「Logic」ノーヴィス ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
Logic
ボートに狂った少女のお話、そのままの内容だったんですが、その狂いっぷりは共感とはほど遠く、自分の思う価値観とは全然違うものを魅せられて昂るものがありました。
「がんばっていきまっしょい」からキラキラ青春模様を抜いて血と傷をより明確にしたようなスポ根ものでした。
「がんばっていきまっしょい」を先週観ていたのもあってボートの知識はサクサクっと入っていたのでボート用語だったり、この練習がどう活きるのかというのもスッと頭の中に入ってきたのもナイスでした。
コーチと生徒が怒号を撒き散らしながら大会へ突き進んでいくのかと思いきや、コーチすらもドン引きする練習を重ねる生徒がメインで描かれるので1本取られました。
宣伝文に用いられているボート版「セッション」の文言ですが、あちらはハゲジジイと生徒が2人揃って狂っていく模様でしたが、今作ではダルのみが狂いに狂っていくという誰かと高め合うでなく、自分の限界を超えるというのを目標にしているのが狂気を宿していて凄まじかったです。
主人公のダルが何故ボート部に執着するのかというのは言葉に出して表現されることはありませんでしたが、他の人を蹴落としたい、自分こそがNo.1だと鼓舞して無茶無謀をやってのけていく様は凄いとかを超えて恐怖に近いものがありました。
イザベル・ファーマンの怪演も手伝って、ぶっ倒れるまで練習をして、休む間もなく練習しては勉強もして、その勉強すらも何度も何度も見直しては直しての繰り返しを教師に呆れられてと側から見たらとんでもない狂人でしか無いんですが、当人からするとこれぞ快感、私は凄い!となっていってるのは自分の中には無い努力の形なので驚かされっぱなしでした。
要領が悪くても足掻きに足掻きまくればてっぺんは取れるという心意気で挑んでいる姿は痛々しくもあり、達成した際は清々しさもありと不思議なシーンが続きました。
雨がじゃんじゃんぶりだろうと、雷が鳴り響こうと一切合切関係なくボートを漕ぎ続ける姿はここで死んでも構わない姿勢で"必死"という言葉がとにかく似合う姿はエグさ全開でした。
勉強に用いるロジックはボートには当てはまらないよって言われたのは正論だと思いますし、なぜチーム競技を選んでしまったのかというところはありましたが、入学してからそこしか目に入らず、他の競技なんてどうでもいいってのがそこかしこから伝わってきてテーマが一貫してるなぁと感心するばかりです。
ラストもプツッと何かが切れたように澄ました顔で歩きだしたのもストイックさの裏返しのようで圧巻されっぱなしでした。
状況説明の文章や単語がスクリーンにドン!と映されはするんですが、書き殴りしたような感じの文字が全面的に出てくるのでテンションが上がりました。
ローレン監督は「セッション」で音響を担当していたのもあって、昂るシーンはとことん掻き鳴らしてくれて、落ちるところはとことんドス黒い音楽をかましてくるのでその点でも感情がぐちゃぐちゃになるのもとても良かったです。
自分とはまるで違う世界を堪能できて痺れまくりでした。
好みは分かれると思いますが、これくらい尖っている作品はやっぱ好きだなぁとなれたので良かったです。
鑑賞日 11/6
鑑賞時間 17:50〜19:35
座席 G-10