「美を求める男の生きざま」海の沈黙 おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
美を求める男の生きざま
予告を何度も観て、内容と出演俳優陣に興味をもった本作。重厚なヒューマンドラマが展開されることを期待して鑑賞してきました。公開週は所用で時間が取れなかったため、2週目の鑑賞となりましたが、客入りは悪くなかったです。
ストーリーは、有名画家・田村修三が、自身の展覧会に展示されている作品の一つが贋作であることに気づき、画家のプライドからそれを公表したことで事件が明るみとなる中、北海道の小樽で女性の死体が見つかり、その女性が贋作づくり関わりがあることが疑われ、かつて気鋭の天才画家と称された津山竜次の存在が浮かび上がり、津山を巡って、津山の元恋人で今は田村の妻・安奈、全身刺青の女・牡丹、津山を慕うアザミ、津山に仕えるスイケン等、様々な人々の過去と人生が交錯していくというもの。
・・・とストーリーをまとめてみたものの、正直言ってよく理解できていません。この日3本目の鑑賞で集中力が落ち、何度か瞬間寝落ちしたせいもあると思いますが、振り返ってみても断片的にしか思い出せず、自分の中でイマイチまとまっていません。正確には、ストーリーが追えなかったというより、登場人物の心情が追えなかったと言ったほうがいいかもしれません。
結局、己の目ざす美を求めてあがき続ける男の生きざまを描こうとしていたのでしょうか。そして、それは幼き日に亡くした両親への思慕や母のぬくもりを求めていたということでしょうか。言い換えれば、「美」の追求を通して、根源的な拠りどころを求める人間の姿を描こうとしているのでしょうか。あるいは、その拠りどころは何なのかを観客に問いかけているのでしょうか。
もしそうなら、美術館長の自殺、贋作捜査のインターポール、安奈との関係性などは、描かなくてもよかったのではないかと思います。さらに言えば、津山の父の彫師設定、女体をキャンバスに見立てた刺青、アザミの存在なども、果たして本当に必要な要素だったのかとも思います。これらの要素は、なんとなく物語に奥行きを与えているようにも見えますが、津山の人物造形に寄与していないようにも感じて、ちょっと消化不良です。
全体的に昭和の雰囲気が漂い、ねっとりとまとわりつくような重さや気だるさ、先の見通せない闇や悲哀を感じます。出演俳優陣の顔ぶれを見ても、時代設定が昭和だったなら、また違った印象の作品になったかもしれません。
主演は本木雅弘さんで、渾身の演技が光ります。脇を固めるのは、小泉今日子さん、中井貴一さん、清水美砂さん、仲村トオルさん、石坂浩二さん、萩原聖人さん、佐野史郎さん、菅野恵さんら、豪華な顔ぶれです。
共感&コメントありがとうございます。
テンポの良い、軽快な作品ばかりじゃ・・って事もありますからね。何でも口にした方が良いかも、わあっ青カビ!と吐き出しても。