海の沈黙のレビュー・感想・評価
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半世紀以上生きてきた人向けの映画でしょうか
巨匠・倉本聰先生のこれが最後の作品かもしれないと勝手に考え、かなり意気込んで観に行きました。事前にある程度の情報は仕入れ、本木雅弘がどんな感じでこの映画に入ったのか、数少ない芸能界での友人である小泉今日子との共演、中井貴一や仲村トオル、清水美砂といったベテラン勢が脇をどう固めるのか、本木雅弘と同世代という設定を石坂浩二がどうさばくのか、観る前から身構えるような感じでした。
限られた時間で描き切るにはかなり無理があるんだろうなと思いながら、津山という天才画家の葛藤や渇望をもっと深く掘り下げた描写もして欲しいし、津山の元恋人で、現在の田村の妻である安奈の心の揺れ動くさまを丁寧に表現してほしかった。
刺青というある種特異的な世界観を醸し出しながら、津山が何を描きたいのかというテーマに結び付けていく流れで、天才でありながら世に認められないジレンマを贋作という手段で更に美的向上を図るという、もしかしたら本当にあり得るかもしれないと思わせる世界観を描いています。
安奈が津山に久しぶりに会ったとき、本木雅弘という役者が一瞬だけ二十歳の頃の顔をした気がします。その瞬間小泉今日子もまた若かりし頃のまなざしをした気がして、あの一瞬を観たいだけでもう一度映画館に足を運ぼうと思っています。
本木さんと小泉さんが盛り上がってほしかった
こんな感じのストーリーとは思わず…
結局、最後までストーリーに入り込めませんでした…
本木さんと、小泉今日子が再会したあたりから、睡魔に襲われ、就寝…。本木さんが血を吐くシーンで目が覚めました…
本木さんと小泉さんが、再会して、感情が高ぶったり、燃え上がったりするのかなぁと期待してたのですが、違いました。
本木さんは若い女の子に惹かれたり、いろいろと理解できない男性でした。
男性の幼さ、妬み、嫉妬、両親とのしがらみなどなど、いろんなこと盛り込んでるかんじ?
私にはちょっと無理でした。
病院のシーンも、異常をを知らせるアラームがなってるのに、モニターは異常無しだし、 そういうところも、冷めてしまいました
スルメのような味わい深い映画
昔を思わせる世界観に圧倒された2時間だった
冒頭から映画の世界にぐんぐん引き込まれた。
こういう時代あったなと思いながら鑑賞した。
昔風なのにとっても現代的なダウンコートやスマホ、AIという現代を思わせる単語がたまに出て来たりして鑑賞しながら時代を行ったり来たりしている気分になった。
モッくんの渾身の演技が脚本に花を添えた。キョンキョンも陰のある役をしっとりと演じていた。
観終わった後は不思議な世界観だなと思うだけだったのだが、余韻が冷めてしばらくしてから少しずつ繋がりのようなものや脚本家が言いたい事が見えて来たような気がする。
もう一度観たらもっと分かるのだろう。
津山は孤独な芸術家かと思いきや番頭がいたり、漁師やバーのメンツが病院や廃屋に駆けつけるシーンも。
ロシアンバーでバラライカ弾いていた外国人まで駆けつけていて、津山と一体どんな関わりがあるんだろうと想像。
主人公とスイケンや漁師、バーの仲間との繋がりが気になる。
邦画らしい邦画
海の沈黙
演技がどの方も素晴らしく、特に本木雅弘さん中井貴一さん清水美砂さんが素敵でした。幼い頃の記憶を思い海から炎を見つめるシーンは圧巻、感動し泣いてしまいました。倉本さんの作品の登場人物は演技を超えた「リアリティ」を持つから、本当に不思議です。描く人間の魂とは何か、それを追求する心こそが清らかな美、その中にも倉本さん作者本人の魂の美しさを感じました。
美は美であり何者でも無い。
表現する事の自由さや素晴らしさを忘れ、評価や価値ばかりを追ってしまう人間の悲しさ、本当とは本来の芸術の価値とは何か、作者が問いたい事はそこではなかったのかとも思いました。私の故郷の日本海が美しく映えまた、ラストに差し掛かるナレーションでのセリフが、一篇の詩に聞こえて言葉すら美しいです。
あざみを演じた菅野恵さんに現代的な魅力を感じました。
本木雅弘さんが最後キャンバスに向かうシーンはコンテンポラリーダンスの様に優雅です。
倉本聰先生、最後の映画等と仰らずに、また期待しています。
期待度○鑑賞後の満足度△ 令和の世に突然現れた昭和の亡霊みたいな映画。若い子はオジサンオバサンばかり出てくる映画だなと思いながら観てんだろうなと思いながら観てましたオジサンは。
①「今ごろ倉本聰でもないだろう」と最初は全く食指は動かず。
『やすらぎの刻』は配信で全話観ましたよ。でもそれは倉本聰作だからというより、自分の年齢からして、若い子達がひとつ屋根の下でワイワイしているドラマより老人ホームの話の方が最早身近に感じるのと、かつての銀幕のスター達ばかりが入居している老人ホームという設定が面白いと思ったから。
結局は庶民の感覚とは離れたユートピアの話で、かつて実生活で結婚していた浅丘ルリ子と恋人だった加賀まりこの間で右往左往する石坂浩二の姿が面白いだけのドラマでしたわ。
それなのに本作を観る気になったのはひとえに清水美沙が出ていると知ったから。
若い頃からこの子(といっても9歳差ですが)日本映画界の中でもっと大きな存在になるだろうなと期待していたのに、残念ながらそうはなりませんでしたね(アンジェラ・バセットと同じく)。あまり欲がなかったのかしら。
でも本作でも唯一異彩を放っていたし。歳よりも若く見えていたし裸体シーンもおそらくダブルではないと思うんだけど。
でも女性像自体は古くさい。『クライング・フリーマン』か?
②最後にあんな分かりきった(まあ陳腐な)台詞を聴かされる為に2時間付き合ったと思ったらやや脱力。
あそこは台詞ではなく“画”で観せるべきだろう。
それに鬼才で孤高の画家であれば、あの台詞は彼に言わすべきてはなかったと思う。既に同じ趣旨のことを先に中井貴一が言ってるわけだし、まだ通俗的な世界と関わりのある第三者に言わせるべきであった。
彼はもう既にああいう事を言うレベルは越えている筈だから、逆にああいう事を心の声とは云え言わせると彼をそのレペルまで落とすことになってしまう。
④大学の同級生という無理繰りな設定の為、不自然さ丸出しに若作りした石坂浩二、老けメイクの本木雅弘、年齢不詳の中村トオル、の三人に、フィクサーぶりがあまり板についていない中井貴一、キョンキョンの二重アゴに気を取られて話に身が入らなかった(入るような話でもなかったけど)。
⑤俯瞰と室内シーンばかりでもっと“画”としての映画にして欲しかったけれども(同じ画家が出てくる映画として『燃える女の肖像』みたいに)、大「脚本家」倉本聰の脚本だから忖度して台詞中心にしたのかしら。
邦画はワチャワチャして嫌いだったけど、これは過不足なく美しく落ち着いた大人の映画
美しいものは記憶として心に刻む
■サマリー
世界的な画家・田村の展覧会で作品のひとつが贋作だと判明する事件が発生。
事件の報道が加熱する中、北海道・小樽で女性の死体が発見される。
このふたつの事件をつなぐ存在として浮かび上がったのが、天才画家と称されながら、
ある事件をきっかけに人びとの前から姿を消した、津山竜次。
かつての竜次の恋人で、現在は田村の妻である安奈は小樽へ向かい、
二度と会うことはないと思っていた竜次と再会を果たすが…
■レビュー
まあ、豪華キャスト。それにつられての鑑賞。
どんなストーリーなのかな、と思ったが、最初はミステリー。
贋作、その作者は?と・・・
主役である竜次、絵を描いているシーンはあれど、顔や姿が見えるのは
半分ぐらい過ぎてから?1時間ほど経過してから登場。
役とはいえ、あまりの痩身にびっくり。でもかっこいいわ~。
そして、その痩身ぶりが、冒頭の安奈に対し占い師が語るシーンとリンク。
なるほど。。。
それにしても画家が女性の身体全身に刺青を彫ったり、ありえんわー笑
さらにはインターポールにマークされちゃっているし。
その竜次を先生とよび、リスペクトする謎のスイケンさん、
意味不明な高飛車態度で、田村氏に圧!!笑
豪華キャストだけに演技はすごいんだけど、
結局のところ、わかったような、わからんような・・・
主人公の竜次はモッくん、いつまでカッコいいんだ、この人
画家として狂気じみた、創作活動の姿、すごいわ
安奈はキョンキョン、今年は碁盤斬りや室井さんで見ていたけど、
やっぱりキョンキョンだな、かわいい
影のMVPはやはりスイケン、中井貴一さん、重厚すぎ
ほかにも田村役の石坂浩二さん、美術鑑定の仲村トオルさん、
刺青カタログとなった清水美沙さんなど、すごかった。
萩原聖人さん、久しぶりで、一瞬誰?となった汗
それにしても、津山竜次という名前、どうしてもロバーツの・・・
元木さんの役になりきる凄さ!
圧倒されたのは元木さんの役になりきる凄さです。彼はいつも自分を空っぽにしていて、役の全てを自分の中に入れているのだろうと思いました。そして中井貴一さんも流石です。リュージが美を求めて生きてきた壮絶な人生、「番頭」さんがいてくれたことで観客の多くが随分救われた気持ちになったと思います。
キョンキョンは難しい役だったと思います。父親が重鎮だった美術界で、誰かの栄華のために利用されている存在である自分を受け入れて生きてきたのでしょう。冒頭のシーンで「誰か男性が」と言われて「そんなふしだらな女ではない」というシーンは、自分を解放できていない人を象徴するためかも知れませんが違和感を感じました。最後に、やはりこの人の傍では生きられなかったと思いなおすシーンの表情も。意図的に抑えていたのでしょうが、リュージへの思いも仮面夫婦である夫への思いも、その複雑な思いがイマイチ伝わってこなかった気がします。
倉本先生の美への思いは伝わりました。贋作であってもその絵に魂を揺さぶられると言って自死した人の思いが強く残りました。でも、美のために(?)人が死ぬのは何故?と思ってしまいました。
何となく違和感
倉本聰の世界を期待したが・・・
“北の国から”はTVドラマの生涯ベストランキング、“駅STATION”は邦画生涯ベストランキングに入っている俺なので、倉本聰最後の作品になるかも知れない本作は見逃すわけには行かなかった。
【物語】
あるとき田村修三(石坂浩二)ら日本有数の画家の絵を一堂に集めた展覧会が東京で開かれる。オープニングセレモニーには田村修三本人も妻安奈(小泉今日子)と共に招かれるが、展示されている彼の作品のうち一枚が贋作であることに気付き、公表する。
贋作に関わる報道が加熱する中、北海道・小樽で女性の死体が発見される。やがて二つの事件の間に、かつて天才画家ともてはやされるも、ある事件を機に表舞台から姿を消した津山竜次(本木雅弘)が浮上する。かつて恋人だった田村の妻安奈は小樽を訪れ、二度と会うことはないと思っていた竜次と再会する。
【感想】
結構意気込んで観たものの、実はまたしても前半ウトウトしてしまった。 それでも序盤と終盤は観られたのでストーリーは概ね分かった、・・・ つもり。
なのだが、イマイチ面白いとは言えなかった。
演技・映像・音楽・演出、どれも悪くなく作品としての重厚感、別の言い方をすれば雰囲気はあったけれど。倉本聰ならではストーリー不発だったように思う。 見逃した部分があるのは確かなので、やたらなことは言えないが(笑)
随分久しぶりに観た元木はなかなかの熱演で悪くないので、ファンならそれを観る価値はあるけれど。
数日経っても余韻が残るから良い映画だと思う
セリフも説明も少なく、俳優の表現力にのみ語らせてあとは観客の理解力と想像力に丸投げする映画です。
若くてわかりやすい文芸作品や娯楽映画を楽しむ人にはまったく面白くないと思います。おそらく若者でこの映画に良い評価をつける人はいないのではないか、そもそもキャスト的に見に行かないだろう。
しかし、ある程度人生経験が深まり、人生の終わりを時折意識するようになった人々にとっては、若き青春の日々を共にした俳優らとともに、忘れかけてた傷となって残る人生の後悔ややり残した詫び、悔い、それでも時を経て美しく塗られかけたその思い出全てそのままを同時に受け入れて映像とどこか重なる自分自身の人生のやり残しに思いを馳せる映画表現になっていて、つまらないと思う人はいないのではないかと思わされます。最後まで見てしまうだけのよい緊張感もあるし。
映画としては十分に完成されてるけど評価は分かれるとも思います。倉本聰ならもっと笑える要素を必ず入れてくるはずなのに、これはそうではない。その点、これは倉本聰に私物化された脚本なのかなと思います。彼にとってもやり残した思い残した何かがここに反映されていることは容易に想像できるし、ライターの書くなにかにそう書いてあるし。だが、その文面通りとは限らないさらに何かがあるんだろうなと思いますね。
役者はよかった。高倉健の晩年の映画のように、ほんのわずかなしわやまぶたや口の動きに、肩や足や腕の動作に言葉ではないもっと直接的な複雑な情緒を感じさせます。熟練でもあり、脚本の結果でもあり視聴者の想像力でもあり、それらの合作としての素晴らしさ。ただ一人若い彼女の肌は5歳で触れたい、25歳で触れたい、55歳でもしも若返るならもう一度触れてみたい肌だった。
若者ウケはしないだろうなと思いながら見て、終わりまで見てやはり若者には受けないなと思いながら、3日たってもどこか余韻が残ります。わかりやすく面白いわけじゃなかった。でも残るのだからこれは本物なんだろう。すでにもう一度みてみたい気持ちになっています。
ただ神は細部に宿る。1箇所だけ細部に手抜きがあったから星は削ります。たった1箇所の作り込みの甘さが映像美術への没入を阻害し、現実に引き戻す。あれがなければ緻密に完成された作品として記憶に残せたのに。
まさに陰と陽だ。竜次の絵に対する執念が凄かった
皆んな年とったなぁ…
新しい映画
美しいものは美しい
朝一番の回を見たもんだから映画館を出たら外はまだまだ明るくて、映画とのギャップにすごく違和感を感じてしまった。暗くて淡々とした間の多い作りだけど、全編昭和らしい雰囲気漂う哀愁深い映画だった。
久々のモッくん。実は映画館でお目にかかるのは初めてでして。8年振りの映画らしい。頬はこけ、髪も白く染った老け姿なのに、やっぱりカッコよくて見入ってしまう。この美しさで58歳。はぁー、すごい。小泉今日子、仲村トオルと同級生なんですね。渋さと色気。見せ方も見事でした。
ほとんどの人はモッくん目当てで見に来てると思うけど、そんな人は自分含めまんまと監督の手のひらの上で転がされてしまう。なかなか登場しない主人公にもどかしさを感じながらも、ようやく顔が映った時はもう惚れ惚れ。観客の心を分かってますね。小泉今日子や中井貴一と比べると出演シーンはかなり少ないが、流石の色気と憑依したような芝地に見とれてしまう。
それぞれこれまでのキャリアでいちばん多く演じてきたと思われるキャラクター像で、安定感が凄まじいし、複数人が絡んでるだけで楽しかった。仲村トオル、石坂浩二、中井貴一が一同に集まって会話を広げる。絵が既に面白くてテンション上がっちゃう。石坂浩二、最近こんな役ばっかりだな笑
「ブルーピリオド」「まる」と言ったように、最近は芸術をテーマに置く邦画がかなり多いけど、その中でも本作はラブストーリーを主軸にしつつ、芸術の価値に疑問符を浮かべるとてもメッセージ性の強い作品だった。展覧会で発覚した有名画家の1枚の贋作から浮き上がる、かつては天才画家と評された男の愛と憎しみの物語。たった1枚の絵から話が膨らんでいくこの構成は、「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」を彷彿とさせる。意識しなくともグイグイ引き込まれてしまうし、2転3転と雰囲気を変えていきながら話が展開されていくから、シンプルに楽しい映画になっている。
テーマだけでなく、映画そのものも美を追求された、まるで動く絵画のような1つの"作品"に仕上がっていた。ワンカットワンカット、高貴で上品さを感じさせる。ペラペラの紙ではない。厚く深みのある、ズッシリと重い等身大ぐらいの大きな1枚。海の絵というととても在り来りなものに聞こえるけど、過去や背景を知っていくうちに、その深みと重さは増していく。人も海も同じように、底知れぬ魅力が溢れていく。
個々の人物はよく描けているが、津山とあざみは特に、1体1の関係性で急に描写が雑になる箇所があり、所々で違和感を感じてしまう。ただ、絵に迫っていくと露になる人々のほんとうの姿には色々と考えさせられるものがあり、津山の代わりにスイケンがひょいと田村の元にやってくるあのシーンはそれを象徴するかのようで脳に色濃く刻まれた。
渋くて地味な大人の一本だけど、雰囲気だけでは終わらせず、ちゃんとこの作品にしか出来ない演出の数々を経て、地に足をつけたラストを迎えていたからとても満足度が高かった。美は美であり、それ以上でもそれ以下でもない。美しいの価値なんぞ、値段で表せるほど安易なものなんかじゃないんだよな。
倉本聰先生
テーマは深く人物はさらに深く
長い時間を経て再会する二人と、小樽のノスタルジックな風景はよく合っていて、とても情緒がありました。
「このカウンターあの店だ」
「この景色、あの橋のこっち側だ」と思いながらも、見慣れた景色が今まで見ていたのと全然違う美しい映像になっていて、感嘆しました。
最初は、世界的な画家の「これは私の絵じゃない。贋作だ!」から始まる犯人探しのサスペンスのようでした。仲村タオルの雰囲気がいつもの刑事っぽいせいでしょうか。
後半は、美とは?真実とは?命とは?と問いかける複雑に絡み合った糸が織りなす人間ドラマでした。とても見応えありました。
海の中に胸まで沈んでこちら側を見る本木雅弘さんのポスターは印象的ですが、あれは入水自殺を計っているシーンではありませんでした。(そう思ってた)
過去から今、死から生、絶望から希望、未完から完成を見ようとしている、そんな表情を捉えたものなのだと思いました。
中井貴一さんが演る「番頭」さんは、とても渋みがあります。
一生をひとりの画家に捧げて、美の何たるかに信念を持っている。
彼が携えている杖がまた美しい。
安奈(キョンキョン)が作るキャンドル作品には、ずっと心の奥底で愛し続けた人の顔が彫られていて、それが津山(もっくん)の手に渡り、蝋の涙を流すシーンには泣きました。
あと、津山(もっくん)が安奈(キョンキョン)に再会した時、「やぁ」と、ひとこと言うのですが、この「やぁ」はなんとも言えず官能的です。
(私だけ?そう感じたの私だけかなぁ?でも、そうなんですょ。)
悲しげで、優しさに満ちていて、懐かしそうな、寂しそうな。
こんなふうに、「やぁ…」って言われたら、腰からくずおれてしまうわ。ちょっと掠れた声なんです。
ビデオ買ったら、ここだけ鬼リピすると思う。
で、「この絵は私の絵じゃない。贋作だ!」と言った世界的画家田村(石坂浩二)は、贋作が自分の絵よりも優れていると内心認めていて、
それに妻(キョンキョン)とはずっと別居で偽物夫婦(笑)。
中身はこっちの方が偽物なのに、世間的に栄達しているので本物として扱われる。
本物と偽物。
リアルとフェイク。
今まさに私たちが溺れそうになっているテーマだと思います。
⭐︎倉本聰さんが話題になっていますが、監督がすばらしいのでは?海面から岸の火を映すカメラワークには心臓バクバクしました。
⭐︎みんながいいと言うからという理由で見てはいけない。倉本聰作品だからという理由で見てはいけないそんな理由で見たら、倉本聰さんの投げかけている問いに反するよね
理解するにはメモリアルブックが必須だけど、映画代くらいはするんだよね〜良かったけど
2024.11.28 MOVIX京都
2024年の日本映画(112分、G)
贋作騒動によって再会する男女を描いた恋愛&ヒューマンドラマ
監督は若松節朗
脚本は倉本聰
物語は、ある占い師(津嘉山正種)から「背景に見えるもの」の指摘を受ける安奈(小泉今日子、高校時代:小野晴子)が描かれて始まる
占い師の言葉を巧みに交わすものの、彼女の脳裏にはある男が浮かんでいた
安奈は、世界的に有名な画家・田村修三(石坂浩二)の妻だったが、修三には別に女がいて、その関係は仮面夫婦のようなものだった
修三は日本絵画100周年記念の作品展に選出されていて、その幕開けには文部大臣の桐谷(佐野史郎)も登壇することになっていた
館長の小原(中村育二)の案内で館内を見回った修三だったが、ふと自分が描いたはずの「落日」に違和感を感じていた
その場は取り繕ったものの、夜になって再び「落日」と対面した修三は、「これは私が描いた絵ではない」と吠えた
その絵は貝沢市にて所蔵されていたもので、急遽、館長の村岡(萩原聖人)と副市長の大井(久保隆徳)が呼び出された
画商(田中健)から詳細を聞いても「古い話は覚えていない」と言われ、その絵がどのようにして展示会にまでたどり着いたのかはわからなかった
数日後、責任を感じた村岡は、奇妙な遺書を残して自殺を図った
そして、彼の意思のもと、参列者に遺書の複写が配られることになった
そこには「落日」に対する想いが綴られ、あの絵が贋作だとしても、私の心に訴えかけるものは本物だった、と書かれていたのである
映画は、その絵が中央美術館の元館長・清家(仲村トオル)の元に送られるところから動き出す
彼は絵画の修復などに携わっていて、彼の元には世界を騒がせている贋作の情報が舞い込んでいた
そのどれもが精巧な作品になっているが、おそらく同一人物のものではないかと推測されていた
そんな折、北海道の小樽にて、一人の女の水死体が発見される
女は近くの小料理屋の女将・牡丹(清水美沙)で、彼女の全身には刺青が彫られていた
その取材に訪れていた記者の伊吹(三浦誠己)は、偶然入ったバー「マーロン」にて、ある絵を見つける
世界的に有名な絵の模写のようだったが、どこか違和感のある絵で、伊吹はそれを写真に撮って、清家に見せることになった
清家は絵の中に刺青のようなものを見つけ、絵のサインが「Lyu」であることに気づく
そして、30年ほど前に姿を消した、天才画家・津山竜次(本木雅弘、高校時代:小島佳大、幼少期:田村奏多)のことを思い出した
彼は、修三と同じ師匠の門下生であり、高校時代にある事件を起こしていた
それは、師匠の娘である安奈の背中に刺青を彫ろうとしていて、それが理由で姿を消していた
小樽の女将の刺青も彼の仕業と考えられ、清家はそのことを安奈に伝える
そして、彼女は一路、小樽へと向かうことになったのである
映画は、基本的には竜次と安奈のラブロマンスなのだが、高校時代の刺青騒動以来会っておらず、二人の仲がどこまでのものかは描かれない
安奈がその後、修三と結婚することになった経緯とか、竜次の番頭を務めているスイケン(中井貴一)の背景もほとんど語られない
このあたりの設定は、映画のメモリアルブックに載っているので参考になるが、映画であの設定を読み解くのはほぼ不可能であると思った
物語は、竜次が「赤」にこだわっていて、それが海難事故で亡くなった両親が最後に見た「迎え火」であることに気づくのだが、そのシークエンスも安奈と会ったことで気づくという意味不明な展開を迎える
安奈と両親の海難事故の接点はほぼ無く、その事故によって竜次がどのような青春時代を送ったのかはわからない
その辺りをほぼカットしているので、竜次の心境の変化というものが映画からは読み取りにくくなっている
さらに、映画の根幹となるテーマは「美の価値」であり、それは金額や権威に囚われないものだということなのだが、それが人生を賭けて探した赤と繋がっていると感じるのもかなり難しい
結局のところ、美とは自己満足の世界で、そこに到達することができれば画家冥利というもので、それが見る人にどんな感情を与えるかはどうでも良いという感じに見える
そんな中でも、村岡のように感化される人もいるというもので、そういったものの価値と世間の認識のズレが不幸を呼んでいるようにも読み解ける
何が正解かはわからないが、ざっくりとした印象はこのようなものだったと書き留めておきたい
いずれにせよ、この世界観やテイストが好きな人向けで、それが万人受けするかはなんとも言えない部分がある
結局何の話だったのかわからないというところもあるし、安奈に刺青を彫らなかったのは正しかったみたいな感想になっているが、どう見ても怖くなって逃げられただけで、刺青を否定すると死んだ女将が浮かばれないような気がする
色々とわからない部分はメモリアルブックで補完するしかないと思うが、映画代ぐらいはするので、購入に関しては余程の動機がないと勧められないというのが正直な感想である
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