「男は単純だが知能的、女は複雑だが感覚的を、地で行っているイマドキ稀有な設定のスリラー」トラップ Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
男は単純だが知能的、女は複雑だが感覚的を、地で行っているイマドキ稀有な設定のスリラー
2024.10.25 字幕 MOVIX京都
2024年のアメリカ映画(105分、G)
凶悪犯がコンサートに紛れ込む様子を描いたスリラー映画
監督&脚本はM・ナイト・シャマラン
物語の舞台は、アメリカ・ペンシルバニア州フィラデルフィア
消防隊員のクーパー(ジョシュ・ハーネット)は、娘ライリー(アリエル・ドノヒュー)のために、レッド・レイヴン(サレカ・シャマラン)のコンサートに来ていた
ライリーはレッド・レイヴンの熱狂的なファンで、自宅のピアノで曲を演奏して踊り、彼女のパフォーマンスを真似て踊れるほどだった
学校の成績が良くなったことへのご褒美だったが、クーパーは異様な警備体制に何かしらの違和感を募らせていた
クーパーは会場のあらゆる場所に警官が配備され、新しく防犯カメラなどが設置されているのを見て、グッズ販売員のジェイミー(ジョナサン・ラングドン)にそれとなく聞いてみる
彼は、世間を騒がせている殺人鬼ブッチャーがこの会場に来ていて、それをFBIが察知しているからだ、という
ブッチャーは殺した相手を切り刻む残忍な男で、FBIは彼の行方をまったくつかめていなかったが、ようやくその足取りがつかめていて、このコンサート自体が「犯人を囲い込むためのトラップだ」というのである
映画は、早々にクーパーが何らかの理由である男(のちにスペンサーと判明、演:Mark Bacolcol))を監禁している様子が描かれ、彼がブッチャーであることが仄めかされる
なので、映画としては「逃走犯ブッチャーがどうやってFBIから逃げるのか」という物語になっていて、犯罪者目線によるスリラーという一風変わったものとなっていた
娘に悟られず、会場の包囲網から抜け出す方法を探すのだが、ゲストアーティストが登場する床下の装置とか、従業員スペースにはIDカードが居るなどの様々な制約が、クーパー脱出へのヒントとして舞い込む様子が描かれていた
この手のジャンルは「逃走者に感情移入するかどうか」というところに「逃げ切って欲しい」という感情が派生するのだが、今回の場合は「早く捕まってほしい」という感覚になってくる
だが、直接的な犯行の現場が映らないので犯人への嫌悪感は少なめで、それが却って「このキャラをどの目線で見れば良いのか」という揺らぎに繋がっていた
後半になって、クーパーがレッド・レイヴンを巻き込んで逃走することになるのだが、彼女を巻き込んでいく流れもかなりの知能犯を窺わせる
レッド・レイヴンがスペンサー救出にこだわる理由はわからないものの、自分しか助けられる人がいないという使命感と、正体を知ってしまったが故の安全性のなさというものから解決に導く以外にはないと考えたのではないだろうか
映画は、あまりネタバレなしで観る方が良い映画なのだが、各種映画サイトのあらすじや予告編などでは「クーパー=ブッチャー」であることがわかるようになっていた
宣伝の難しさもあるものの、「クーパー=ブッチャー」を決定づけるのはもっと後半まで引きつけてもよかったように思う
正体が判明よりは「強迫観念と容疑のどちらかわからない」というテイストで引っ張って行った方が緊張感と疑心暗鬼を生む
彼の視点に映り込む謎の女性(のちに母親であることが判明、演:Marcia Bennett)をもっと効果的に使えれば、正体判明を遅らせつつ、クーパーの異常性を描けたように思えた
いずれにせよ、斬新な設定と物語ではあるものの、少々無茶だろうというシーンもいくつかあった
リムジンで取り囲まれてからの脱出とか、隣人の家に続く地下道があるとか、逃走を延長させるためのあり得ない仕掛けと展開が多すぎる
そう言った物理的な制約に説得力を持たせることができれば良いのだが、単に知能が高いだけでは説明つかない部分が多い
なので、それがクリアできれば、こんなにもコメディっぽくはならなかったのではないかと思った