分ではない人生を短期間で過ごすことができる面白さ。そんな過程を経て生まれた作品を見てくれる方がいる。一緒に作る人がいる。そういうことを全部踏まえて「めっちゃ面白い、好きだ」って思うんです。
――「こうなりたい」という目標はあるのでしょうか?
色々な賞を獲りたいと思っています。国内だけに限らず、国外でも挑戦は必ずしていきたいです。
――そういう意味でも、実写ドラマや映画、洋画の吹き替え、アニメーションなどなど、非常に幅広い分野で活動を出来ている“現在”が、きっと“未来”へと繋がっていきますよね。
今の状況は、本当にありがたいです。この“幅”をきちんと保っていきたいです。自分のお芝居が、たくさんの方々の“何か”になれたらいいなと思っています。

(C)ギンビス (C)劇場版「たべっ子どうぶつ」製作委員会
――ちなみに“次”に演じるとしたら、どんな役を演じてみたいですか?
実写、アニメに関わらず参加していきたいですが、サッカーをずっと習っていたので“スポーツ関連”の役とか……あとは面白い“変なキャラクター”。
――“変なキャラクター”(笑)?
はい、僕自身が“変”なので――(笑)。