花まんまのレビュー・感想・評価
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想い溢れた花まんま
大阪を舞台に、両親を早くに亡くした兄妹の物語。
監督・前田哲は大阪出身。主演・鈴木亮平と有村架純は兵庫出身。
こりゃ見る前から、関西人のカラッと明るい笑いと下町人情と兄妹愛が期待出来る。
確かにそうだった。見終わっての温かな感動。
だけど、それだけに非ず。『ファーストキス 1ST KISS』と同じく、意外なジャンルがプラス。
開幕、不思議な空間で、幼い兄妹が亡き両親と会う。
お兄ちゃんなんだから、妹を守るんやで~。
お父ちゃんお母ちゃん、死んだから知らないけど、今はジェンダーの時代…と言ってたら、妹が未来の花婿のチャリに乗せられて…。
うん、こりゃ確かにファンタジー!…と思ったら、兄・俊樹の夢。
夢始まりは寅さんみたい。寅さんもお兄ちゃん。
夢は本当。両親は今は亡く…もだけど、妹が結婚間近。
両親を早くに亡くしてから、妹・フミ子を兄手一つで育ててきた俊樹。
色々あったけど、そんな妹もいよいよ。
兄貴はただ黙って優しい笑顔で結婚を許す。…実際はふてくされたけど。
相手の太郎はちょっと頼りなさげだけど、大学の若き研究者。
専門はカラス。何と、カラスと話せるという。うん、こりゃ確かにファンタジー!
まあでも、好青年。ちょっと小生意気な妹の尻に敷かれながらも幸せな結婚生活が目に浮かぶ。
本当に色々あった。妹の為に色々苦労し、貧乏くじも引いた。
でも、しゃーない。お兄ちゃんだから。
それに、お父ちゃんお母ちゃんとの約束。
フミ子が産まれた時、バカみたいに喜んだお父ちゃん。
病院の外で、大声でバンザーイ!バンザーイ!バンザーイ!
態度にはふてくされてたけど、内心は安堵喜び。
お父ちゃんと同じ。バンザーイ!バンザーイ!バンザーイ!
丸聞こえだって。お兄ちゃん。
後はこのまま何事も無く式を迎えるだけ。
…だけど、最近フミ子の様子がおかしい。
結婚前に仕事を片付けると職場の大学に寝泊まりすると言って、その日は帰らず。
大学に聞いたら、早くに帰ったという。
なら、太郎との新居に…? そこにもおらず。太郎はその時、カラスの動画を見ながらカップラーメン食べてた。
間もなく結婚するうら若い女性が何処に…?
何か事件に…? それとも他に誰かが…?
少し心当たりが。職場の車を借りて、“そこ”へ向かう。
出発しようとした矢先、太郎とばったり。懇願され、同乗。後で聞いたら、フミ子から話されて“知っていた”。
やはりそうだ。間違いない。
あの時で縁を切ったつもりだったのに…。
子供の頃にも行った。滋賀県彦根市へ。フミ子の秘密…。
ここがネタバレ厳禁の作品の肝になる訳だが、察しは付いた。
回想シーン。お母ちゃんが臨月で病院へ。その時、もう一人が担ぎ込まれる。イキむお母ちゃんとは別に、止まる心電図。これらの意味する事は…?
くどくど言うのも面倒臭いから、ズバリ。
あの時、ある人が死んだ。その時とてもとても不思議な事が起こり、死んだ人の魂?記憶?が、産まれたばかりのフミ子の中へ。
フミ子の中には、フミ子自身と死んだその人が存在している。
輪廻転生、生まれ変わり、小さな子供が行った事も体験した事も無い記憶があるってやつ。
信じられないけど、そうとしか思えない。
幼少のある時、フミ子の中の別人が突然目覚める。急に好き嫌いが変わり、大人びた雰囲気に。
フミ子から聞き出すと…、もう一人は“繁田喜代美”。滋賀県彦根市に、家族(父母姉兄)と暮らしていた若い女性。夢だったバスガイドになるも、通り魔から乗客を守って命を落とした。作り話ではなく、ちゃんと新聞に記事も。
やがてフミ子(喜代美)は家族に会いたいと。一生のお願いをされ、動物園行くフリをして、幼い兄妹で電車を乗り継ぎ滋賀県彦根市へ。
来た事も無い知らない町なのに、フミ子は町を知っており、“同級生”も。喜代美の記憶。
生家に向かい、ほどなく見掛ける。
喜代美の父。
ガイコツみたいにガリガリ。何があったか事情を聞くと…
喜代美が殺された時、父は天ぷらうどんを食べていた。そんな自分が許せず、以来父は7年、何も食べていない。最低限の飲料のみ。故に今にも倒れそうなくらいガリガリ…。
自分を罰する父に胸を痛めるフミ子(喜代美)。何かしてあげたい…。
そこである物を作り、俊樹に渡して貰う事に。
ある物を持って、俊樹は繁田家へ。対応した姉兄は、突然訪ねてきた幼い男の子を怪しむ。姉は警察官、兄は大学教授。
手渡したある物とは…。ここでタイトルが活きた。
“花まんま”。花で作ったお弁当。
これには姉兄も動揺。昔、喜代美が作ったものと同じ。
父はそれを見て号泣。あの頃と同じように、美味しそうに食べるフリ。
事情を聞き出そうとするが、俊樹は逃げ出す。
帰ろうと駅でフミ子と電車を待っていると…
そこに繁田家族が。
改めて事情を聞き出そうとするが、俊樹は拒む。
その時父がフミ子を見て気付く。喜代美…?
普通だったら信じないだろう。小さな女の子の中に娘がいるなんて。子供の悪戯と思うだろう。
が、今も娘を想う父には分かるのだ。愛する娘の存在が。
が、俊樹は声を荒らげて言う。喜代美やない、フミ子や!
電車が来て、飛び乗って帰る。
フミ子とも指切り約束し、これっきりとした筈なのに…。
カラスに道を聞きながら、幼少時以来の繁田家へ。
繁田家族と再会。しかし、気まずさが…。
お怒り気味の俊樹に対し、繁田父はただただ低頭。
実はあれ以降、密かに文通していた。
結婚が決まり、先日報告に来てくれた。直接会うのは子供の時以来。
フミ子(喜代美)から式に来て欲しいと言われた。が、断った。
当たり前や! フミ子の結婚式や! 喜代美のや無い!
自分の知らぬ所で密かに交流続き、秘密にもされ、怒りが収まらない俊樹。どんどん声が大きくなる。
低頭するだけの繁田父を、姉兄がフォロー。
フミ子(喜代美)のお陰で、悲しみからの立ち上がりを灯してくれた。特に父はまた食べれるようになり、こうして今も生きてられる。希望をくれたのだ。
それでも怒り収まらない。そのまま繁田家を去る。
ちょっと俊樹が言い過ぎな気もしたが…、気持ちも分からんではない。
全てを犠牲にしてまで妹の為に頑張ってきたのに、妹は別人が存在してるからとか知らんけど、別の家族と家族してた。
なら、死んだお父ちゃんお母ちゃんは…? 兄=俺は…? お父ちゃんとの約束は…?
裏切られたようなもの。
その時、フミ子から電話が。
そこは美しいつつじの園。喜代美の思い出の場所なのだろう。
全ての事情を知って、兄妹の口論。
俊樹の言い分。家族はたった一つ。死んだお父ちゃんお母ちゃん、一緒に生きてきた俺だけや。
フミ子の言い分。それは勿論分かる。でも私の中には喜代美さんが確かにいて、喜代美さんにも家族がいる。
実は喜代美は結婚を控えていた。父とバージンロードを歩くのを楽しみにしていた。父も楽しみにしていた。そんな幸せの絶頂の中…。
フミ子の結婚が決まってから、私の中の喜代美さんの記憶が薄れつつある。
フミ子はお父ちゃんを知らない。まだ記憶があやふやの時に死んじゃったから。“父親”というのを知ったのは、喜代美を通して知った繁田父。
その優しさ、温かさ、愛情…。
もし、喜代美さんが消えてしまったら…? 喜代美さんの家族への思いは…?
完全に消える前に。
お前はフミ子や! 喜代美やない!
私は私だけやない!
晴れの日を前に、兄妹大喧嘩…。
そんな頑固な俊樹の心を変えたのは、またまた夢で…。
お父ちゃんお母ちゃん。それから、喜代美。
フミ子の結婚が決まり、それで喜代美も未練が無くなったのか、天国へ成仏。
その案内を買って出たお父ちゃんお母ちゃん。
喜代美さんに感謝。
俊樹にも感謝と労い。よう頑張った。
家族の愛や思いは同じ。ウチも。繁田家も。
俊樹は結婚式にあるものをプレゼントしようと、式の早朝に出掛ける。
これも察しは付いた。連れて、式が始まる前に戻って来られるか…?
兄やんを信じて待つフミ子。
間に合うか…?
人気と実力と魅力を兼ね備えた鈴木亮平と有村架純ならラブストーリーも出来そうだが、兄妹なのが絶妙。
喧嘩もするが相手を思いやる兄妹愛をナチュラルに。
兄妹愛を深くしたのも、幼い頃を演じた二人の子役あってこそ。
周りが皆いい。女優としてさらに開花したようなファーストサマーウイカ、繁田姉兄のキムラ緑子や六角精児…。
鈴鹿央士はナイスなユーモア。カラス語もだけど、意外な共通点あった繁田兄とそんな所で名刺交換しないで!
関西出身のキャストによる丁々発止のやり取り、前田監督の人情と笑いと温かな感動が本当に心地よい。
だけど、本作最大のMVPは言わずもがな。見た人皆が涙する。酒向芳。
あのガリガリの姿。
花まんまを食べる仕草。
駅で娘に気付いた表情。
バージンロード。
最後の握手…。
繁田父の涙と、悲しみと、優しさと、深い愛情…。
それらを体現した酒向芳の一挙一動に、ただただ涙…。本当に泣かせてくれる。
名バイプレーヤーのきっかけとなった『検察側の罪人』での怪演。本作での好演。その振り幅!
助演男優レベル! この遅咲きの名優に、年末何か一つでも賞を!
酒向芳に感動の場を持っていかれてばかりだが、鈴木亮平もクライマックスのスピーチでしっかり感動させる。
このスピーチ、ホント良かったなぁ…。
苦労と笑いと人柄と妹への愛情溢れ出る。
用意されたスピーチより、その時の気持ちを表したスピーチの方が響くのだ。
余談だけど、アカデミー賞とかで受賞者が用意したメモを読みながらするスピーチには何だか萎える。いつぞや赤塚不二夫が亡くなった時、弔辞を読んだタモリ。用意した紙は白紙で、即興のスピーチ。私もあなたの作品の一つです…とは名言。
本作でも。最初は俺が育てたんや!…と言っていた俊樹。
フミ子や自分がこうしていられるのは、皆様のお陰。ありがとうございます。
そのスピーチを涙を流しながら聞く有村架純も、あの涙は演技とは思えない。やっぱり上手い!そしてやっぱり可愛い!
こういう家族や人情に弱い自分にとっては胸にドストライク。
いや~良かった!
下町人情に兄妹愛。自然とあの歌が頭に流れたね。
♪︎どうせオイラは…
最後は切なさも。
式を終え、フミ子の中の喜代美はもう…。
これで良かったのだ。
ラストシーンを請け負ったのは、主演二人ではなく、またまた酒向芳。そしてタイトル。
引き出物。その中身は…
想い溢れた花まんま。
酒気帯び運転はあかん
両親を亡くし高校を中退して面倒をみた妹の結婚式を月末に控えた兄と、妹の秘密の話。
烏と話せる婚約者に、秘密を話して話しが転がっていくけれど、ここは観客には隠して引っ張る感じ…かと思いきや、案外あっさり語って展開していく。
こういう話しは確かに聞いたことあるし、コミカルだしファンタジーだしとは思いつつも、記憶とか人格の入り込み方があまりにも都合良過ぎて、なんとかならなかったのかと…ちゃんと入って入ればこんな中途半端じゃないだろうし、、夢レベルならここまで深くはならないだろうし…なんて思っていたら、今度はもっと都合良くそこだけが!?
そういえば、子供も含め登場人物みんな察しが良過ぎるのもね…。
つまらないとは言わないけれど、ストーリーにこうすれば良いんだろ的な打算を強く感じてしまい、いまいちハマらなかった。
もっとファンタジーでございます!を前面に押し出していたらまた違ったのかな…。
泣けた
有村架純主演で前にもこんな映画あったなと思いながらその特徴的なストーリーはそこまでだったのだがラストのスピーチはただただ、泣けた。
深い意味や伏線とかはないのだがこれまでどう生きてきたかが凄くわかりやすくて感情移入がしやすい作品でした
花と記憶と大切な人
好んでみるタイプの作品ではないけれど、鈴木亮平と有村架純というキャストに惹かれて鑑賞。
日本人好みのする、ターゲット年齢高めの人情系映画といった感じ。
演者のほとんどを関西出身の実力者で固めて、演技もコテコテではない感じの自然体だったので、最後まで安心して穏やかに鑑賞できました。
主演の2人と、繁田一家の3人をはじめとする脇役の演技がよかったばかりに、冒頭と途中のファンタジーシーンがちょっと安っぽい感じがしたのが残念なところ。
鈴木亮平の式での挨拶もよかったし、それを傍らで聞く有村架純のドレス姿も綺麗でした。
しかし、個人的には、この映画で一番印象に残ったのは繁田父(酒向芳)。
酒向さん、本当にいい味が出てます。
最後に空けて見た引出物は、亡き娘からの最後のメッセージ。
兄と妹のお話ではあるけれど、父と娘の話でもありました。
花を見て大切な人を思い出す。大切な人のために花を贈る。
なるほど、花にはそんな力があるのかと、再認識させられました。
感動したし切ないし…。
映画の予告で気になり鑑賞。
鈴木亮平さんと有村架純さん、実年齢では10歳差なんですね。
兄妹の役でしたが、そんなに離れてるふうに感じなかった。
有村架純さんが大人っぽいのかな。
この兄妹、個性がはっきりしてます。
特に妹。
一生のお願いを何度もするんですが、兄も優しくてお願い聞いちゃうし、妹は妹で絶対に折れない頑固な性格。
うまく演じていましたね。
ホントの兄妹なんじゃないかっていうくらい自然だったなー。
鈴鹿央士くんもあんなにイケメンなのに、なかなかのいいキャラ演じてた。
それがこの切ない話にふふっと笑ってしまう癒しを添えてましたね。
ストーリーは妹が結婚するっていうところで最初から大方わかってはいたけど、それでも所々ほろっと泣けてきてしまうところがありました。
酒向芳さんが出てくる場面では、毎回泣いてたかも(笑)。
そして式が終わったあとの場面……ほんとに切ない…。
「どこからこられたんですか?」
あの場面でそんな事言われたら……言葉失っちゃうよね。
でもそうなることでやっと妹は今の人生を全うできるのかなとか思ったり…。
お兄ちゃん、いいプレゼントあげられてよかったね!
そしてこの作品のマイナスだなと思ったのは、ファンタジーなところかな。
ファンタジーでもいいんだけどさ、ちょっとちゃちい感じがしちゃって、そこで一瞬冷めちゃう。でも重要要素ではあるんだけどね。
しかし、鈴木亮平さんのインテリ具合は、どんな格好してても消せないもんですね。
もうちょいすれた?感じだったら良かったかなぁ。
弁当と引き出物とカラス語
あの花まんま弁当と引き出物で2回
バージンロードで1回泣いてしまった。
溢れ出そうな声を頬っぺたをつねり
嗚咽。
まさかの神様が産まれてくる子供にその人
の記憶を入れるとは。無いとは思うけど
あり得そうな気がする。人って分からんから。
大事に大切に妹を育てて来た兄やん。
両親も早く亡くしたから気を張って生きてきたはず。
あのスピーチで立って見えた景色。
皆さんの気持ちと手助けがあった事を理解し
言葉で表した兄やんは素敵。
一番近くにいる誰かを理解する難しさを
大切にしていきたいなぁと思った。
しかし笑いと涙のバランスを見事に絡めてくる。
カラス語は笑うよね。
オール阪神・巨人さんも大切な役。
原作には登場しないがファーストサマーウイカが
居るか、いないかは善きポイント。
子役お二人も素晴らしかった。
MVPは酒向芳さんと鈴鹿央士さん。
花まんまに込めた一途の愛は美しく消える
事はない。
又、観たい映画である。
鈴木亮平の演技で終始号泣
妹(有村架純)の他人の記憶を持つ設定がSFなので
映画に入り込めるかどうかは人それぞれだろう。
主人公である兄(鈴木亮平)の親同然の妹への深い愛情は
すごく共感できる。
両親を亡くしている境遇から
ともすればヘビーな内容になりかねないのに
大阪の下町という舞台から笑いありの人情を押し出して
軽やかさもブレンドすることで深刻になりすぎない
絶妙なバランスをとっていると思う。
鈴鹿央士演じる妹のフィアンセの
カラスと日常会話ができる設定が効いていたり、
父ちゃん母ちゃんのキャラも実に良い。
妹の記憶に残る人物の親族も俳優陣の演技が見事。
話の紡ぎ方もさることながら、
鈴木亮平の演技が圧巻すぎて、
前半から泣かされ、ラストの妹の結婚式でのスピーチでは
号泣してしまった。
加えて幼少期の妹の子役が実に素晴らしい演技で、
感動もひとしお。
鈴木亮平と有村架純の関西弁が自然なのも
映画世界に入り込めた大事な要素になっていた。
まさかここまで号泣レベルの涙を流すとは思っておらず、
目からデトックスできた。
劇場内の観客が泣いていたのがわかるくらい
一体感を得られる作品。
父の愛兄の愛
期待してたより100倍良かった。主演の二人は勿論子役の二人も最高。酒向芳さんにはすっかり泣かされた。自分の父親とバージンロードを歩いた昔を思い出しながら嗚咽を我慢しながら観た。ラストとても切ないけど花まんまに癒されて後味は悪くない。いい映画見たなってじわりながら帰宅。鈴鹿くんのカラス語を思い出し笑いして家族に不審がられる笑
「反省」したのなら「感謝」だけじゃなく「謝罪」も必要だったのでは?
最近、「片思い世界」のレビューにも同じようなことを書いた記憶があるが、大切な人を亡くしたら、誰もが、その人に、「もう一度会いたい」と願うものだろう。愛する娘を亡くした父親であれば、そうした願いは、尚更悲痛であるに違いない。
酒向芳演じる「父親」が抱いているに違いない、そんな切ない願いがヒシヒシと伝わってきて、映画の中盤からは涙が止まらなかった。
クライマックスの結婚式での展開も、容易に予想できてしまうのだが、それでも目頭が熱くなったのは、「結婚式の直前に非業の死を遂げた娘の花嫁姿を見たかった」という父親の願いが、痛いほど理解できるからである。
その一方で、この結婚式では、鈴木亮平演じる兄のスピーチも、大きな見どころになっていて、非常に感動的ではあるのだが、前述の「死んだ人に会いたい」という話とは、少し乖離した内容になっており、作品としてのテーマのブレのようなものも感じてしまった。
多くのことを犠牲にして妹のことを育て上げてきた兄が、妹が「生まれ変わる」前の家族のことを拒絶し、お好み焼き屋の幼馴染みに張り手を食らって、自分が思い上がっていたことに気付くという経緯は、この映画のストーリーの骨幹と言っていいだろう。
だからこそ、そんな兄が、自分一人で妹を育てたかのように勘違いしていたことを反省し、影に日向に自分たちのことを支えてくれた人々に感謝の気持ちを伝えるスピーチは心に響くのだが、だったら、自分が拒絶してきた繁田家の人々に、謝罪の一言があっても良かったのではないかと思えてならない。
それから、有村架純(そういえば、『月の満ち欠け』も「生まれ変わり」モノだった!)演じる妹が、結婚を機に、「生まれ変わる」前の記憶を失うという設定にしても、生まれ変わった後の記憶も含めて、何もかも忘れてしまうというのは、少し「やり過ぎ」のように思えてしまう。
これでは、ラストシーンの「花まんま」には寂しさしか感じられないので、例えば、生まれる前の記憶は無くしても、加藤家と繁田家の交流は続いて行くといった、希望が感じられるような結末にはできなかったものかと、少し残念に思ってしまった。
花まんま、が目にも美しい。変化球のタイムワープもの。
鈴木亮平の妹役の有村架純が、
「私には別の家族の記憶がある」
「フミコやない、繁田喜代美や!!」
と予告編で言ってるのが、
どういう意味なの?
って気になってました。
要するフミコのお母さんが臨月で入院する時に、
瀕死の重傷ですれ違ったストレッチャーに乗る繁田喜代美さんと、
生まれ変わった・・・それも記憶だけ・・・
という変わったバリエーションの《タイムワープ》のお話でした。
いささか無理くり感ありませんか?
フミコは小学校2年生くらいの時に、どうしても記憶にある
彦根の繁田家(喜代美さんのお父さん)の家に行きたくて、
電車で遠路はるばる彦根へ兄と向かいます。
すると清美さんのお父さん(酒匂芳)が痩せ細って食事も摂れないで
落ち込んでいるのです。
繁田喜代美さんはバスガイドさんで、お客さんを守って
刺し殺されたのでした。
その喜代美さんの心が入れ替わったフミコは、兄との約束、
「話してはイケナイ・・・」
その言葉を守って、ツツジの花畑で、
白、赤、黄色そして葉っぱの緑で、お弁当箱に花を詰めて
渡すのです。
それが《花まんま》
そうしたら勘のいい繁田仁さんは、
幼いフミコを喜代美の生まれ変わりだと気がつくのです。
そして月日が経ち、フミコは嫁ぐことになります。
するとフミコは喜代美の記憶が消えていくのを感じて、
繁田さん一家(兄の六角精児、姉のキムラ緑子)にも、
花嫁姿を見て貰いたい・・・
そう願うのでした。
今まで親代わりに育てた兄の俊樹(鈴木亮平)の心は複雑です。
そんな《もう一つの家族》なんて受け入れ難いですね。
しかし悩んだ末の俊樹の決断は?
という昭和感覚の人情噺でした。
それにしても、結婚相手(鈴鹿央士)がカラス語を話す設定には
笑った。(真似が上手いんだもん)
それにしても、「三度目の殺人」で、憎々しいサイコキラーを演じて
注目された酒匂芳の泣かせる演技の上手さに、驚く。
クレジットも一番最後でした。
凄いねー、遅咲きの開花ですねー。
親代わりの兄貴・鈴木亮平のスピーチで締めて泣かせて、
気持ち良い映画でした。
【"ある女性とその父の思い残しを叶える優しさ。”今作は幼き時から二人で生きて来た兄妹の絆と、妹が抱える秘密を巡る出来事を描いた、深い悲しみに寄り添う人間の心の優しさに満ちた作品なのである。】
■両親を早くに亡くしたトシキ(鈴木亮平)は、妹のフミコ(有村架純)の親代わりとして、高校を中退して東大阪の町工場で働き、金を稼いできた。
フミコは烏研究者のタロウ(鈴木央史)を婚約者として連れて来る。そして、結婚式の日が決まった後にトシキに内緒で彦根に一人で出掛けるのであった。
実は、フミコは若くして無差別殺人に巻き込まれたバスガイドのシゲタキヨミの記憶を幼い頃から持って生まれて来たのである。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・前半はコミカルな要素を含んで物語は進む。タロウが烏と意思疎通を図るシーンや、トシキがフミコの婚約を知って不機嫌になって、行きつけのお好み屋でグダグダとコマコ(ファーストサマーウィカ)に”誰が育てて来たと思ってるんだ!”などとクダを巻いて居たり。
けれども、その会話の中でトシキがフミコを如何に大事に思っているかが分かるし、彼が”独りで”妹を育てて来たという気持ちも描かれている。
この映画が上手いのは、コミカルな前半で後半の沁みるシーンのキーになる要素がさり気無く語られている事である。
・幼いトシキがフミコに頼まれて彦根に行くシーン。そこでトシキが見たバスガイドのシゲタキヨミの父(酒向芳)のやせ衰えた姿を偶然見て、近くにいたオバサンに”あの骸骨みたいな人は誰?”と尋ね、シゲタキヨミの死の時に天ぷらうどんを食べていた後悔から、必要最低限以下の食事しか取らなくなった事を知るシーン。
そして、二人がシゲタ家を訪ねた時に出て来たキヨミの姉(キムラ緑子)と兄(六角精児)と父の前でフミコが持って来た弁当箱に詰められた花で一杯の“花まんま”を観た時の驚愕の表情と滂沱の涙を流しながら、それを美味しそうに食べる振りをする父の姿に、まずは涙腺が崩壊しそうになるが、グッと堪える。
・そして、明らかになるフミコは若くして無差別殺人に巻き込まれたバスガイドのシゲタキヨミの記憶を幼い頃から持って生まれて来た事実。
そして、フミコが内緒でシゲタ家を訪れた事を知り、トシキは会社のトラックにタロウを乗せて乗り込み、タロウが京都大の教授になっていたシゲタキヨミの兄とカラスの形をした名刺を渡しているのを横に、”二度とフミコと接触するな!”と啖呵を切り、帰っていくのである。
・だが、フミコからシゲタキヨミが刺殺されたのが結婚式の二日前だった事を知り、トシキはマタマタ結婚式の前日にも関わらずコマコの店で大酒をかっ喰らっているが、コマコから”いい加減にしろ!”とハゲシイビンタを喰らって、翌日早朝に反省のメモを残し再びタロウとシゲタ家に向かうのである。コマコ、良いなあ。
だが、シゲタ家の人々は温泉に行ったと聞き、ガックリするのだが、フミコと同じように兄がスマホを忘れたといって戻って来た時に、トシキはシゲタ家の人々を車に乗せフミコの式場に向かうのである。
■ナカナカ来ない兄を待つ、バージンロードを歩く練習をお好み屋の亭主(オール阪神)とするフミコ。漸く着いたトシキ達。
そして、いよいよ扉が開くとフミコの横には、緊張した表情のシゲタキヨミの父が立っており、フミコはシゲタキヨミの父の手に腕を回してバージンロードを歩くのである。シゲタキヨミとその父の思い残しが叶った瞬間であり、トシキの優しさが読み取れるシーンでもある。このシーンは沁みたなあ。涙が出たよ。
その後のトシキの親族のスピーチも良かったなあ。
”皆さんのお陰で、妹は立派に成長しました。有難うございます。”
前半で”俺が育てた!”と言っていたトシキの成長が分かるし、その言葉を聞いたシゲタ家の人達が涙する姿。
そして、物心ついた時に父が他界していたフミコにとって、シゲタキヨミの父との密かな文通が、とても大切な事だったのが分かるのである。
式場から退出する参列者に一人一人声を掛けるフミコは、シゲタ家の人達に笑顔で“今日はどちらから?”と聞くのである。
思い残しが無くなったシゲタキヨミが天国に召されたという事である。だが、彦根への列車の中、寂しそうにしているシゲタキヨミの父だったが、姉が”引き出物は何だろう?”と言って包みを開けると、そこには弁当箱に詰められた花で一杯の“花まんま”があるのである。
このシーンで、再びシゲタ家の人達と共に涙が出てしまったのである。
フミコのシゲタキヨミの父への感謝が詰まった“花まんま”である。
<今作は幼き時から二人で生きて来た兄妹の絆と、妹が抱える秘密を巡る出来事を描いた、深い悲しみに寄り添う人間の心の優しさに満ちた作品である。
そして、この作品の、影のMVPはシゲタキヨミの父を演じた酒向芳さんではないかな、と年頃の娘を持つ私は思ったのである。>
泣いた
誰かの人格が乗り移る設定は「月の満ち欠け」でもあったなぁ、あれは有村架純が乗り移る側だったけど今度は逆かぁ…くらいの感じで見ていたら、この10年で一番泣けた。泣ける映画を探していたので、涙活できて良かった。ファンタジー要素もすんなり受け入れてしまうほど、本筋のストーリーがしっかりしていたのだと思う。鈴鹿央士が時々笑わせてくれて、しんみりし過ぎないちょうど良い塩梅が私は好きだった。
結婚式後、他人の記憶が消えた後の有村架純の表情が秀逸。あんなに親しげにしていた人を初めて見るような目で見る芝居に引き付けられた。有村さんすごい。
カラスナビ。
妹・フミコの結婚を前にソワソワする兄・加藤俊樹と、もう1人の自分(繁田喜代美)の記憶、繁田家で育った記憶がある結婚間近の加藤フミコの話。
亡き父から言われた言葉「どんなことがあっても妹を守る」を心に…、小学生時代にフミコから聞かされた“もう1人の記憶”と1度行ったことのある彦根の繁田家、…その繁田家にもう行かないと約束をしてたがフミコが結婚式2日前に彦根にある繁田家へ向かうことに…。
大阪に住む兄弟ってのもあり、兄・俊樹の話、話の間、返しと大阪弁ならではそこから楽しめる。そこへ更にフミコの婚約者カラスと喋れる太郎が絡んじゃうから笑える。
作品観終えれば笑って泣けて、ちょっとファンタジーと絡めながらも温かい。
ちょっと頑固にも見えた兄・俊樹だけどフミコを想うからだし、彼なりに父となり時には母となり育ててきた訳だから…。
結婚式前日見た夢?!から結婚式当日決めたプレゼント、そしてアドリブに変えたスピーチと泣けた。…結婚式終わりの記憶が無くなったのには切なさも感じたけど、引き出物の“花まんま”で帳消しってことで。
個人的に駒子からのビンタもグッときたんだけどね。
語るべき本音と語らずとも伝わる本音というものがうまく演出されていたと思った
2025.4.25 イオンシネマ久御山
2025年の日本映画(119分、G)
原作は朱川湊人の同名小説
他人の記憶を有する妹と彼女を支えた兄を描いたヒューマンドラマ
監督は前田哲
脚本は北敬太
物語の舞台は、東大阪の下町
製作所で働いている兄・俊樹(鈴木亮平、幼少期:田村塁希)は、幼い頃に父・恭平(板谷駿谷)を亡くし、母・ゆうこ(安藤玉恵)も過労で若くしてこの世を去っていた
俊樹は両親から妹・フミ子(有村架純、幼少期:小野美音)を守るように言われてきたが、彼女にはある秘密があった
それは、他人の記憶を有していると言うもので、フミ子には「繁田喜代美(南琴奈)」と言う見知らぬ女性の記憶を持ち合わせてきた
当初はそんな素振りもなかったものの、小学生に入る前くらいにそれが発覚し、その後はそのことを母に隠して過ごしてきた
そして、ようやくフミ子も成人して結婚という運びになったのだが、俊樹にはある懸念が残ったまま、その日を迎えることになったのである
映画は、予告編でほぼ内容がわかる感じになっていて、兄のプレゼントというものもそこまでサプライズといういうものではないと思う
かなりコメディ要素は多い作品で、クドいくらいに嵌め込まれていると思うが、関西の独特なノリというものは伝わってきた
特に、冗談のように本音を言う俊樹の幼馴染・駒子(ファーストサマーウイカ)は秀逸で、自分ごとのようにフミ子の結婚を待ち望んでいるのは良かった
彼女からすれば、フミ子が結婚することで自分と俊樹の距離感も変わると思っているので、ラストでは「ブーケトスを受け取る」と言うようなベタな展開があるのかなと思っていた
そこまで蛇足っぽいことはなく綺麗にまとまっていたので、兄の葛藤をメインに描きつつ、フミ子の本音とぶつかることによって前に進むと言う流れはうまく馴染んでいたのではないだろうか
本作のメインは、フミ子の中から喜代美が消えてしまった瞬間となっていて、いわゆる成仏したように思える瞬間だった
俊樹としては、ようやく自分の妹が帰ってきたと思える反面、繁田家の中では娘の死を受け入れる瞬間でもあった
喜代美が中にいるフミ子を思ってきたと言う側面もあるので、嬉しさよりも寂しさが募っているのだと思う
それを俊樹の表情だけで描くと言うのが最高で、あのシーンこそがもっとも涙腺を刺激するシーンだったのではないだろうか
いずれにせよ、わかっていても泣いてしまう系の映画で、かなりファンタジックな演出も多い
アニメーションとかCGを使用した回想シーンも多く、子役もうまく役になりきっていたと思う
また、俊樹がフミ子の記憶が本物であると確信していく流れもうまく構成されていて、できることならば「妹には別人の記憶がある」と言う情報をシャットダウンして観たかったと言うのが本音である
かなり不思議なお話
正直、思ってたのとちがうー!って感じだったけれど、冷めることなく笑って泣いてしっかり楽しめた。
ただ、かなり不思議なストーリー
ミステリーにもホラーにもなりそうな展開なのに、
陽気な関西弁とやたら賑やかな加藤夫妻の存在でそれが中和されてほのぼのした感動作になっている。
ツッコミどころはたくさんあるけど、この作品はそこは目をつぶる方がいい。
鈴木亮平と有村架純はもう言うことはないくらいの演技力だが、そのなかでも鈴鹿央士とファーストサマーウィカの演技もかなりよかった!
でも影の主役は酒向さんだと思う。
とても素晴らしい役者さん。見入ってしまった。
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