「心が温まる「不思議な世界」。」花まんま ガバチョさんの映画レビュー(感想・評価)
心が温まる「不思議な世界」。
映画のクライマックスであるフミ子の結婚式がとにかく感動的である。その要因としては、映画の冒頭から色々仕組まれてきた伏線が、ここですべて納得できる解決がされていると感じるからだろう。そして登場人物が、今まで抱えてきた心の苦しさから解放されて「心の浄化」や「救い」みたいなものが演出されているので、そのことに観客は満足を得るだろう。
話の構成で言えば、本来何の関係もなく交わる事のないはずの2つの家族を、不思議な縁で結んで心が洗われるドラマに仕立てた手際の見事さに感心する。生まれてきたばかりのフミ子に、死んでいく喜代美の心が乗り移るという一種のファンタジーである。この不思議な想像の世界が、単なるヒューマンコメディを超えた魅力になっている。フミ子は自分の心の中に生きている喜代美を大切にして、この現実を素直に受け入れて向き合っている。他人に心を乗っ取られたりしたら、普通なら拒絶したり迷惑がる所であるが、フミ子は違う。喜代美の父仁と手紙のやり取りを続け、自分の写真を送り成長の報告までしている。フミ子が父を知らないから喜代美の父を慕っていることになっているが、それでもこんな心根の優しい人はいない。兄俊樹は父から妹を託されて、自分が守らなければいけないとの責任感が強すぎて、とにかく妹のために頑張ってきた。「兄貴は損な役割だ」というのが何度も強調されている。そんな妹が、知らない女性のために知らない家族に心を寄せていると知って、裏切られた気になるのも理解はできる。一方の繁田家はフミ子が喜代美であることを素直に受け入れてフミ子の成長を見守っている。これも現実にはあり得ないことであるが、コメディ的でとても面白い。父仁は娘の幸せを見届けられなかったことが大きな心残りで、フミ子に叶わなかった自分の思いを託している。
俊樹が繁田家の人々を結婚式に連れてきたことは、今までの態度から考えると本当に大きな心の変化である。自分を犠牲にしてまで妹を守ってきたという苦しさから解放されて、フミ子の気持ちを受け入れ、全面的に結婚を祝うことができた。喜代美の父仁は、娘が果たせなかった結婚をフミ子が替わりに実現する場に立ち会えたことで、今までの苦しさから解放された。
登場人物がすべて心の優しい気持ちの良い人ばかりである。見終わって心が温まる。そして鈴木亮平、有村架純、酒匂芳の素晴らしい演技に感謝したい。
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